【グルメの街とギルド試験】
__新たな仲間〝エローナ〟を迎えたトライン一行は、次なる街【グルメイン】に向かっていた
__時刻は早朝、昨晩の焚き火が燃え尽きて緩やかな黒煙を放つ。エローナとカリンダは焚き火の傍で眠り、トラインが夜の見張りを行う。次の街に着くまで、ここ10日ほどは野宿の日々であった
エローナが目を覚めると、小鳥はさえずり天気は快晴、とても平和で穏やかな朝。寝てる間のトラブルは何一つなく、安らかに休息を得た
「ふぅーよく寝た……」
しかし、旅の夜は本来とても危険なものである。野宿をする場合、猛獣や盗賊に襲われる危険がとても高いからだ。そのため見張りを立てるのが常識だが、それでも安全とは限らない。大抵5日に一度、何かしらトラブルは起きるのが野宿の鉄則だ。だが、トライン一行は10日も野宿をしているが、危険やトラブルは一切起きてない
「毎日が平和な朝ね…こうも平和な朝が続くと、逆に不安になるわ…」
夜の見張りはいつもトラインが担当している。今日もトラインが朝まで見張り行っていた。
「まぁマッチョが見張りをしてたら、誰も襲ってこないわよね…」
それもそのはず、エローナとカリンダが寝てる隣では
__ゴリゴリのマッチョが【バキバキの筋トレ】をしているのだ
「見張りくらい大人しく座って休めばいいのに……」
トラインは見張り中、常に筋トレをしていた。汗だくになりながら腕立て伏せや腹筋など各種メニューを何千回もこなす
「おはよう!エローナ!」
「あんたよく毎日、筋トレなんて飽きずに出来るわね」
「何を言う!筋トレは俺の!毎日に!欠かせない物だ!!」
「こんなマッチョが見張りしてるおかげか、猛獣も盗賊も寄ってこないわね。しかも暑苦しい。正直、焚き火は要らないくらいよ。まぁおかげで平和的な旅が出来てるし、まぁいいんだけど…」
トラインは息を切らしながら筋トレに勤しむ
「え!?ハァ!なんて!?ごめん!ハァ!今!腕立て中で!何も!聞こえない!!」
トラインの筋肉愛に、エローナは呆れてため息をつく。カリンダも起き出すと野宿の後始末をして、一行は次なる街へ向かう
__荒道をしばらく歩いていると、徐々に道が人工的で綺麗な道路に変わる。近くに街がある証拠だ。さらに道路の横には綺麗な湖があるため、その湖の水面を鏡にして、トラインは己の筋肉出来栄えを確認した
「またやってるわね……」
カリンダとエローナはトラインの筋肉鑑賞にしばし付き合う。トラインとの旅ではよくある事なのだ。今日も己の肉体に満足していると思っていたが、なぜかトラインは不満そうな顔をしている
「うーん、やはりそうか…残念だな」
「どうしたの?トライン?」
「いや筋肉の出来があまり良くないんだ」
エローナは呆れたように答える
「はぁ?いつもと変わらないように見えるけど」
「いや明らかに出来が悪くなってる…主に腕や胸などが……」
「原因は分かってるの?」
「あぁ俺の予想ではここ最近、タンパク質が十分に摂取が出来てないのが原因だと見ている」
「タンパク質?」
「あぁ、筋肉を作る大事な栄養のひとつだ」
「筋肉って鍛えれば、それだけで大きくなるんじゃないの?」
カリンダが首を傾げる
「いやそれが違うんだ。筋肉はいくら鍛えても食事がダメだと成長しない。特に大事なのは脂肪分の少ないタンパク質などだ。鍛えた分だけ摂取する必要がある」
「例えばどんな食事?」
「主に筋肉質なお肉や、鳥の卵などが良い。冒険をする前は市場で食材を仕入れていたが……」
エローナが腕を組んで考える
「冒険中の食料は基本は現地調達よね…。ここ10日間は村も無かったから、野宿先で食料を常に確保してたし」
「そうだな……町はもうすぐなんだろ?せめてそこでタンパク質を沢山摂りたい」
エローナは荷物から地図を取り出す
「地図によれば、ここからしばらく歩けば【グルメイン】と呼ばれる大きい街に到着するわよ」
「グルメインか……そういえばどんな街なんだ?」
「ここオルバニア帝国で、首都の次に大きな街のようね。このグルメインからオルバニア全域の各町や村にアクセスが出来るの。旅人にとっては重要な中央都市の一つになるわ」
