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歯がゆい。

 フルーツを少量取り皿に移し、生ハムに手を伸ばしかけたところで、俺は自分の動きを止めた。


「エリーザ?さっきから、()()を気にしてるみたいだけど、何か気になるの?」


 取るために伸ばしかけていた手の用途を変更し、生ハムへと人差し指を向けて声をかける。


「・・・すみません。いえ、何でもないのです」


 小さな声で俺に返し、いかにも作り笑いにしか見えない顔を見せて他の動作へと移していった。


 あれ?あれれ?・・・俺は、てっきり生ハムくんの虜になっちゃていたのだと想っていたが・・・違う気がする・・・


 その後、エリーザは生ハムには一切手をつけないどころか、見向きもしなかったが、俺は気が付いてしまった。


 食事をとりながらも、瞳の奥に涙が潜んでいたことを。


 残念ながら俺の、楽しく会話をしながらの食事計画は、情報収集さえもままならぬ間に終わることになってしまった。


 2人共、初めて見る異世界の産物に悪戦苦闘、四苦八苦していて、会話どころでは無かったのだ。

 

 いや、ミーナは俺の真似っこして楽しそうに食べていたから、それはそれで全てが失敗だったとは言えないが・・・


 食事が終わり、片付けに移ってしばらくすると、ミーナが俺の近にいて、エリーザとはやや距離がある形になった。


 食器を洗うための桶を2つと洗剤、スポンジを異空間収納から取り出し、桶の片方を水で満たした時、エリーザが食器洗いを申し出てきたので、お願いすることにし、ミーナは洗い終わった食器類を俺の元へ運んでくる役をかってでてくれたことで、できた環境だ。


「ミーナちゃん。ちょっと教えて?エリーザは生ハムは嫌いなのかい?」


「生ハム?」


 首を傾げて聞き返してきた。


 塩漬けして燻煙し、ろうなどを塗って、1~2年ぐらい低温熟成させて作る生ハムは、保存も効きやすく、冒険者の多いこの世界だから似たようなのは有るはずだ。


 もしかしたら呼び方が違うのかもしれない。

 

「そう、さっき食べた薄いお肉」


「ああ~あれのこと?いつも大大大好きって言ってたよ」


「そっか~有り難うね」


 頭をヨシヨシしてお礼をいうと、ニコ~とした満面な笑顔で、ブンブンと尾を大きく左右に振って喜びを表してくれた。


 ミーナが再び洗い終えた物を取りにエリーザのところへポタポタ向かうのを見届け、俺はまだ乾ききっていない食器類の水分が飛びやすいようにテーブルに並べながら考える。


 なんとなく気になるエリーザの様子。


 大好きな生ハムをガン見していた迄は解るが、食事の際は一切手を着けることがなく、今は涙が流れ出るのを、洗い物をすることで気持ちをそらさせ、必死に堪えて要るようにしか見えないのだ。


 だが、だからと言って何かをしてあげれる訳ではないのが歯がゆい。

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