第29話「DEAD MAN」
長くなりましたね。
投稿までの時間も文量も。
戒めとして名前を「かり酢」から「ナメゐクジ」に変えました。戒めになってるのかは知らない
ディープロードの中にある積荷がたんまり溜まった古い巨大倉庫で、俺はおじさんと共にダンを睨む。
【てめぇ…何で…】
「何でキミがアピアスか知ってるかって? キミ自身がここに入る際に証明したじゃないか」
ダンはそう言って、俺達が入ってきた倉庫の入り口を指差した。
なるほど。確かにこの倉庫に入る時、通路が狭いからアピアスの姿で移動していた。
そしてこの広場に出る直前に、ソーサラーとの戦いを予測して俺に切り替えた訳だが、それをじっくりと見られてたか。
まぁ、よくよく考えなくてもそりゃバレるわな。
「しかし驚いたよ。アピアスとバニッシュは何らかの関係性があるとは睨んでいたが、まさか同一人物だとはね」
【だろ? 俺自身もびっくりだよ。だが、そんな事より…】
俺はダンにテレパシーを送りながら、奴を指差す。
【てめぇ…何で生きている】
そう、奴はさっきおじさんに撃たれた筈だ。
しかもそれより前にも、スパイクギフトに殺されている筈。
それなのに、奴は今平然とここに立っていやがる。
「答えは簡単さ、僕がソーサラーだから。それ以外にトリックがあると思うかい?」
【俺はそのトリックの内容を訊いてんだ】
「じゃあキミも教えてくれよ。人間とドラゴンが一緒になっているトリックを」
【なんだと?】
「だから言っただろう? その為にここに残ってたんだ。キミは実に…興味深いからね!」
突然、ダンは右手に持っていた対ドラゴン用のレーザー銃でレーザーを放ってきた。
俺はそれを体を逸らして避け、ダンの目の前にテレポートして奴を両手で掴む。
その瞬間、奴の隣にいたクレイグが俺の方へ顔を向けた。
しかし、その隙を突いておじさんがクレイグにレーザー銃を撃つ。
ガキンッ! という音が聞こえ、レーザーが跳ね返された。
どうやら、おじさんが銃を向けた音でクレイグは狙われている事に気付き、レーザーを跳ね返す壁の音をあっという間に描いたらしい。
壁の音ってあんなすぐに描けるもんなのか? 音なんて見た事無いから分かんねぇ…。
ま、まぁいい。クレイグの相手はおじさんに任せて、俺はダンに集中だ。
俺は両手で掴み上げたダンを睨む。
【お前の目的は何だ!?】
「決まっている。ソーサラーが住み良い世界にする為さ」
【だからって、犠牲を出して良い訳が無い!】
「じゃあソーサラーの犠牲は? ソーサラーに生きる資格は無いのかい?」
【違う! もっと別の方法がある筈だ! もっと…平和的な!】
「平和的? ソーサラーが先に襲われたというのに?」
【それは…】
瞬間、パチンっという音が聞こえた。
その音が手榴弾のピンを外した音だと気付いた時には、それはダン自身を巻き込んで爆発した。
もちろん、ダンを掴んでいた俺もただで済む筈もなく、俺は爆風によって吹き飛ばされる。
「アピアス君!」
おじさんが俺の…いや、僕の名を呼ぶ。
正体がバレたんで、呼び方を分ける必要が無くなったんだろう。
しかしダンの奴…あんな至近距離で爆発しやがった。
幸い、ドラゴンの体では爆発でバラバラになる事は無かったらしいが、思いっきりダンの体を掴んでた手は手榴弾のカケラがぐさぐさと刺さり、さらには真っ黒焦げで血が出てやがる。
いって…。少し動かしただけでも痛さが半端じゃねぇ…。こりゃあ…圧縮弾も打てやしねぇ…。
「もう戦争は始まってるんだよ」
俺が苦い顔をしていると、一つの声が聞こえた。
さっきまでの状況から考えると、聞こえる筈も無い声だ。
だが、そういう有り得ない現象をさっきも見たので驚きはしない。
その声の主を確認すると、やはりそれはダンだった。
「いいかい? 自由を手に入れるには、もう勝つしかないのさ。負ければ我々は、永遠に差別され続ける。それとも何か? キミは、ソーサラーが差別され断絶される世界を望んでいるのかい?」
【んな訳…ねぇだろ…!】
「なら邪魔はしない事だ」
クソッ! 確かにダンの言う事も一理ある。
事情は知らんが、政府から先に仕掛けてきたのなら、ダン達の行動も分からなくはねぇ。
生きる為だ。生きる為に、奴等は必死なんだ。
……だが…
【邪魔すんな…だと…?】
俺は体に鞭打って立ち上がる。
【悪りぃがそれはお断りだ!】
「なんだと?」
ダンが顔を顰めて、俺を睨む。
【約束したんだよ…。一度だけ手伝ってやるって!】
そうだ。俺は決めたのだ。
一度だけ、おじさんを手伝うと。
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「復讐を手伝う?」
「はい。でも、一度だけです」
僕の言葉に、おじさんは懐疑な顔をする。
無理もない。今までそれを否定してたのに、いきなり手伝う言い始めたんだ。自分で言うのも何だけど、ブレている。
