彼女は忘れない。
次の動きは決まったが、集落まではの距離はいかほどかね?
コーヒーを飲み終え少し考える。
俺やエリーザの足にミーナがついてこれるとは考えにくい。
実際、今までの動きを見る限り、ポテポテやポトポトという表現になる足取りなんだ。
幼き天使の歩みと言えば良いかな?
エリーザに目を向ける。
彼女もコーヒーを飲み終えミーナを愛でていた。
そのミーナは、椅子にちょんと椅子にすわり、彼女の手にはやや大きすぎる缶を両手でしっかり挟み、一生懸命に持ち上げてコクコクと飲んでいる。
幼い子って、なんで行動の1つ1つが可愛いんだろう?
まあ、ミーナはミーナというだけで可愛いんだが。
ちなみに缶のフタ開けは既に2人とも馴れてたらしく自分達で開けて飲みだしていた。
「エリーザ?集落までの距離ってどのぐらい?」
「9日程ですが、今の私なら半日も有れば着けます」
「ん?どういう事?」
不思議に思う俺に、エリーザは右の翼を自分の体の前に伸ばし、顔の前に来るように折り曲げ、それを左手でさすりつつ答える。
「失った翼が今は有ります」
俺の回復魔法で元に戻った翼は、彼女が龍族の村を去る事になった原因だったらしい。
他の種族と違い、龍族はその絶対数が限りなく少なく、加えて、同族間であっても繁殖能力が極めて低いため、子孫を重んじる傾向が強く、例え劣合種であっても、一方的に追い出す事は無いらしい。
だが彼女は、ある事を切っ掛けに右の翼と尾を失った。
龍族の村は、個々が高い岩のてっぺんに巣を設けて暮らす。
なので、空を自由に行き来出来ない者は、共に生活したくても村での生活が困難。
とはいえ、自由に飛べなく成ったエリーザを周りの者達は無視する事なく、寧ろ何かと助けしてくれてたらしいのだが、何時までも頼るのに彼女の方が耐えらず、母親の死を期に自ら村を去ったらしい。
いく宛の無かった彼女は各地を放浪した。
劣合種とはいえ龍族である彼女は、高位種族であると共に、希少種でもある。
至るところで注目が集まり、命や貞操の危険にさらされたそうだ。
幸いにも彼女は龍化が出来た為、自由に空を舞うことは出来ないにしろ、その場をやり過ごす程度の飛行は可能だし、能力の上昇効果も有って、周りの者達が、おいそれと手を出せるものではなかった。
だがある時、数の暴力に負け窮地に追いやられる。
その時、救いの手を差し伸べてくれたのが、今から向かう彼女達の集落の人達だったらしい。
その恩を、彼女は忘れない。




