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ダブルイメージ  作者: ナメゐクジ
第1章
7/29

第7話「三人の名探偵」

まさかこんなに文字数増えるとは…。本当は今回でこの話終わらせる予定だったのに…

「お父さん大丈夫? かなり大変そうだけど…」


「あぁ…まぁな…」


お父さんはかなり参っていた。

テレビのニュースで観たが、昨日から各地で死亡事件が続出しているらしい。しかも、その死因はそれぞれだ。

中にはヘビに噛まれて死んだ者もいるらしい、そういえば昨日テレビでヘビについて言ってたな。何というか、不謹慎だと思うけどタイムリーな死に方だ。

街中ではドラゴンの大群が攻めてきたのだと言われているらしい。僕もすぐにでも調べたいところだが、今の僕は入院中だ。そもそも色々と調べられる様な立場じゃない。

だから、利用させてもらう。


わざわざお見舞いに来てくれたところ悪いけど、僕だってこの事件は気になるんだ。

ちょっと入り込んでもバチは当たらないだろう。


【フェアリー。手筈通りに】


【分かりました】


「ん?」


途端、お父さんの具合が少し悪くなった。

だけどそれは一瞬で引いていき、お父さんはすぐに気のせいだと感じたのか気にしなくなった。


「どうしたの? 大丈夫お父さん」


理由が分かっているのにも関わらず、僕は白々しくそう心配してみる。


「え? あ、いや…ちょっと疲れただけだろ。大丈夫大丈夫」


「本当? あまり無茶はしないでね?」


「大丈夫だって。お前も、頑張って怪我治せ。な?」


お父さんはそう言って、病室から出て行った。


しめしめ。やっぱりそう来たか。これでも生まれてからずっとの付き合いだ。お父さんの性格ぐらい分かってる。あの程度の具合で、事件の捜査をやめない事も。


【フェアリー、行けそうか?】


【もちろんです。あの人間チョロいですね】


お前はしつこかったけどな。


結局、フェアリーに今の状況を理解してもらうのに丸一日かかった。

でもおかげで、今の僕でも事件の捜査内容を知る事ができる。本当はフェアリーを巻き込みたくはなかったけど。


【にしてもバニッシュさん。あの喋り方本気ですか? 人間の振りなんて気持ち悪いんですけど】


【振りじゃねぇよアレも素だよ。ああじゃねぇと怪しまれるんだよ。文句言うな】


【むぅ…】


どうやら、丸一日も説明してもまだフェアリーは完全には理解していない様だ。

そのせいかは知らないが、フェアリーは「バニッシュ」としての人格でないとマトモに話をしようともしてくれない。

何だか前より格段に面倒くさくなってないか…フェアリーの奴…。


【じゃあフェアリー。動きがあったら連絡頼む】


【え〜…ずっと人間のを見るなんて嫌ですよ〜。ねぇねぇ、それよりバニッシュさんの姿になって一緒に…】


「おやすみ〜」


僕はフェアリーの先を無視する為にそう言って目を閉じた。


え? 仕切りに「起きてくださいよ!」「もっとあたしと話してくださいよ!」って頭の中で声が聞こえるって? 多分気のせいだと思います。




ーーーーーーーーーーーーーーーー




【起きてください! バニッシュさん!】


知らん知らん。

何言われても起きないぞ僕は。


【リベッジって人間が出て来ました!】


「よっしゃ見せろお!!!」


僕は声を大にして叫びながら、目をバッチリと開けた。

目の前に映る光景は、木造の小屋の中だった。

その中にいたのは、マンハッタンおじさんとリーシャのお父さん…確か、ランスティンさんだ。


「悪いなリベッジ。わざわざお前の事務所を借りて」


お父さんの声だ。


「構わんさ。俺もその事件については調査してたからな」


どうやら、お父さんはランスティンさんと一緒におじさんの探偵事務所にいる様だ。


ちなみにこれは、お父さんの視界だ。


僕は今、お父さんの視覚を無断で共有している。


フェアリーの魔法は、「五感を取り外す魔法」。

その魔法を使う事で、他人の五感と共有する事ができる。そして、共有している人物同士の五感を繋げる事もできるのだ。

今は、僕とフェアリーが、お父さんの視覚と聴覚に繋がっているのだ。

だから僕は、今こうしてお父さんの見ているものが見えてるし、聞こえるものも聞こえている。

もちろん、お父さんは全く気付いていないけど。


こんな魔法を使えるものだから、フェアリーは情報収集にはピッタリだ。

気付かぬ内に実質取り憑く様な事をしたり、勝手に相手の話を聴いていたりする。そんな大胆不敵さが「妖精フェアリー」の名前の由来だ。


しかし今考えると、プライベートも何もあったもんじゃない魔法である。この魔法めちゃくちゃ怖えじゃねぇか。


「事件の内容はバラバラだ…。被害者も最初は警察関係だったのが、今は一般人も被害に遭っている。そして、何の共通点も見当たらない。複数のドラゴンが絡んでいるのは間違いないだろう」


おっと、いつの間にか話が進んでる。


「いや、それは多分違う」


お父さんの推理を、おじさんは否定した。

ストーキングしてて気に食わなかったけど、流石探偵だ。こういう推理は大得意らしい。


「どうして、そう思うんですか?」


ランスティンさんが、おじさんにそう訊く。


「ジオは先ほど、共通点が無いと言った。でもそれは間違いだ」


間違い? 共通点があるっていうのか?


「共通点は、『姿が見えない犯人』と『姿を消す犯人』のどちらかがいるという事だ」


「姿が見えない犯人と…」

「姿を消す犯人?」


お父さんとランスティンさんが意味の分からない復唱をする。正直、僕にもよく意味が分からない。

さぁ、探偵の見せ所だぞおじさん。


「『姿が見えない犯人』は巨大化したガラス片に刺さって死んだ学生と、警察署で被疑者が突然ミイラ化した事件などだ。そして『姿を消す犯人』というのは、警察署と闇商人を襲った赤紫色のドラゴンと警察病院の看護師を毒殺したヘビなど。何だか私は、これは全部一つの魔法なんじゃないかと思うんだ」


