討伐されているのだから。
目的地迄にはまだまだ距離があるし、初日から無理をすることは無い。
ミーナの体力の事も考え、早めに休みがとれる場を探すことにした。
小さな集落は有るとの話だったが、さすがに1日でたどり着ける位置には無いらしく、今回は野宿となる。
手頃な場所を探していた時、前方から猛スピードで、こちらに突っ込んでくる何かに気が付く。
それは集団で大地を蹴り進んでいるらしく、土ぼこりが激しく巻き上がって正確な数が解らない程だ。
「あ!あれはラッシグリエです。タイチ殿ミーナを!」
エリーザもそれに気が付いた様だ。
彼女は俺に声を掛けると、背負っていた長棒を背中から取り、巻かれた布をシュルッと外した。
彼女が取り出したそれは、全長2㍍はある槍。
先端の刀身である穂の部分は50㎝の一般的な素槍型という、THE槍と思う形なのだが、けら首と言われる穂と本体(太刀打ちと称される部分)を繋ぐ所がクビレておらず、ボコッと太い為、接続用の金物(口金)がえらくごっつい。
槍ではあるので突きや切り付ける事を重点に置きながらも、打棍としての性能を持つ特殊な物の様だ。
それをクルクルと自分の前で2回転させた後、俺達より前に躍り出ると、左足を後ろに引き半身で、穂先を対象集団に向け構えた。
・・・・かっけー。
エリーザの一連動作と構えた姿に俺は一瞬目が奪われてしまった。
だが対象の集団は、そんな動作にお構い無しと言わんが如く突進を緩める事なくズンズン迫ってくる。
野獣ラッシグリエは、最前世で言うなればイノシン、走り出したらガンガン突進するタイプらしい。
名前からして、ラッシュとサングリエの合わせ名みたいらしいが、現状は結構緊迫した空気。
集団の先頭とエリーザの距離が6㍍程に近接した時、彼女が動く。
対象に向けていた穂先をスーっと下げた足の方へ一旦引き下げ、キッと睨みを強め槍を握る石突き(穂先の真反対)に近い右手に力を込めた。
更に距離が切迫してくると、エリーザは素早い槍運びで一気に横一線に振り抜く。
対象に直接当たる事なく空を切った後、今度は右足を後方に引き下げつつ、振り抜いた穂先を対象集団に向け直し、更に腰を落とすと連続3連の突きを3回放った。
これも対象に直接当たる事は無いがそれで良い。
彼女は初めから直接当て切る予定ではなく、素早く横一線に振り抜いた初撃で真空状態を発生させ、3×3の突によって圧縮した空気を外部から送り、部分気圧を強制的に変え、真空の刃の罠を張ることが一連の動きの目的だったから。
彼女は鎌鼬現象の仕組みとされる状況を作った訳だが、実際の鎌鼬の原理は違うらしい。
だがそんなんはどうでも良い。
現に今、それによってほとんど討伐されてるのだから。




