・・・って事は俺は?
「お待たせいたしました」
前から女性が声をかけつつ近付いてくる。
肌の張りや艶から20前後位だろう。
顔は端正に整ってて、腰まで流れる髪はサラサラ。
小顔の美しい女性だ。
ウエスト絞りのマキシ丈ワンピースは細身の彼女をよりスリムに見せる一方、大きく開いたVネックが豊かな胸を強調してる。
左腕は後ろに回されていて、右腕はフレア袖の効果で繊細さが増し、その先の白魚のような指を有する右手で、開かれた状態の分厚い本を持っている。
「・・・誰?」
この女性に見覚えは無い。
だが声には聞き覚えがある気がする。
「やっと、あなたの死後が決まりましたので、こちらへ来ていただきました」
「死後?転生や転移は今までも有ったけど?もしかして、俺はまた死んだの・・・」
「あなたが想定外の死によって失った時間はこちらでおくって戴きます」
「想定外って?失った時間?ってだから・・・」
「今回は想定外の死でしたので、替わりの人生をご用意しました。しかし、本来なら人生とは一度きりのものです。再びこのような待遇があるとは思わぬよう」
「だから・・今までも・・・」
「御伝えする内容は以上です」
そう言い終わると彼女は、右手に持つ広げられたままだった本をパタンと閉じた。
・・この一方通行感。
この感じは間違い無い。
最初の死から毎回聞いてきた、直接脳に語りかけてくる声の持ち主だろう。
しかし、告げられた内容は、どうにも最初の事につての様な気がする。
訳がわからない。
だが、どうせ話しかけたところで会話に成らないだろう。
どうしたら良いものかと、ボーとしていると、目の前にいた女性はクルリと身を翻し、俺から遠ざかりつつ、不意に声を漏らした。
「これからなにしよ~かな。それにしても主神様、怖い顔しながらも“それが終わったら“暇をやる“だなんて、ビックリよ。初仕事が他世界要神様警護だったし、次は想定外死の移転だし、褒美的な?時々何か怒られたけど、やっぱ私は他と違う有能株かな~ウフフ」
と、そして姿が見えなく成った。
あんた・・そんなキャラなん?
堅物お高い事務系だと・・・
あ!片鱗出まくりじゃん。
堅物→自己中、お高い→人の話を聞かない、事務系→一方通行・・・納得出来てしまった。
それと同時に・・・
御愁傷様。
彼女は言った。
暇をやると言われたって。
その暇・・・多分、それは休暇を意味してないな。
彼女は勘違いしているようだけど、大方、戦力外通告やろうから。
・・・って事は俺は?