あっちゃ~!油断してたよ
1時間ぐらい小川を辿って南下すると、前方に目の前に大きな溜め池と、その近くに5坪ぐらいの大きさの小屋が見えてきた。
たぶん、俺が考えていた通りに成りそうだ。
「うわ~大きな水溜まりなのですよ」
「ははは、ミーナ?これは水溜まりとは普通は言わないんだ。一般的には池とか堤って言うんだよ」
「そうなんですか?でも、こんなに大きな水さんは初めて見たので、びっくしなんです」
実際には小川をたどって来ているのだが、たまたまここに居合わせた様に振る舞う俺と違い、ミーナは純粋に初めて見る光景に感動していた。
もちろん下手な演技をしてまで偶然を装おうとしたのには、ちゃんとした理由がある。
ここにたどり着く前、エリーザから農作業の有無について聞いていたからだ。
彼女の話では農業、つまり野菜等の栽培は一般的ではないとの事だった。
彼女は自分が知らないだけの可能性は有ると言ってはいたが、俺の認識としても、たぶんこの辺りで生活する者に農作業の習慣は無いだろうとふんでいた。
農業が盛んで有れば、彼女達の集落地であるミーマにおいてでも、何かしらの畑や田が有ってしかるべき。
しかし身近な者どころか、多岐にわたる寄せ集めによって大きな集落になったはずのそこに、それらは見当たら無かった。
つまりは狩猟や採取といったもので日常的な食糧を得るのがこの世界では一般的なのだろうと思う。
しかし、どう見ても人工的に整備された河川に続き、溜め池、そしてその脇に有る小屋。
その先に考えられる事は・・・この先の地では農業が行われている可能性が有ると考えられるんだ。
もちろん農業と決め付ける事は出来ないが、少なくとも水源を調整し利用する何かがある。
それはすなわち集落が有ることを示す。
しかもこれだけの規模のモノを整えるには、少人数では無理なはず、それを考えると、ミーマより大きな集落が有るとみた方が良さそうだ。
考え事をしていた俺は、今、最も警戒すべき事を見落とした。
「タイチさん!伏せて!」
後ろを歩いていたエリーザが、大きく声を張り上げつつ俺の横を駆け抜け、ミーナの前に立つ。
ガガガ!・・・ガガ!
「・・・うぐっ!」
咄嗟の事で、一歩対応の遅れた俺は飛来してきた数本の矢をまともに受けてしまった。
エリーザは自身の前で槍をクルクルと高速回転しながら、未だ飛来してくる矢をいなし、後方のミーナを守っているが、俺が矢を受けた事を知って顔が真っ青。
「タ、タイチさん!大丈夫ですか」
降り注ぐ矢が一段落したのを確認したエリーザが声をかけてくるが、また再び矢が飛来してくる可能性が有る今、彼女はこちらに目を向ける事が出来ない為、俺の返答を待っている。
「あっちゃ~!油断してたよ」




