言い難い。
楽しい時間も終わり、皆は俺達に礼を告げた後、各々片付けに散っていった。
最悪な状況は回避できたとはいっても、もちろん誰もが無傷ということはなく、中には襲撃を受けた際、傷を負ったものや命を落とした者もいる。
しかし、今回の件でミーナを責める者は居ない。
その理由はミーナの実の母親であるサリナこそがこの集落の開設者だったからであり、誰でも受け入れるスタンスなこの集落には、本来であれば既に絶命していたであろう者の命も助けられていたのだ。
劣合種である者の大半は能力不足で同族により追い出された者達。
その時に大きな怪我を負わされたり、心に傷を受けていたり、それらで無くとも、旅の途中野獣に襲われて命からがらここにたどり着いた者も少なくはない。
多くの者をここに招き入れ、多く者の傷をいやし、そして心をも癒していった彼女を皆は聖母のように慕った。
もちろん何も能力を持たない者がそれらを可能にできるはずはなく、彼女自身が優秀な治癒術士だったからだ。
サリナは人族と獣族の間に産まれた獣族人の優合種。
優合種は基本的に街や村、集落に入り込んだ別種族の混合種の者との間に産まれる。
希に他種族の者が人化魔法等を用いて接触する場合もあるが極少数だ。
サリナの場合も人族の街で体術指導をしていた獣族人の男性と、その指導を受けていた人族の女性が恋に落ち宿った子であった。
しかも母親となる女性はCランクの冒険者で治癒術士だった為、サリナはわりと幼くして優秀な治癒術士の冒険者となっていた。
やがて彼女は所属していたパーティーの人族男性と結婚しミーナを授かった。よってミーナは獣族人劣合種。
だが幸せは長くは続かなく、最愛の夫は人族同士の紛争に駆り出され若い命を戦場に散らしてしまったのだ。
もしも治癒術士である彼女が彼の側にいれば助かったかもしれない。
だが産まれたばかりの我が子を連れて戦地に同行する事は出来ず、夫を失った無念を募らせ悲しみに暮れた。
幸せだった思い出の詰まった街で、最愛の夫は2度と自分の元に戻る事の無い生活に耐えきれず彼女は街を出る。
そしてこの集落の地を生活の拠点したのだ。
もともと優しい性格だった彼女は、誰隔てなく助け共に生活していくと、次第に大きな集落となっていった。
しかし自分を犠牲にする人助けは体に大きな負担をもたらし、やがて病魔が蝕む結果になり、若いながらにしてその人生を閉じてしまった。
だが、その彼女の意志は集落全体の存在意義として、亡き彼女に変わり集落に住まう全ての者が担っている。
とは言うものの、世代が変われば集落の存在意義は残っても、災害の火種とりうるミーナを集落全体が一生涯受け入れ安住出来るとは言い難い。