「何だかって…勘か? それで複数犯説を否定するのは…」


「いや、これは単独犯だ。間違いない」


おじさん、かなり自信満々だな。


「何故、そう言い切れるんですか? 勘…じゃなさそうですけど…」


「えぇ、よく考えてください。複数犯なら、どうしてこうコソコソする必要があるんです?」


おじさんの言葉に、ランスティンとお父さんはハッとした顔でお互いを見た。

確かに、それは奇妙な話だ。もしドラゴンが複数で行動しているのなら、今までのドラゴンみたいに街中で暴れ回ればいいだけだ。

だけど、今回の事件ではそういう事はあまり無い。あったとしても、すぐにその姿を消してしまう。


「やり方も解せない。ヘビで一人殺すだけだとか、ヤケに規模が小さく感じる」


「他にも、共通点があるのだとしたら…」


今回の事件は単独犯の様だ。

だけど、流石の探偵でも魔法の正体は分からないみたいだ。

僕も今必死に考えているが、一体どんな魔法なのか検討もつかない。そもそも単独犯だとしても、何故こう姿を見せないのだろうか。


「逆に…そもそも何で最初は警察関係者のみ被害に遭ったんでしょう。警察署まで襲われましたし…」


そういえば、警察署襲撃事件から今回の事件は始まったんだっけ。

それも変な話だ。ドラゴンにとって厄介なのは、警察じゃなくてドラゴンスレイヤーの筈なのに。


「……警察関係者じゃないのかもしれない…」


「え?」

「というと?」


おじさんの一言に、お父さんとランスティンさんがまた首を傾げる。

各いう僕も、おじさんの言ってる事はよく分からない。


「路地で、警察署を襲撃したドラゴンに闇商人が殺されたんだよな? 確か…無断で管区外に出たと」


「えぇ、四人グループで入っていったらしいですよ。一人管区外で死んでしまったらしいですが…」


「じゃあ、残りの二人は?」


「一人は逃亡中で、もう一人は最初の襲撃事件で死亡しました」


そこで、おじさんは小さく「なるほど」と口にした。

どうやら、何か掴んだみたいだ。


「共通点はそのグループだ。事件の被害者は彼等に接触したか、彼等に接触した人物と出会っているんだ」


「じゃあ…最初に警官ばかり死んでいたのは…」

「そのグループと接触していたから…」


おじさんの推理に、お父さんとランスティンさんが納得していく。因みに僕も。


「警察病院の看護師は、襲撃事件で負傷した警官を治療していたんだ。そこで『感染』した」


「感染…まるで病だな…」


確かにお父さんの言う通りだ。

となると「病の魔法」ってことか。


「ミイラ化した男は、警官を殺害した容疑で尋問を受けてました。でも、確かその男はひったくり自体はやったが、殺人は犯していないと容疑を否認していたと」


ランスティンさんのその説明に、考え込んでいたお父さんが反応する。


「ひったくり? まさかその殺された警官って…」


「えぇ、その闇商人のグループを捜査していた警官です」


「となると…その警官の死も怪しいですね…」


多分、闇商人を捕まえた時にその警官も「感染」したのだろう。

そしてそのひったくり犯も、その警官と会った時に「感染」した…と見る方が良さそうだ。

こう考えると、かなり感染力が強い魔法の様だ。何か厄介だな。


「問題は『どうやって死ぬか』。病の魔法という事は分かったが、何故死に方が違うのか説明がつかない」


「ドラゴン、ヘビ、ガラス片、ミイラ化…全く検討もつきませんね…」


