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登るとしますか

 俺は、自分の事を、わりと何も気にしない性格だと思っていた。


 だが、いざ劣化スキルの現実を目の当たりにすると、少々、精神的に堪えたんよね。


 人間、一度でも優越感を得てしまうと、それ以下の状況に置かれた場合、どす黒い感情が支配する。


 今回の件で、俺も、その人間の醜い部分を知った。


 それが、精神の疲れを更に加速させ、心が折れそうになったんだ。


 多分そうだと思う。


 ・・・思わせて。


 ただ、折れそうにはなっても折れきった訳では無い。


 俺の精神は少年仕様でなはく、事実上45年もの歳月を経験したオヤジ仕様だかんな。


 それなりに耐性はついている。


 つもりだ。


 大きく息を吸い込み、気持ちを落ち着かせる事で、微かに残る雑念を振り払う。


 そして、気持ちを新たに、当面の目標としている大岩へと足を進めた。


 ・・・あれ?


 割と直ぐに到着。


 単純に目標としていただけだから、時間は計っていない。


 ただ、到着したものの、ここは特に何の変哲もない岩。


 それは解りきっていた事。


 まあ、特に何もする事も無いから、その大岩に背中を預けて座る。


 次の行動を思案する為だ。


 とりまえず、自分のステータスとスキルの状態は、おおよそ解ったから、あとは身体能力の確認ぐらいかな?


 現ステータスを再確認。


 体力が補正前の状態だと気付いたので、回復魔法でMAXに。


 回復魔法は魔力1ポイントにつき、概ね10回復。


 現魔力の半分程度で体力は全回復した。


 それに加え、魔力回復速度を測る。


 だいたい1分間に30程度みたい。


 さっきは落ち込んだけど、強化魔法の永続的使用が出来ないだけで、別段前世と代わりは無い身体能力は有りそう。


 能力補正が強いから、実は前よりチート状態かも?


 そう思うと、何だか晴れやかな気分。


 それは、体力を回復させた事も有るだろう。


 体力2割の状態では無意識に憂鬱感がでて当たり前だからね。


 不意に後ろの大岩を見た。


 遠目から見れば岩なのだが、間近に有るそれは目測で3階立ての建物に匹敵する垂直な一枚壁、高さは10メートル位かな?


 ロッククライミングの経験の無い俺では、普通、思い付かないはずの挑戦を、根拠なき自信が強く推薦してくる。


 立ち上がり腕を伸ばす。


 身体を軽くひねり、2回ほど屈伸。


 指先を絡め、キュッキュッと力を入れて、指筋を伸ばす。


 そして、大きな壁を前にして目を閉じ、体中の力を抜き、気持ちを落ち着かせた。


 さてっと・・・


 パッと目を開き、誰にという訳でなく1人呟く。


「登るとしますか」

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