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異世界ではガチャは無料らしい  作者: 小野塚 歩
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5話。タバタくん〜猫耳おじさん

次の世界に到達することに成功した。契約は無事繋がっていたが、リリィを忘れてしまったことにショックを受ける。それでも前に進もうと決意し、近くに生えていた木を万物ガチャで引いたところ、怨嗟を具現化したような呪いの木を引いてしまう。呪いの木を前に死を覚悟したが、呪いの木は味方だった。

「タバタくん、いい感じの杖とかって作れない?」


呪いの木に名前をつけてみた。タバタくんだ。

直感によるものだけど、もしかしたら学生の頃の緑化委員の名前かもしれない。

先程、仲間だと確かめるために枝と握手してみたが、鋼のように堅かった。

しかし、非常に柔軟性のある動きをする。

タバタくんの枝から杖が出来たら丈夫そうだなと提案してみた。

「ア“ア“〜」

頭上でメキメキとかパキパキと音がする。

よく見えないが、どうやら作ってくれているらしい。

やがて目の前に棒が降ってきた。

タバタくんの枝が2本交互に絡み合ってできた杖。

拾い上げてみると、非常に軽いことに驚いた。

長さは傘くらいあるが、太さはその倍ほど。

暖かみのある鉄パイプのような印象がある。

欲しかった杖以上の物が手に入った。ありがたい。

「ありがとう! 大切にするよ。」

「ア“ア“•••ア“ア“•••」

相変わらず顔のようなコブは苦悶の表情を浮かべている。

流石に表情から何かを読み取るのは無理かな。

そう思っていたら、いつもこちらを向いている顔ではない顔、

右下の方にあるコブはニッコリしていた。

ちょっとだけ和んだ。



さっき飲み物をもらったが、空腹感は続いている。

「タバタくん、食べられる木の実とかって集めてこれる?」

「ア“。」

「さっきから頼りきりで悪いんだけど、頼んでいいかい?」

「ア“〜」

根の部分をワラワラさせながら、木が密集しているあたりに向かっていった。

木を隠すなら森の中とはよく言ったもので、すぐに見えなくなった。


しばらく杖の具合を確かめる。

全体重をかけても折れるどころか曲がりもしない。

バットのように振ってみる。リーチを確かめておくのは重要だ。

敵が来たら、ホームランにしてやろう。

「さて、と。」

食料、武器の問題はとりあえず安心していいだろう。

次に必要なのはこの世界の情報だな。

できれば人間に会いたいけれど、そもそも人間が存在するか不明だ。

もしかしたら、アンドロイドとロボットが主な住民の可能性もある。

逆に、動物の世界である可能性もあるのか。

できればエルフとか妖精とかそういうのに会ってみたくはある。

とりあえず、知的生命体の集落を見つけるのが直近の課題だな。

周囲の探索を始めてみるべきだろう。

とはいえ周囲は同じ景色に見える。

木の生えている間隔は広いけども、遥か上空から見たら森に見えるかもしれないな。

空を見上げる。うーん。静か。

時折、鳥の声が•••ん?


「ーーーーーーッ!ーーーッ!」

遠くから声がする。叫び声だが聞き取れない。

人だろうか?

それとも獣の縄張り争いだろうか。

人であれば叫び声からして緊急性がありそうだ。

助けにいくべきか。

いずれにしろ確かめに行く必要があるのは間違いない。



馬車だ。

馬車が駆けている。ここから50メートルくらい先か。

まぁ実物を見たことはなかったが、馬がテント付きの荷車を引いているのだから馬車だろう。

その後ろを四つ足の生き物が群れを作って追いかけている。

顔が皺くちゃのハイエナみたいな生き物だ。

動物は嫌いではないが、アレは好きになれない顔つき。

「ギャギャ、ギャギャ!」

鳴き声も可愛くない。

そうこうするうちに馬車がハイエナの包囲を(かわ)そうと急にカーブする。

しかし、曲がりきれずに馬ごと横転して動かなくなる。

倒れた馬をハイエナが取り囲む。

それを馬車から転がり出た人物が、松明を振り回して防いでいる。

駆け寄ってみると恰幅のいい男性であることがわかる。

あの男の人、猫みたいな耳ついてない?

