まっぱなんすってば!
生まれて45年、俺の手は人を殺した。
いや、殺せてしまえた・・この世界では、もしかしたらさほど珍しいものでは無いのかもしれない。
だが人生をまっとうする事を強く願った俺が、他の人生を簡単に摘み取ってしまった・・・摘み取れてしまった。
自分の能力があり得ない事になっている可能は知っていたはずだ。
この手は穢れた。
違うな・・・穢れているのは俺の心だ。
実際には奴がこの世界で俺によって死に繋げられた4人目かもしれないのだ。
直接自分の眼下で認識し、手にその感触が残るのが奴だっただけで、ミーナを助ける際に3人を手に掛けていたはず。
それさえ軽い感じで意識から除害出来てしまっていた俺。
・・自分の有り様を認識し直さなければならない。
確かに死と隣り合わせであろうこの世界において、全く手を汚さず生き抜くなど綺麗事なのかもしれないが、大きな力を手にしてしまっている自覚を持つ必要性はある。
しかし今は後悔の念が俺を襲い、その場で立ち竦む事しか出来なかった。
ボ~ゼンと意識の中、ツンツンと触られる背中の感触に振り向くと、ミーナがプンプン顔で俺をにらみ付けていた。
「お兄~ちゃん!!そこにチョン!」
何故か逆らえない俺は、長剣を異空間収納に片付けた後、ミーナの前に、正座。
「やり過ぎだと思うのです」
「はい・・・」
「怖かったなのです。鬼さんだったんです」
「・・・はい」
「そんなお兄~ちゃんは嫌いなんです」
ガ~ン!!ミーナにミーちゃんに嫌われました。意もせず頭が垂れさがっていく。
「も~怖いお兄~ちゃんはメ!なんです」
「はい。・・はい」
下がりきった俺の視線はミーナの足元しか見えないが、その小さな足が近くと、小さな体を一杯を使って包み込む大きな心を感じた。
「大好きなお兄~ちゃんは、もう怖い鬼さんになったらメ!なんです」
ぽとぽとと俺の頭上に冷たいものが降り落ちているのが解る。しばらくの時が過ぎ、ミーナは俺をそ~と放した。
おもむろに顔を上げると、彼女は俺に立つよう手合図で促してきたので、立ち上がる。
「ミーナは良い子に成るんです。だからお兄~ちゃんも鬼さん成らない様にお約束なんです」
ニパ~と笑顔で小指を突き出してきたので、その小さな小指に俺の小指を絡める。
「指切りげんまんなんです。お約束ですよ?」
この世界にもそんな風習が有ることに驚きを感じたが、俺も
「ああ、約束だ」
と言って絡めた指を離した。
その後ミーナはくるっと体をひるがえし、パタパタとこの集落の人達と思われる集団の方へ走っていった。
「あらあら、貴方もミーナと指切りの約束ですか?」
龍化を解いたエリーザが俺の前で腰に手をあて立っていた。
だからエリーザ先生!まっぱなんすってば!