「なるほど…」
「とくにこの町は料理技術がとにかく発展してる…。だから通称【グルメの街】料理人の聖地とも呼ばれていて、世界中の料理人が修行に訪れれば、数多くの食通の金持ちや美食家が集結するの」
「グルメか……もしやそれって!?」
「えぇもちろん、世界中から質の良い食材が集まってくるの。あなたの言うタンパク質も豊富にあるでしょうね」
「ヨシッ!すぐに行こう!!」
トラインはマッスルポーズをキメながら歩き出す
「本当……筋肉に関しては熱い男ね…」
__しばらく歩いていると、商人達や旅人、金持ちが乗っていそうな馬車などが道を通るようになった
「沢山の人達がいる……凄いねトライン」
「そうだな…久しぶりに沢山の人を見た」
「みんな、この街のグルメを求めてるのね。貴族や王族も密かに通うほど有名らしいわよ」
しばらくすると巨大な壁があり、門の入口には二人の門番が立っていた
「門番がいるな……俺たちは入れるのか?」
「大丈夫のはずだけど…一応聞いてくるわ」
エローナは先に門まで向かい門番に話を聞く
「私たちは旅の者なんだけど、街に入れるかしら?」
門番は優しく答える
「あぁ大丈夫だべ、オラたち門番はあくまでモンスターや盗賊などが街を入らないように見張ってるだけだ。善良な人なら誰でも入れるべな」
「それを聞いて安心したわ」
遠くにいるトラインに合図を送る
「トライン!入れるってー!」
「良かった、じゃあ行こうかカリンダ」
「うんっ」
トラインは門に向かう。門番はトラインを見るや、慌てて武器を手に取りトラインに対抗した
「ひっ!!巨人!?」
「モンスターだべ!!化け物だ!」
「応援を呼べ!俺たちは今日で命日だべ~!」
巨大な筋肉はここでも珍しいようだ。慌てる門番をエローナが鎮める
「安心して門番さん……。この人はただ大きいだけの人間よ…」
門番がマジマジとトラインをみる
「本当だ、こいつはただの人間だべ」
「ひぇー驚いた…こんな大きな筋肉の人間がいるんだべなー」
___色々とあったが無事にトライン達は門を通って街に入った
街では老若男女の様々な人種が活気に溢れ、大きな市場や商店が軒を連ねており、見たことが無い雑貨や道具、市場では新鮮な食材が辺り一面を埋め尽くしていた
「安いよ安いよーっ!とくに魚は絶品だよー!」
「うちの商品を見ていきな!良い道具が揃っているよ!」
「さぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!」
トライン達は市場を夢中で見学する
「凄いな……スレーン王国では見たことがない食材ばかりだ!」
「みてトライン!この魚凄い大きい!食べられるのかな?」
「こっちの野菜も凄いなー……農家の血が騒ぐぜ!筋肉がパンプアップするなーこれは!」
トラインとカリンダが市場に夢中になるが、エローナがトライン達を呼びだす
「アンタらっ市場見学は後にして!私たちは先に行かなきゃいけない所があるんだからっ!」
「え?行かなきゃいけない所?」
エローナは遠くでそびえ立つ大きな建物を指さす
「私たちはこれから【ギルド】に行くのよ!あんたをギルド登録させるためにね!」
「俺がギルドに?一体なぜだ?」
エローナはバッグから小銭袋を取り出す
「これから長い旅をするのなら、資金の確保は絶対必須!いま私たちが持ってる所持金はトロールで得たこの小銭くらい、それも底を付くのは時間の問題よ」
「なるほど……それがギルドと何の関係があるんだ?」
「だからギルドに登録して、旅先の街でお金を定期的に稼ぐ必要があるの。ギルドに登録すれば、その日の仕事を迅速に斡旋してくれるはず。私たちは各町や村のギルドで一定の小銭を稼いで、次の街までの足がかりにするの。これで安定した旅が実現できるわよ」
トラインとカリンダはエローナに感心する
「エローナさん凄いっ」
「確かにその方がいいな…流石だエローナ!ありがとう!お前を仲間に入れて正解だよ!」
トラインは【モストマスキュラー】を決めて感謝を示す
