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クラリッサが、死んだ。
その報せを聞いたとき自分がなにを思ったのか、正直あまりよく覚えてはいない。
ただ妙にはっきりと覚えているのは、ためらいがちに叩かれた扉の音と扉を開けた瞬間に見えたクラリッサの父親の青白い顔。
そして、まるで彼自身がその瞬間命を落としてしまったかのように色を失くしてゆくエリオスの横顔。
私がすぐに意味を飲み込むことができなかったその言葉を、彼は――その頭のよさゆえだろうか――きっとすぐに理解してしまったのだろう。
目を見開いて、唇をわななかせて、重いなにかを飲み込んで、ゆっくりと息を吐いて。
「……クレアは、どこに」
慟哭の代わりに吐き出されたであろう声はずいぶんと震えていた。
そして私は――。
私は、エリオスが絶望に染まる様だけを網膜に刻みつけながら、ただ呆然とその場に立ちつくすしかなかった。