う〜ん…。確かにランスティンさんの言う通りだ。ドラゴンとヘビだけなら「生き物」という共通点があるが、ガラス片とミイラ化はどう説明すればいいのだろう。


にしてもヘビか…。

つい最近その話をしてた気が…。


……あ。


そうだ。アレだ。

これが魔法の正体とどう繋がるのかは分からない。だけど、きっと無関係じゃない筈だ。


【フェアリー】


【ん? どうしましたか?】


僕はフェアリーに意識を向けて話しかける。

ちょっと危ない気もするが、この事件は放っておくと大変な事になる。どうしても伝えなければ。


【この人間達に伝えたい事がある。頼んでもいいか?】


【え〜? 人間に〜? 嫌ですよ】


【……怪我治ったら、お前んとこ来てやってもいいぞ?】

【伝えたい事とは?】


チョロい。


僕はフェアリーに伝えたい事を思念で送った。

フェアリーは了解し、今までお父さんの視界だったものが、いきなりお父さん達三人を俯瞰したものとなる。


これは、フェアリーの視界がお父さんの視界から離れ、おじさんの事務所に現れたのだ。


その証拠に、お父さん達は驚いた様に僕を…フェアリーの目玉を見上げている。


「め、目玉…?」


「私達の死の病が発動した…とか…?」


お父さんとランスティンさんは、突然現れた目玉に動揺していた。

まぁ当然だよね。だって目玉だもん。

二人に比べて落ち着いた様に見つめてるおじさんの方が異常なんじゃない?


【バニッシュさんからの伝言です】


「バニッシュ?」


おい、何俺の名前を早速明かしてんだ。いやバレても困るもんじゃないよ? 困らないけどさ。何かアレじゃん? 「え?」ってなるじゃん?

いきなり名前出されても分かんないよ? 黒いドラゴンで良いじゃん?


【昨日、テレビとかいうもので、ヘビ好きの人間の特集を行なっていたとの事です。そこでヘビも大量に扱われたと。ヘビに殺された人間と、何か関係があるのでは?】


「テレビ…?」


フェアリーは気にせず話を進めたが、逆にそれが良かった様だ。

完全にお父さんの意識は、そのテレビのヘビ特集に向いている。


「その看護師も…それを観ていたのかもしれない。見たから…ヘビに殺された?」


おじさんが、一人呟いた。

それを聞き、残りの二人はおじさんを向く。


「確かに、ガラス片に刺された学生の周りには大量のガラス片が落ちていた。見たものが襲ってくる病なのか?」


「もしそうなら、ある程度は筋が通ります。ひったくり犯に刺されたと思われていた警官は、ひったくり犯がナイフを取り出した瞬間に刺されたみたいです。それに、そのひったくり犯を尋問していた警官も、拳銃を構えられた瞬間に撃たれて死亡しました」


「じゃあミイラ化は?」


おじさんの指摘に、二人は再び黙った。

確かに「見たものが襲ってくる」なら、ミイラ化おかしい。

ミイラを見た…ならミイラが襲ってくるはずだし、警察署でしかも尋問中にミイラなんて見るだろうか。


そこで、ランスティンさんが指を鳴らした。


「恐怖だ…! 恐怖が襲ってくる病なんだ!」


「恐怖?」


ランスティンさんの推理に、お父さんが眉をひそめる。


「えぇ、撃たれた警官は撃たれる事に強く恐怖していました。看護師もヘビに対して恐怖心を持っていたら…!」


「テレビにヘビが出たのに反応し恐怖した。それで恐怖の対象であるヘビが現れ、襲われた…」


おじさんがランスティンさんの説明に納得した様に言った。

でも分からない。じゃあミイラ化は?


