2話 小説が書けない小説の注意事項。
書かなければならなくなった私の文章について、もう1度だけ書く。最後に、小説が書けない小説についての説明を付け加えさせていただきたい。読まれてしまった後で、いろいろと文句を言われては困るからだ。
先に、結論だけ伝えておく。小説が書けない小説なんて、恐らく読まない方が良い。私は声を大にして言おう。「100害あって1利なしだッ!!!」
あなたが書く側の人間であったならば、無視するべき小説である。読んでしまった暁には、あなたも小説が書けなくなってしまっている可能性が限りなく高い……。
あなたは私を罵倒することになるかもしれない。「お前が書けない書けない言うから、俺まで書けなくなっちまっただろーが、バカヤロウ」
それでも一切、私は責任を負わない。「アー、小説を書けない小説は呪いの書なのです。お仲間ですね——」
あなたが読む側の人間であったならば、断固として無視するべき小説だ。読んでしまった暁には、イライラしまくってしまう可能性が限りなく高い……。
小説が書けない小説の意識の表層には「書けない」という文字が存在する。まるでコマーシャルメッセージであるかのように、顔を出してしまう。
大事なことだから2回、言うのだが。私にとって極めて重要だと思えるシーンですら、「書けない」という文字が現れてしまうのである。
「僕は君のことが好きだ」「ありがとう。私は君のこと……えーっと、……書けない、書けない。えーっと、書けない理由はね」
——書けないと口にするだけでは止まらず、言い訳をし始める……! かつて、これほどまでにレベルの低い小説を私は読んだことがあっただろうか。いや、絶対にない。
ちなみに上記のシーンは、ただの私の妄想である。記憶から危うく消去しそうなところではあったが、実際の私は1週間前に失恋したばかりだ。
振られた理由は定かではない。ただ、悲しいことに振られたことは確かだ。付き合っていた彼が無情にも別れを告げてきた。
「君のことは好きだけれども、君の飼っている犬が嫌いなんだ」と。
同じ大学の文学部の彼は、立派に詩人であった。彼が何を言っているのか。詩的すぎるために、私には理解できないことがあった。今回も例外ではない。
私は現在、犬を飼っていなかった。つまり、ここでの犬とは暗喩なのである。メタファとしての犬の存在を考えるには、膨大な時間を費やす必要がありそうであった。