3.5話。リリィの独白①
・物語的には進展のない話となります
物語2〜3話後のリリィ視点です。
物語の補足と認識いただければと思います。
ご主人様はとっても優しい。
創造してもらっておいて何様だが、私は出来損ないだ。
ご主人様の希望を、ご主人様の手を借りずにはこなせない。
おそらく私では不十分だろう。
それでも役に立ちたい。
私には確実に不可能な内容を希望された。
絶望する。
当然の道理。
使っている道具が不十分なら、正しい道具を使うべきだ。
でも、ごめんなさい。
一度だけ、最後にわがままを言わせてください。
もう少しだけ一緒に居させてください。
結局、使えない道具を新品に切り替える方法があるのに、
ご主人様はあえてその方法を選択しなかった。
理由は怖くて聞けない。
でも、うれしくて涙が止まらなくなった。
ご主人様はとっても優しい。
ぱしゅん! という音がする。
わがままにわがままを重ねて、膝枕までさせてもらえた。
膝枕でお休みになっていた方の肉体が消えた。
次の世界への転移が成功したんだ。良かった。
ご主人様が無事であることは、唯一の繋がりが教えてくれる。
抜け殻となった衣服を集める。
胸に抱くととっても安心する。ちょっと匂いとかも嗅いでみる。
これは•••!ダメになる。
本当にツラいときに頼る事にして、
いまは一刻も早くご主人様のもとへ行くべきだ。
私だけの力では次の世界に行く方法など無い。
そう。私だけの力では。
唯一の足がかりはこのチカラ。
ご主人様から授かった。私の所有物で最も尊い物。
万物ガチャ。
世界に存在する制限を全部無視して、
自分の法則の中から無造作に物体を改変する。
はっきり言ってデタラメだ。
その分扱うのが非常に難しい。
難しいという言葉ではとても足りない。
能力を行使する対象を含む群体を法則として自分の中に用意し、
その中から意識せずに新しい対象を選び出す。
これらを行えてようやくチカラは発動する。
実際には新しい世界を一個作るようなものだから、
あり得ない事を確信する。くらいの認識が必要になる。
とてもじゃないが連続では使用できない。
新しい法則を用意するのに精神が大きく磨耗してしまう。
このことを知ったのは、契約によってチカラを得てから。
ご主人様が当然のようにパンを改変させていたし、
その成果物である豆腐バーガーを惜しまず恵んでくださった。
だから私にも扱えると思ったんだけど。
「•••豆腐バーガー•••また食べたいな•••。」
ご主人様は苦もなさそうに連続で使用できる。
ありえない。
対象を一瞥するだけで新しい法則を用意できるんですか?
ご主人様。あなたは一体何者なんですか?
あなたに仕えることは私の誇りです。
早くご主人様のもとへ駆けつけないと。
お読みいただきありがとうございます。
小野塚歩です。
ここで少しリリィの設定をば。
彼女は、自分が高位の悪魔と引き換えに出現したことをハズレを引いたと認識しています。
そのため、外から見た態度とは裏腹に非常に卑屈です。
そのくせ愛されることに貪欲です。
豆腐というより大豆製品が好きです。
次話もすぐに投稿予定です。ご期待ください。