推しのために生きてます!!
私は興奮していた。
来月末の金曜日に、推しのライブがあると知ったからだ。
「南さん、仕事どうなってる?」
「もう出来て田中さんに回してあります」
いつもはマイペースな私が、ハイスピードで仕事をこなせている。
何しろ来月末のライブのプラチナチケットの購入に成功してるし、グッズも沢山買う予定だし。
気を抜くと鼻歌を歌ってしまいそうだ。
「南さん、来月末の金曜に仕事頼める?」
「無理です!!」
親族に不幸があったと嘘をついてでも休むつもりだった。
「この仕事、南さん指定なんだよね」
「え!?」
メールを開けると、確かに私の名前が書かれている。
私は地獄に突き落とされた気がした。
「……会社、辞めよっかな」
「え!?」
「冗談ですよ!! やります」
私は何とか調整して、ライブにはギリギリ間に合うようにその仕事を進めた。
ライブ当日。
打ち合わせの後の食事会で、私はトイレに駆け込んだ。
「……ライブ、始まっちゃう」
「どうしました? 南さん?」
「実は……今日、これからどうしても行きたい用事がありまして……」
「そうか。なら、ここから先は俺が受け持つよ」
「え!? 良いんですか!? 田中さん、神か貴方は!!」
「は?」
田中さんがちょっと引いている。
「いえ、ありがとうございます!!」
恋が始まりそうなくらい、感謝していた。とはいえ、推しが一番なんだけどね。
そして私は、ライブ会場へと猛ダッシュをした。
「今、会いに行くから間に合って!!」
推し活のために、私は生きているのだ。