「ど……どういたしましてっ!(トラインといると何か調子狂うのよね……)」
エローナは少し照れてしまう
「さぁ行きましょう!午後までには登録を済ませて飯を食べるの!せっかくグルメの街に来たんだから!美味しいもの食べなきゃ損よ!」
__トライン達は飲食店街を抜け、街の中央にあるギルドに到着する。外観はとても大きなレンガ積みの建物であった。真ん中にギルドマークの看板が大きく設置されている
「随分立派な建物だな」
「街や村によってギルドも違うけど、ここのギルドの建物は随分と大きいわね…」
トライン達が中に入ると、そこには鎧を纏った剣士や魔法使いなどが沢山居た。いずれも手練のように思える。そんな手練達もトラインの筋肉に注目し騒ぎ始める
「なんだ!?あの筋肉?」
「すごい…とんでもない肉体だ」
「武闘家よりもムキムキだな!」
「オークよりもデケェ!」
トライン達がギルドの受付に到着すると、エローナが慣れたようにトラインのギルド登録を始めた。受付嬢が指示を出す
「では…こちらの男性を登録致します。登録には身体検査や能力検査も必要ですので、しばらく待合所でお待ちください」
検査に呼ばれるまで待合所で待機する。待ってる間にトラインがエローナに質問をする
「なぁ検査ってなんだ?」
「ギルドに登録するには一定の体力やスキルが必要なの。ギルドには危険な仕事も多いからね。検査して無事に合格すれば登録は完了よ……まぁアンタほどの体力なら余裕で合格だろうけど」
「なるほどな……おっと…呼ばれたようだ。行ってくるよ」
「行ってらっしゃい」
スタッフに呼ばれトラインは検査室に案内される。検査室ではトラインの他に4人のギルド登録志願者が列になって待っていた
「うわっ……凄い筋肉」
「すげぇ……肩が山みたいにデケェ!」
「はぁ私…合格出来るかしら…」
「……」
検査室で5人が列になって待っていると、年老いた検査官がやってくる
「この度はギルド登録のご参加、誠にありがとうございます。ではこれから検査を始めるわけですが……」
検査官は手に持った紙を広げ説明を始めた
「検査を始める前に注意事項を説明します。今年からギルドの初心者による怪我や死亡事故が増加しています
…そのため、今年から一度にギルド登録出来る人間を【厳選】させていただきます」
志願者たちがザワつく
「厳選だと?登録すれば誰でも入れるんじゃないのか?」
「そーよ……そんな話聞いてないわ」
「おいおい大丈夫か?」
他の志願者たちが文句を言い出し始める。検査官は落ち着いて志願者をなだめる
「まぁまぁ……あくまで皆様の安全のためですのでご了承ください」
トラインは検査官に質問をする
「つまり…検査と言うよりも……これは試験なのか?」
「そう捉えても構いません。ただ便宜上は試験ではなく検査です」
「何の違いがあるんだ?試験でもいい気がするが……」
検査官が穏やかに質問に答える
「試験より検査の方が緊張感無いでしょ?」
「た、確かに……」
「で?厳選って具体的にどういうことです?」
メガネを掛けたクール系の青年が検査官に聞く
「はい…まず前年よりも検査基準が上がります。そして一度に合格出来る人数は【二人】のみとなります。この検査で不合格になった方々は半年間、検査を受けられないのでご理解ください」
今回の志願者はトラインを含めて【5人】。そのうちギルド登録が出来る最大人数は【2人】のみであった
「(5人中2人だけか……厳しいな)」
検査官が検査の説明をする
「ではまずは魔力検査を行います。これは主に魔法の素質を審査します」
「(まずい。一番の難関だ…)」
そう…トラインは魔法を使った事が無い。魔法は剣の技術や腕力よりも重要とされている。そのため腕力のみのトラインはかなり不利であった
次々と志願者が検査をしていく…
検査には【魔力測りのランプ】を使い、その人の【生命エネルギー】を魔力に変換する際の【質】の高さを調べる
生命体には目に見えない力である【生命エネルギー】を持っており、生命エネルギーは全ての物質や力の源である。生命エネルギーのみでは魔法は使えない。魔法を使うには生命エネルギーを体内で魔力に変換させなければならない