「そしてミイラ化。アレは尋問中に脅されたんですよ! 『正直に吐かないと死ぬまで出られないぞ』とか!」


「その脅しに恐怖した。『死ぬまで出られない』って事は『そこで死ぬまで歳を取り続ける』という事。だから急激に老化して、果てにはミイラになったのか」


「ガラス片は、ガラス片が刺さる想像でもしたか…ガラス恐怖症…いや、バイクヘルメットを持っていた事からするとガラス自体は平気か。となると…先端恐怖症か」


ガラス恐怖症なんてあるんだ。初めて知ったよお父さん。


「落ちたガラス片の先端に恐怖でもしたんでしょうね。アナフィラキシーショック死も、ハチが飛んでるのを見て恐怖した…ってところでしょうか」


「恐怖が襲ってくる…。それが病の正体か」


なるほど。「恐怖の病を生み出す魔法」ってところか。

何だか厄介な魔法だなぁ。しかもその肝心の魔法を使うドラゴンの居場所は不明と来やがる。


「……ジオ。アルゴラのアップデートはいつ始まる?」


「え? えっと…2時間後」


何故か突然アルゴラの事について訊いてきたおじさんは、困った様に顎に手を置く。

お父さんもどういう事なのか分からないらしく、首を傾げておじさんに問い始める。


「どうしたんだ? アップデートに何か?」


「あぁ…アップデート開始から終わりまで、1時間はアルゴラの機能は著しく低下する。その間、ドラゴンスレイヤーの警備が強化されるのは分かるが…」


「……なるほど。その1時間、人々はドラゴンが来ないかより不安になる。ドラゴンスレイヤーさえも」


お父さんは途中でおじさんの言いたい事が分かったらしく、そう言って納得した。


「そうなるとかなりヤバいですね…。不安は恐怖に繋がりますし、一斉に人々が恐怖すると…」


恐怖がそのまま、大群で人間を襲う訳か…。

こういう魔法は、その魔法を使える者の意識が無くなるか、その者に直接解いてもらう様に頼むしかない。

まぁ明らかに前者の方法を取らせてもらうが、肝心のそのドラゴンが分からなければ意味がない。


「……そういえばランスティンさん」


おじさんが何かに気付いた様だ。

ランスティンさんは「はい」と声をあげておじさんを見る。


「闇商人達は…四人グループと言ってましたよね? そして一人は管区外で死んで、二人もこの事件で死亡したと」


「はい。そうですが……あ!」


そういう事か。

僕もおじさんの言いたい事を理解し、納得する。


「えぇ、彼らが最初にこの病にかかった。そして、病の魔法を使うドラゴンは、彼らを襲った赤紫色のドラゴン」


「そうか…。赤紫色のドラゴンは、わざとグループの一人を殺して、他の三人は逃したのか。自身に恐怖させ、病に感染させた状態で」


「だから、彼らの恐怖は赤紫色のドラゴンの形をしていたんですね…」


これで、まずは魔法を使うドラゴンは分かった。

でも、問題は場所だ。場所が分からなければ話にならない。

それに、さっきの話だとその赤紫色のドラゴンって管区外にいるんじゃないか?


「後は場所か…。その生き残った闇商人に訊けば、出会った場所が分かるんだが…」


そこから移動してたら終わりだけどな。


僕は、おじさんの推理に冷たくそう指摘する。頭の中で。

というか、お父さん達フェアリーいるの覚えてる?推理に夢中で忘れてない? ちょっとフェアリーが可哀想になってきたよ?


