29話 ダメ人間から抜け出す儀式。
そうして、月曜日を迎えた。月曜日の朝は、まあまあ早い。講義が1限からの時ほどではないが、2限からの時ほどダラダラしていられない。
しかし、日曜日は日がな一日ダラダラしていたようなものだ。古賀の家に着いてからも、もちろんダラダラするだろう。これ以上、ダラダラを求めるのも変な話なのだが。もう少しだけ、布団の上に転がっていたかった感じは否めない。
ダメ人間である。大学生になってからというもの、私の睡眠時間は圧倒的に増えた。眠くなくても寝る。とにかく寝る。ダメ人間から抜け出すためには、儀式が必要だ。つまるところ、お酒を呑む。とことんダメになる——。
今日は、大学の近くの駅前のデパートに寄った。お詫びの菓子折りを買うためである。何となくケーキを頭に思い浮かべていたのだが。
結局、日持ちのするホールのチーズケーキにした。余らせても、明日以降に食べてもらえれば良い。それに、古賀がケース買いしているレモン風味のハイボールと相性が良さそうだった。
途中で、いつものコンビニに寄る。コンソメ味のポテトチップスとチョコレートと缶チューハイと、明太子のおにぎりを2つ買う。おにぎりが唯一の昼食だ。お酒を呑むので、古賀も私もご飯の量は少なめである。
缶チューハイは買いすぎると荷物が重くなるので、350mlの缶を3本しか買わない。充分な量だとも思っているのだが。いつのまにか、古賀と一緒にハイボールを呑んでいるのが常だ。
ハイボールへ行き着く頃には、だいぶ私は酔っている。1つの缶を分け合って呑むので、どのくらい自分が呑んでいるのかもわからなくなっている。確実に言えることは、いくらでも古賀はお酒を呑めるということだ。底が知れない。
緩い上り坂を歩いて、大学の前を通り過ぎた。大学裏のアパートが近づいてくるに連れて、勾配が急になる。暑くなってきて、カーディガンの袖を捲った。
アパートの前に着く頃には、すっかり息が上がっていたのだが。目の前には階段が立ちはだかっている。急な階段は見慣れているはずだが、ラスボス感があった。
トートバッグのショルダーを肩にかけ直す。左手にコンビニの袋、右手にデパートの紙袋を持っている。バランスを崩さないように気をつけながら、カンカンと階段を上っていく。
なんとか部屋の前に辿り着いて、インターホンを押す。すぐに古賀が扉を開けてくれた。部屋に入れてもらって、まず私がしたことはスライディング土下座である。




