島国マイノリティー
「日本は島国だから良かったよねえ。」
母は続ける。
「だって国境が分かっちゃったらなんだかすごく嫌じゃない。」
成程、そんなこと考えもしなかった。
島国だからこそ国境にも気付かず、日常的な他国とのいざこざに巻き込まれることも少なかったのだ。
島国だからこそ、人と人を分ける線を意識せずに居られたのだ。
母の何気ない一言で、私も気がついてしまった。
島国でなかったら、と想像する。
が、ひとつの地球に住む人間同士が国で分けられ、人種で分けられ、性別で分けられ、性状で分けられ、考えればこの島国でも様々なもので分別され、区別され、差別されている。
もっと早くにその事に気づいたのかもしれない。
どんな国に住む人間だろうと、どんな人種であろうと、男でも女でも、性的マイノリティであろうと、人間であることに違いはないということ。
そのことに気付かずに平和に暮らす私達は、国境マイノリティーなのだ。
そして母は、とっくにそのことに気がついていて、それでいてなお、このマイノリティーを享受し続けるつもりであるのだ。
と、そこまで考えて、
「そうだね。」
と私は応答した。