この生命エネルギーを魔力に変換する素質は人によって異なる。膨大な生命エネルギーを少しの魔力にしか変換出来ない人もいれば、少量の生命エネルギーで膨大な魔力を作り出せる者もいる。これが魔法の基本原理である
魔力測りのランプを持った人は、その魔力変換の素質によって、ランプの中の青い炎の強さが変わる。魔力変換の質が高ければ高いほどランプの炎は神々しく輝く。逆に素質が低ければ炎も弱々しくなる
「よしっ!凄い光った!」
一人の志願者が眩い青の炎を煌めかせる
「すげぇ!俺より綺麗に光ってる…」
「負けてられないわね!」
検査官がランプの光に感心する
「うむ……中々筋はいいですね」
そして次に検査をするのは、メガネを掛けた青年
「では次の方、こちらのランプを両手で持ってください」
青年はランプを持つ。すると途端に部屋中が眩しくなるほど輝き出した
「なんだ!?この光は!?」
「眩しすぎて前が見えない!」
「ほう……凄まじい光ですね……」
膨大な魔力で、ついにはランプが割れてしまう
「な!なんだアイツ!」
「ランプを割るほどの魔力だと!?素質が違いすぎる!」
「ありゃ合格は確定ね……」
割れたランプをスタッフたちが片付ける。検査官は感心した
「ほう…素晴らしいですね。私は長年、ランプを用いた検査をしてきましたが、ランプを割るほどの膨大な魔力を持った人は初めてですよ」
青年は一言も話さず冷静であった、検査官は新しいランプを持ってくる。最後の検査はトラインだ
「ではそこの大きい人……このランプを両手で持ってください」
「あぁ分かった(お願いだ…!光り輝いてくれ!)」
トラインがランプを持つ、するとランプの光は輝くどころか…
___消えてしまった
「こ…これはどういう?」
トラインが焦りながら検査官に聞く
「ほう…これは…」
トラインのランプの火が消えたことに、他の志願者は危惧する
「おいっ……火が消えたぞ!?」
「あまりに魔力が強すぎて、火が消えたんじゃ」
「そうなったら私の合格は絶望的ね……」
検査官は少し考えるとトラインに告げる
「あんた…
___素質ゼロだね」
「え?」
恐れた事態が起きてしまった。トラインは生命エネルギーを魔力に変換する素質が一切無いのだ。つまりトラインは魔法が一切使えない
「正直……私は長年、ランプを用いて検査をしてきましたが、ランプの炎を消してしまうほど、魔法の素質が無い人間は初めてです」
「は はい…なんか…すいません……」
心做しかトラインの巨大な筋肉も、小さく見えてしまう。トラインの検査結果を受けて、他の志願者は安堵した
「良かった~あの様子じゃアイツは試験は落第確定だな」
「魔法が一切使えないのにギルドに入れるわけがないっ」
「良かった……私にもチャンスが回ってきたわ」
検査官が次の検査を説明する
「次は体力や物理的な強さを検査します。呼ばれた方から順に別室に移動して個別に検査を行います……」
志願者が次々と別室で検査を行う。検査は淡々と進み一時間程度で終わった
___志願者は部屋に集まって結果を待っていた。検査結果は意外にも早く出た、検査官が検査結果証を持って部屋に現れる。
トラインやメガネの青年と違って他の志願者は自信満々である
「俺が合格だろうな……」
「メガネの奴は間違いなく合格だとして……マッチョ男は絶対落ちてるし……、合格は間違いなく俺だぜ」
「受かって欲しいなぁ~」
一方でトラインは珍しく自信が無い
「(はぁ~エローナに怒られるだろうなぁ…)」
色々と悪い事が脳裏を過ぎる。カリンダにも失望されるのではないか……検査結果によって筋トレに力が入らなくなったらどうしようかと考えてしまう……
そんなトラインをよそ目に検査官が検査結果を発表する
「まず一人目の合格者は〝リドル・テクスチャー〟合格おめでとう」
メガネを掛けた青年であった。検査結果に他の志願者は納得する。
「そりゃそうだよな。問題は次だ」
「さて次は誰だ?俺か?」
「きっと私ね!さぁ早く言って!」
そして次の合格者が発表された。