「それなら、分かるかもしれない」


突然、お父さんがそんな事を言い出した。

おじさんとランスティンさんは驚いた様にお父さんを見る。


「ガラス片に刺された学生…彼はバイクを取り上げられたらしい。もしかすると…」


「生き残った闇商人か…!」


「その学生は、その時に感染したんですね…」


「あぁ…そして押し倒されて、コンビニで買った瓶が割れた。そこでガラス片の先端を見て…恐怖を抱いた」


感染してから発症までが異常に速いな。それほど危険な魔法ってことか。

これは確かに、アルゴラのアップデート開始までに片付けるしかなさそうだ。


「今すぐ、その学生のバイクの居場所を突き止めてきます!」


「じゃあ俺も、管区外への立ち入り許可を貰ってくる。リベッジ、ここで待っててくれ。あと…この目玉はどうするかは、お前が決めてくれ」


「分かった」


ランスティンさんとお父さんはそう言って、事務所から飛び出した。

今事務所にいるのは、おじさんとフェアリーだけだ。


しばらく、静寂が訪れる。


フェアリーも飽きた様で、僕に話しかけようとしたが、意外にもおじさんがフェアリーに声をかけてきた。


「訊きたい事がある」


【何ですか? 人間に話すなんて気持ち悪いですけど】


「バニッシュというのは…人々を助ける黒いドラゴンの事か?」


【……えぇ、そうですよ。仕方なく…本当に仕方なく心を宇宙以上に広くして助けてやってるんです】


だからそこまで言ったかな?

いやまぁ、仕方なく助けてるってのは間違ってはないんだけどさ。


「そうか…。なら、彼に伝えてくれ。キミは怪我をしている筈だ。だから、今回の件は私達に任せてくれ…と」


ん? 僕が怪我している事を知っている?


……まさか…


【フェアリー、それは無理だって伝えてくれ】


【分かりました】


僕は少し不安になりながらも、フェアリーにそう伝える。


【バニッシュさんが、それは無理だと】


「なるほど…意思は硬そうだね…。流石、ジオの息子だ」


僕はそれを聴いて、ドキッとした。

予想はしていたけれど、やっぱりバレてたのか。


「聴いてるんだろ? アピアス君。キミが何故ドラゴンになっているのかは分からないが、私はこの真実を誰にも伝える気はない。キミの家族は、私にとっても大事だからね。でも、これだけは知ってほしい」


おじさんが、フェアリーに近づく。

それに伴って、僕の視界におじさんが近づいた。


「キミも、私にとって大事な存在だ。だから、無茶はしないで欲しい」


………おじさんの目は本気だった。


だけど、僕だってこの事態に何もしない訳にはいかない。もう、フェアリーだって巻き込んでいるんだ。


【……バニッシュさんが、やっぱり無理だと】


「……何を言っても…無理か…」


【でも、バニッシュさんも怪我をしています。万全ではありません。だから、本当に危険な時に来ると】


「じゃあ…そうならない様に頑張らないとね」


おじさんはそう言って微笑んだ。

僕も、本当は戦いたくない。多分この怪我では、マトモに戦えないだろうから。

でも、やるしかないんだ。


僕は改めて決心してから、フェアリーに指示を送る。


【……人間。しばらくは、貴方に入ります。いいですか?】


「私に? どういう事?」


【貴方とバニッシュさんの視覚と聴覚を共有させます。これで、バニッシュさんは貴方の状況を把握できます】


「なるほど。じゃあキミが出てくる前までは、ジオにでも入っていたのか。いいよ。別に体に支障は無いんだろ?」


【えぇ、残念ながら】


フェアリーは最後にボヤきながらおじさんの目と耳の中に入っていった。


誰かの目を通してから入るなら、少しの違和感だけで済むのだが、こうして分離したフェアリー自身の視覚から誰かの感覚に入ると、まるで目玉がその人物の体に入っている様な場面が視認出来てしまうので、フェアリーが入った事がバレてしまう。

だから僕は最初、フェアリーをお父さんに誘導させる際に僕を通したんだけど、今回は事態を知ってるおじさんだけだから何ら問題もない。


おじさんは目と耳に一瞬の違和感を感じるが、それがフェアリーが入ったから起きる事だと知ると別に気にしない様になった。


僕の視界に広がるのは、おじさんの視界。


「まさか…アピアス君がこんな命懸けの戦いをする事になるなんてね」


おじさんが、僕に聞こえてると分かってそう言った。


本当、僕も思っていませんでした。


【でも戦うバニッシュさん、とってもカッコいいですよ】


ごめんちょっと黙って

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