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千鳥ヶ淵の乱

脚本です。


ここでの登場人物


安藤輝三 帝国陸軍大尉 歩兵第3連隊第6中隊長

永田曹長 第1小隊長

堂込曹長 第2小隊長

奥山分隊長


鈴木貫太郎 侍従長

鈴木の妻



梶山健   士官候補生

星光    士官候補生


秩父宮ヤスヒト親王 歩兵第三連隊教官







〇 回想 夏の青空

  モクモクと沸き立つ入道雲


〇 回想 小高い丘の上の草むら 

  クレジット 大正13年 夏 代々木練兵場


  ヤスヒト 安藤 梶山 星 登って来る

  安藤 梶山 星  汗だくで疲れた様子で草むらに座り込む


  ヤスヒト「何だ もう 降参か? もう一往復するか!」

   ヤスヒト 笑う

  ヤスヒト「よおし これから軍事面を離れて 一般教養のディスカッションだ」

   安藤 梶山 星 お互いの顔を見合わせる 

  ヤスヒト「課題は・・・ そうだな~ これからの日本はどうあるべきか? と言うことにしよう

       貴様たちが日頃考えていることを率直に述べてみよ!」

   安藤 梶山 星 暫く沈黙

  安藤  「はい!」

  ヤスヒト「よし! 安藤候補生 ここは我々以外に誰もおらん 遠慮なく述べてみよ!」

  安藤  「はい・・・ 私達 日本人はアジア民族を代表する優秀な民族であります そのため日本

       は 常にアジア的な視野で政策をはじめ総ての視野で物事を考えなければなりません 

       すなわち これからのアジアは各民族が協力して欧米列強に当たりアジアの独立と共存栄

       を図るべきだと考えます・・・」

  ヤスヒト「その具体的方策は 何と考えるか?」

  安藤  「それは 志那大陸の統一と近代化であります」

  ヤスヒト「・・・」

  安藤  「日本は まず 満州の安定を先決といなければならないと考えます」

  ヤスヒト「・・・」

  安藤  「具体的には まず 満州からソ連を駆逐し ロシア民族の北からの侵略に対する防衛線を

       築くことであります」

  梶山  「・・・」

  星    「・・・」

  安藤  「このままではソ連を始めとした西欧の軍事 経済 そして文化がアジアを侵略し アジア

       の伝統的な文化が滅んでしまうのは目に見えております」

  ヤスヒト「・・・」

  安藤  「志那民族が このことに目覚め 日本と手を組まない限り 西欧列強の駆逐は困難と考え

       ます」

  ヤスヒト「ほう 安藤 なかなかの意見だ しかし満州を含む志那大陸の主権は志那民族で日本では

       ないぞ」

  安藤  「ですから・・・」

  ヤスヒト「安藤 貴様の考えは正論だ でもな 今の日本ではアジア全部の面倒を見ることは 軍事

       経済においても不可能だよ 悲しいが それがアジアと欧米との国力の違いだ」

  安藤  「・・・」

   ヤスヒト 安藤 梶山 星を見渡して

  ヤスヒト「それよりも まず まずだな 腐敗した政治を刷新して国民の生活を安定させて 低迷し

       ている日本民族の精神を奮起させて国力を付けることが先決だと思うが どうだ!」

   安藤 梶山 星 気迫溢れる真剣な目でヤスヒトを見つめる

  ヤスヒト「よし! もう一往復するか!」

   安藤 梶山 星 首を横に振る

   ヤスヒト 微笑む


〇 夜空

  雪が舞っている


〇 雪道 (東京 千鳥ヶ淵付近 昭和11年2月26日)

   安藤 夜空を仰ぐ

  安藤   「殿下・・・ 私は・・・」

   安藤 ハット我に返り 兵に

  安藤   「各員はそれぞれ所属指揮官の命令を遵守し整々たる行動に徹するべし!」

   兵達 雪中に立ちすくんでいる

  安藤   「なお 発砲は分隊長以上の指揮官の命令によってのみ行うものとする!」

   安藤 小隊長 分隊長達に

  安藤   「各指揮官は 事の重大さを認識し慎重に部下の指揮に任ぜよ!」

   小隊長 分隊長達 姿勢を正す

  安藤   「各隊ごと弾薬を装填し 小銃に着剣を命じよ!」

   小隊長 安藤に対して挙手の敬礼をする

   若い兵隊 身震いする


〇 鈴木貫太郎官邸 表門

  安藤 堂込以下の兵の達 小走りで来る

  警官(2人)立っている

  警官 挙手の敬礼をして

  警官A  「何事ですか!?」

  堂込   「開門して下さい!」

  警官A  「早朝です! 正当な理由をお聞かせ下さい! 指揮官はどなたですか!?」

   兵達 警官を取り囲み銃を突きつける


〇 鈴木貫太郎官邸 裏門

  永田以下の兵達 路上に機関銃を据え付ける

  永田 兵達 門を開けようと固くて開かない

  兵達 ハシゴを塀に立てかけ 永田を先頭に次々と乗り越えて行く


〇 鈴木貫太郎官邸 表門

  兵達 閉ざされた玄関の扉を小銃の床尾板で叩き壊して邸内に侵入する


〇 鈴木貫太郎官邸内 廊下

  薄明りの中 長い廊下が奥深く続いている

  奥山 手探りで進んで行く

  奥山 最初の襖を開ける


〇 女中部屋

  女中(3人) 身を寄せて震えている

  奥山   「あなた達には何もしないから安心して下さい 動くと危ないから この部屋から出ない

        で下さい」


〇 次の部屋

  奥山 襖を開ける

  テーブル 湯呑が置かれている

  奥山 湯呑を持つ

  奥山   「温い・・・」

   奥山 襖を次々と銃剣で突き刺していく


〇 次の部屋

  奥山 手探りで電灯を探してスイッチを入れる

  部屋が明るくなる

  奥に襖がある

  奥山 進み襖を開ける

  

〇 和室

  鈴木の妻 布団の上に正座している

  奥山   「侍従長閣下の奥様でございますか?」

   妻 うなずく

   奥山 布団に手を入れる 

  奥山   「閣下はどちらでございますか?」

   妻 押し入れを見て うなずく

   押し入れの襖が開いて拳銃を持った鈴木が出て来る

  奥山   「侍従長閣下でございますか!?」

   鈴木  無言

   奥山 妻に

  奥山   「ご無礼のほど深くお詫び申し上げます このお方は侍従長閣下でございますか?」

  妻    「そうです・・・」

   奥山 大声で

  奥山   「侍従長閣下だ! 中隊長に報告!」


〇 和室

  兵達 鈴木を取り囲んで小銃を突き付けている

  鈴木   「多勢に無勢・・・ 勝負にならないな」

   鈴木 拳銃を置いて座り込む

  奥山   「閣下の事は 常々 中隊長からお聞きしております・・・」

   奥山 言葉が詰まる

   永田 堂込 入って来て

  永田   「侍従長閣下でございますね!」

  鈴木   「そうだ 話があるなら聞こう!」

  永田   「中隊長の安藤大尉がおりますれば お話申し上げると思いましすが・・・」

  鈴木   「安藤・・・ おお 君達は安藤君の部下かね 安藤君は元気かね?」

  永田   「はっ! お元気であります! もう・・・ もう 時間がありません お許し下さ

        い! 昭和維新断行のため 人柱になって頂きます・・・」


〇 夜空

  雪が舞っている  

  


  

  






原作: 奥田鑛一郎   「二・二六の礎 安藤輝三」より

脚本:浜昭二

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