彼女は小さく頷いた。
「私達は、一旦自分たちの集落に戻ります」
「それって、安全な事だとは思えないよな?確かにエリーザはなんとかなるとは思うけど。片時もミーナと一緒とはできないよな?状況だと、また襲われる可能性が高いんじゃないか?」
「ええ。私もそう考えています。ですが一緒に暮らしていた者を何時までも・・・は出来ま・・ん。それに、ミーナの・・・サリナさんに・・・私は・・・だから・・・だから・・・」
堪えていたエリーザの心がこぼれ、言葉を詰まらせながらも話を続けようと必死だ。
「ミーナのおか~さん死んじゃったの。だけど、まだお墓が出来てないの。だから作ってあげるんだよ」
言葉を詰まらせるエリーザを助けるようにミーナが代わって答える。
まだまだ幼い幼女が母の死を受け入れている事について驚きだが、彼女達が危険を承知している上ででも戻る事を決意している理由は理解出来た。
「・・・そっか」
いかんぞ!
俺!!
余計な事は考えるな!
首をつっこむんじゃない!!
多分変なこと言い出すぞ・・・自分の目的を忘れるな!俺は今度こそ人生をまっとうするのが・・・って、出来るか!!
例え、これから発してしまう言葉のせいで、いらぬ厄介事に巻き込まれ、命が危険にさらされる結果となったとしても、今この場で彼女らとの縁を切り捨て、生きることのみにしがみつく選択は俺には出来ない。
"人生をまっとうする=無難に生き長らえる"
ではないよね?
きっと・・
もしかしたら、その考えかた自体が間違いなのかもしれない。
けど、俺はけっこう頑固なんだ。
間違ってても考えを曲げたくない性分なのは昔からだし、もう45年もそうしてたんだから変えられない。
「俺も今すぐに何かする予定はないし、一緒に行ってもいいか?」
たぶん・・・いや、これで良かったんだ。
彼女らが否定したらしたで、それは受け入れるしかないけど、自分が納得いく選択をしながら、人生をおくる事が大事だと思う。
エリーザは俺のその言葉に目を丸くした。
一方、ミーナは椅子を降り、ポテポテとテーブルなぞりで近付いて俺を仰ぎ見ながら聞く。
「おに~ちゃんもミーナ達と一緒に来てくれるの?」
「ん?うん。ミーナちゃんと、もうちょっと一緒にいたいもん」
俺の手の高さにちょうどよい場所に有る彼女の頭をヨシヨシしと撫でる。
千切れるんじゃないか?と心配になるほどに彼女のしっぽは大きく振れている。
「いいかな?」
エリーザに目を向け直すと、彼女は小さく頷いた。