「次の合格者は……
___〝トライン・メルポン〟合格おめでとう」
「え?」
「「「えぇ!?なんで!?」」」
トラインは目を丸くし、他三人の志願者も驚愕する。そんな四人を気にせず、検査官は淡々の説明を始める
「他3名は残念ながら不合格でした。また半年後の試験をお待ちしております……では合格者は私と一緒に別室へ……」
しかし他の志願者は抗議を始める
「ふざけるな!インチキだろ!」
「そうだそうだ!魔法が使える俺たちを差し置いて、魔法が一切使えない奴が合格だと!?公平な試験を希望する!」
「お金ね!?賄賂でも使ったの!?」
志願者の抗議を聞いた検査官は顔色を変え、志願者たちを睨む
「インチキ……賄賂だぁ……?テメェらぶっ殺されたいのか?」
突如声色が変わった検査官に志願者は驚き慄く
「検査は公平だ…俺は長年検査官をしてるんだ。俺の命を掛けて検査は公正だ。冗談でもインチキや賄賂などと騒ぐ奴らはタダでは済まさねぇ……分かったか?」
「は はい…ッ!」
「言いすぎましたッ!すいませんッ!!」
「ごめんなさい……」
検査官は顔を元に戻し、また丁寧な口調で合格者二人に話しかける
「お手数おかけしました……では二人とも別室にどうぞ」
__見事に合格をしたリドルとトラインは別室へ移動し、検査官にギルドの説明を受ける
「改めて合格おめでとうございます。ではこれからギルドの簡単な説明を致します」
検査官はギルドの仕組みやルールを説明しだした
「我々ギルドは永久中立組織です。そのためギルドは世界中に点在しており、どの政府にも属していません
あなた方はギルドメンバーとしての活動が許され、能力に応じて依頼を斡旋します
依頼の内容は多種多様です。鉱石や食材の採取、人命救助や盗賊退治、モンスターや害獣の討伐など。ギルドが依頼と認めた物は全て採用され仕事に回します
そして依頼のやり方に関しては基本自由となります。パーティーを組むも良し、一人で仕事をするも良し。ただし依頼を成功させるのが大人数だろうが、一人だろうが成功報酬は変わりません。
しかしギルドではいくつかの禁止事項があります」
「禁止事項?」
「はい…主に3つあります」
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ルール1.【人身売買、もとい誘拐や暗殺行為の禁止】
ルール2.【ギルドメンバーは他のギルドメンバーを攻撃することを禁止(やむを得ない場合は除く)】
ルール3.それぞれの国の法律に違反する行為の禁止
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「以上のルールを1つでも破った者は、ギルドの弔問会議に掛けられ、最悪の場合メンバー権利は永久に剥奪となります
依頼料の配分ですが、基本は成功報酬のみの支払いとなります。前金を受け取るのは構いませんが、依頼者と相談して決めてください
そして…、成功報酬の【一割】を依頼紹介料としてギルドが頂くシステムになります」
「10%か…かなり大きいな……」
「確かにそう思う人も多いでしょう。ですが、その代わりに各種のサービスが充実してるので苦情などはありません」
「サービス?」
「治療費用の一部免除や、ギルドの宿泊施設の料金が安くなったり、ギルドの運営する売店の商品の価格も安くなります。ギルドが提供する食事も毎日1食無料となります…。また依頼中に不慮の事故で亡くなった場合は、こちらで責任を持ってご遺体を回収し手厚く埋葬をします。場合によっては遺族に謝礼金を支払う事もあります」
「死後の世話もしてくれるわけか……」
「また…ギルドの貢献度によってクラスが決まり、クラスによってサービスも充実していきます。
__一番小さいクラスは【コル級】。これはギルドメンバーになった全員に与えられます。そして下から順に【テル級】【リドル級】【ランドル級】【グランテイル級】となり最上級のクラスが【アドバンテイル級】となります。
アドバンテイル級になれば、医療サービスは同行人も含めて全額無料。宿泊施設はスイートクラスの部屋を無料でご提供し、高級料理を常時無料でご提供します。勿論、アドバンテイル級は全てのギルドメンバーよりも依頼を最優先で回しますよ」