初めて出会った人間(だよな?)を見殺しにするわけにはいかない。

杖を構え直すと、ポケットから魔石取り出す。

ハイエナは全部で五?いや四匹。

その中で一番近いやつに風の魔石(エメラルド)を投げる。

水切りの要領で横投げするのがコツだ。

しかしコントールが悪く、狙った相手ではない個体に魔石が当たった。

パァンと破裂音がしてハイエナの耳がちぎれ飛んだ。

「ギャウ!」

風の魔法だから風が吹くかと思ったけど、空気圧による爆発だった。

ハイエナの群れがこちらに気付く。

近づいてきたら閃光の魔石(アメジスト)で目つぶしからのホームランしてやろう。

「かかってこい!」



ハイエナたちは俺を敵だと認識したのか、こちらを警戒している。

「ギャギャ」

群れが別れる。

一匹は猫耳のおじさんを牽制しながら、三匹がこちらに向かってくる。

そのうちの一匹はさっき魔石が当たった耳なしだ。

スピードがかなり速い。

ハイエナたちと自分との中間めがけて閃光の魔石(アメジスト)を投げる。

魔石が地面に当たり光を発した。

後続の一匹は狙い通り怯んだが、二匹の勢いは止まらない。

先頭の耳なしが飛びかかってくることを想定して杖を構える。

しかし、耳なしはスピード緩めずに、こちらを通り過ぎると後ろに回り込む。

挟み撃ちにされてしまった。

距離が縮まってから気づいたが、このハイエナはかなり大きい。

小型の自転車くらいある。

やがて、閃光にやられて足を止めていた一匹も合流する。

三匹に取り囲まれる。

ハイエナたちはボートを狙うサメのように周りをゆっくり回る。

弱点がないか観察しているのか?

こちらから仕掛けるべきだろうか。

だったら耳なしを狙ってーーーー


ドスゥゥゥンッ!


爆発のような轟音と地響きが背後から。

振り返るよりも早くバチィッっと音がする。

背後にいたハイエナの一匹があらぬ方向へ飛んでいくのが見える。

どうやら。どうやらタバタくんが空から降ってきて、ハイエナを殴り飛ばしたらしい。

「ア“ア”ア“•••」

スルスルと枝が俺の腰に巻きつくと、コブのある幹まで一本釣りされる。

「おっとと。」

バランスを崩して、タバタくんにしがみつく。

またもバチィッ、バチィッと音がすると、耳なしと他の一匹も右へ左へ吹っ飛ぶ。

2、30メートルは飛ばされたハイエナたちはそのまま立ち上がろうとしない。

おそらく即死なんだろうな。

タバタくんは枝で俺を捕まえたまま、ワラワラと馬車に向かって移動する。

残りの一匹のハイエナが逃げる間もなくどこかへ飛んで行った。

「ア”ア“•••」

タバタくんがさらに馬車に近づく。

あ、まって。

「タバタくん、その人は敵じゃないかもしれない。」

腰に巻きついた枝をトントンと叩く。

「助かったよ。ありがとう。」

いつもこちらを見ているコブを撫でる。

撫でるといってもコブは顔の前面くらいしかないので額を擦るような形になる。

「ア”ー」

右下の顔はニッコリだ。



タバタくんを労ったあと、振り返る。

猫耳おじさんをタバタくんと二人で見つめる。

呆気にとられている。まぁこんな状況だしな。

「えーっと、もしもし?」

こちらが反応待ちと気付くとその場で膝を折る。

「助けていただきありがとうございます! 大地の守護神様っ!」

大地の守護神様?

松明を持ったまま頭を下げて地面にひれ伏す。

「わたっ、わたくしは27部族が一つ、ダルニャのペボット・プリットと申します。

幼少よりこの地に入るなと教えを受けて参りましたが、

守護神様が封印されし地であることが理由とは知らず、

しかし何卒寛大なお心であなたの子孫たる部族に•••」

神様の怒りを鎮めるための言葉がずらーっと続く。

さて、困ったことになったぞ?

想定では「鉱石と取引で情報くださいな」みたいな、

もっとフレンドリーなやりとりを期待してたんだけど。

戸惑っていると、ペボット氏がどうか私の命でご勘弁をとか言い始める。

マジかよ。それこそご勘弁だ。

「待った!」

手をあげて素早く話を遮る。

もはや念仏を唱えるようなポーズだったが、顔を上げてこちらを見る。

「ええと。俺はこの世界に関する記憶がないんだ。

だからその守護神様とは違う存在なんじゃないかな。」

守護神様とやらのフリをして情報を得ても良かったけど、

ボロがすぐ出そうだし、ウソや演技は苦手なんだよな。

「まさか•••いや•••しかし•••。」

猫耳おじさん、じゃないペボット氏は呟き始める。

やがてハッと目に光が灯る。

「長らく封印されていたからでありましょうか?

確かに神話の時代より今日まで悠久の刻を経ております。

ましてや神話が事実であれば無理からぬこと。

このペボットに出来ることがございましたら何なりと•••!」

おーい?

どうあっても守護神様にしたいらしい。

よし。わかった!

それなら、彼の思い込みを利用させてもらって、

この世界に関する情報を教えてもらおうじゃないか。

お読みいただきありがとうございます。

小野塚歩です。

しっかり定期投稿できるように頑張りたいものです。

次話もご期待ください!

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