表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/33

14話 小塚雅史先輩という人物像。

 微妙に突っ込みづらい点があるうえに、付き合いも深いわけではない。多くを語れるほど見知った人物ではないのだが。一応、小塚雅史先輩について記す。


 ——思い返せば、ひと月ほど前。とあるゼミの日のことだ。いつものように何気なく私が講義室の扉を開けると、同じゼミに所属している人間の数が増えていた。何のこっちゃ。


 初めての3・4年合同ゼミの日を、私が完全に失念していた結果である。誰が3年で誰が4年かすら判断のつかない空間に、いきなり理由もわからないまま放り出されていた。


 いや、まさか。すでに何回か顔を合わせていた3年ゼミ生の顔を1人も覚えていなかったとは……。さすがに衝撃的である。正直に白状すると、私には誰が増えたのかがわかっていなかった。というよりも一瞬、講義室を間違えたのかと考えるレベルであった。古賀は同じゼミでないことが、悲しい……。


 人見知りは例のごとく、立派に発動していた。こっそりと、私は入り口付近の席に座って縮こまる。そして、1歩も動けなくなった。それからは教授が来るまで、ただ漫然と室内の景色を眺めている風を装った。


 具合の悪いことに、ゼミの講義室の机の配置はコの字型である。だから、実際のところは誰とも目を合わさないように注力していた。

 

 ——しかし、そのような状況の中でも一際目を引く人物がいたのである。2メートル近い身長のせいであろうか。田舎町から見える遥か彼方の鉛筆塔のごとく。あまりにも、座高が高すぎるッ……!


 机の下に収まりきらず組まれた足は、なおも収まりきらず盛大に横へとハミ出していた。姿勢も行儀も悪い。思わず私は、彼の顔を伺ってしまう。


 ひょろ長い男の顔は一面、ニキビだらけであった。赤いプツプツから私は日本列島の山々を連想しかけたのだが。タイミング良く教授が講義室に入ってきたので、連想は遮断された。


 後々の自己紹介によって、この日本列島顔の男を小塚雅史先輩だと私は認識したのである。ちなみに、外見のインパクトが強すぎた。だから、出会った時の格好はサラリーマン風走り屋スタイルだったかどうかの記憶がない……。


 でも、私が小塚先輩を自己紹介で覚えたように。私もまた小塚先輩に覚えられた、らしい。小塚先輩は講義が終わった後に私の机の前まで来て、話しかけてきた。


「人手を探してるんだ。お前さん、サークルもバイトもしていないらしいな。ちょっくら小遣い稼ぎしないか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