「依頼をすればするほど得をするってことか…」
「説明は以上です。ではギルドメンバーの証であるギルドのネーム入りバッジを提供します。決して無くさないように」
トラインは黒色のバッジを受け取る。バッジには登録番号と名前が刻まれていた
「ようこそギルドへ。あなた方のご活躍を心より願います」
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カリンダとエローナはギルド内にある食堂のテーブルに座って待っていた
「あっトライン!」
「遅かったわね、落ちたと思って心配したわよ」
トラインが笑顔でやってくる様子にエローナは確信する
「その様子なら無事合格のようね、まぁあんた程の体力持ちを落とす方がおかしい話だけど」
「いや……俺も結構ギリギリだったよ。なんせ、魔法の素質がゼロだったからな」
「ゼロ!?まぁでも…それ以外がチート級だし検査官も憂慮したんじゃない?」
「そうだろうか?まぁ俺には分からないや」
トラインは黒色のバッジを見せる
「あら立派なバッジね。だけど…私の方が偉いわよ」
エローナは黄色のバッジを見せる
「黄色か……それってどれくらいのクラスなんだ?」
「黄色は【リドル級】よ。色の階級は下から黒、白、黄、赤、青、紫となるわ。つまり黄色の私の方が偉いわけ」
「(あんなダメダメ剣術でも階級が上がるのか……)」
もちろん、怒られると分かっていたので口には出さなかった
__気がつけばお昼過ぎ、腹の虫が鳴っている
「腹が減ったな……ギルドの食堂で飯でも食うか?」
「やったぁっ!ご飯ー!」
「はぁ!?何言ってんの!?」
エローナは勢いよく立ち上がる
「ここが何処だか忘れたわけ?グルメの街、グルメインよ!折角なんだから合格祝いに少し良いレストランで食事をしましょう!」
トライン達はエローナに連れられ、美味い食事先を探すためにギルドを後にした
______________________________
一方検査場ではスタッフたちが検査の後始末をしていた。検査官がそれを見守る
「おやおや……これは後片付けが大変じゃのう」
白髪を蓄えた老紳士がやってくる
「おや……〝ギルドマスター〟様。いつからこの街に?」
「ついさっきじゃよ。それにしても面白い……魔力ゼロの男をギルドに採用するとは……君らしくないのぉ?」
「私も迷いましたよ。魔法が最低限扱えるのはギルド採用において暗黙のルールですから……」
「なら……なんで落とさなかったんじゃ?魔法の素質がある人は他にもいたじゃろ?」
「意地悪な人ですね。分かってるくせに……この検査結果を見たら……
__誰だって採用せざるおえない」
検査官は前方を見つめる。そこには体力検査で使う設備がボロボロに壊れて、残骸と化していたのだ。鉄製の握力測定器がぐにゃぐにゃに曲げられ、金属製の巨大なパンチ力測定マシーンは綺麗に吹き飛んで壁にめり込んでいる
「どの体力測定も常軌を逸脱する結果です。見てください、鋼鉄の剣や盾が木っ端微塵ですよ?検査用とはいえ上質な高級品を使用してたのに…。彼が本当に人間なのか疑いますね」
「合格者の一方は並外れた魔力を持つ男、もう一方は並外れた腕力を持つ男か……ここまで対極的なのも面白いのぉ」
「やれやれ……他人事だと思って気楽ですね……」
ギルドマスターの顔がほころぶ
「ふぉっふぉっふぉ!にしても、ギルド始まって以来、前代未聞の魔力ゼロ男か……もし彼が【アドバンテイル級】にでもなろうものなら……歴史が塗り変わる偉業になるのぉ」
「はたまた我々に害を成す悪魔と化すかもしれません…まぁ、それは【八大神】のみぞ知る結末でしょうね……」
「ふぉっふぉっふぉっ」
晴れてよりギルドメンバーの一員となったトラインは、しばしグルメインでの休息を楽しむ。筋肉の楽園【ゴールドマッスル】の到着は、まだまだ先になりそうだ