「僕は、おじさんが苦しむのを見てられなくてああ言いました。でも、世の中には復讐を遂げる事でしか癒せない傷もあるかもしれない。それに何より…」
僕は、クリントに聞かれた事を思い出す。
『食われた時、どう思った?』
そうだ。僕は、バニッシュに食べられた時思ったんだ。
僕は拳をギュッと握って口を開ける。
「後悔させたくない。僕は、おじさんに後悔させたくないんです」
「後悔?」
「僕は、バニッシュに…俺に食われた時、正直に生きてれば良かったって思ったんです。それをさっき思い出して…だから」
僕はもう一度それで良いのかと自分に問いかける。
でも、もう決めたんだ。
「決めてください。本当におじさんは、復讐をしたいのか」
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答えは決まってた。
俺はネオプロローグを壊滅させる。
ジオが死んだのは、俺の所為だ。
俺なんかより、生きる価値がある筈なのに。あの時、俺がアルゴラに向かうべきだったのに。
後悔させたくない。
そう、アピアス君に言われて、まず思ったのが彼等ネオプロローグだった。
彼等を倒さないと、俺は一生後悔し続ける。
俺は、死んでも俺自身を呪い続ける。
だから、せめて彼等を倒す。
少しでも、この痛みを和らげる為に。
少しでも、後悔しない為に。
少しでも、あいつらから許される為に。
俺は、ダンと戦っている最中のアピアス君を一瞥する。
両手がまともに使える状態じゃない。あれじゃあ、圧縮弾は放てないだろう。
まぁ、ドラゴンの身体能力や炎が使える分、まだ戦えるとは思うけど…ダンの魔法、一体何なんだ?
さっきは確実に心臓を撃った。それに、彼は自爆までもした。
それなのに、彼は平然と生きている。
そもそももっと振り返れば、スパイクギフトの暗殺を免れたのも怪しい。
やはりあれは、本当に一度死んだんじゃないか?
まさか彼の魔法は……いや、今はそれより目の前の敵だ。
幸い、こっちから動かない限り攻撃をして来ない。
確か目が見えない代わりに音が見えるらしいので、音が聞こえないと相手の位置が分からないのか?
……いや、多分違うな。
俺がレーザー銃を向ける僅かな音でも反応した。
恐らく、こっちから動くのを待っているんだろう。
「確か…リベッジ・マンハッタンと言いましたね」
流石に痺れを切らしたのか、クレイグの方から声をかけてきた。
顔はばっちり俺の方に向いている。やっぱり、居場所は分かっているのか。
「何だ?」
「貴方はただの人間です。さっさと帰った方が、貴方の身の為だと思いますが」
「ほう…優しいなあんた。だが、そうはいかない」
「……ジオ・ファーナーを殺された復讐ですか?」
俺は空かさずレーザー銃を彼に撃つ。
だが彼は案の定、筆で何かを描いてそのレーザーを防いだ。
そしてその直後にまた何かを描き、それはレーザーとなって俺に放たれる。
「くっ! うおっ!」
俺はそれを避け、空かさず放たれたもう一つのレーザーもギリギリのところで避けた。
「そのすぐ手に出るところ、治した方が良いですよ?」
クレイグはそう言い、俺にまたレーザーを放つ。
二つ目の時に既にバランスを崩していた俺は、何とか体を捻るもそれは俺の左腕を掠った。
「ぐわぁ!」
俺は反射的に傷口を抑えるも、すぐにそれを外して彼に銃を向ける。
すると、彼の筆を持つ手も止まった。
恐らく、レーザーが来ることに警戒したのだろう。
「へぇ…中々良い動きをしてますね」
クレイグは、俺を見て笑ってる。
完全に、俺は彼に馬鹿にされていた。
「でも、何時まで持ちますかね」
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ダン・ノーマック。
自分でネオプロローグの副リーダーと言っているが、実質のリーダーはこいつみてぇなもんだ。
リーダーらしいあのクリスタナとかいう女。あいつはまともに姿も見せないし、見たところ支持は大体こいつが出している。
何でそんなダンを差し置いて、あの女がリーダーの立ち位置にいるのかは知らねぇが、ダンの損失はネオプロローグの大きな損失である事は変わりはねぇ。
何とかして、ここでダンを止める!
「グオォォォォォォォォ!!!!」
俺は、自分自身に喝を入れる為に咆哮を上げる。
そうだ。手が使えなくても勝機はある。
俺には、このドラゴンの体がある!
ダンの魔法。
スパイクギフトの暗殺を免れた魔法。
レーザーの一撃に耐えた魔法。
至近距離の爆発から無傷で現れた魔法。
間違いない。奴の魔法は…
【ダン・ノーマック。てめぇの魔法は…「不死」だな?】
「……へぇ」
俺のテレパシーを聴き、ダンは不気味な笑みを浮かべる。
「だとしたら…どうする?」
【決まってる!】
俺は奴の目の前にテレポートし、尻尾を奴の体に叩きつけた。
もちろん、少し威力を弱めて。
「ガハッ!」
ダンは吐血しながら床を転がる。
だが、まだ死んでない筈だ。微調整は難しいが、少なくとも死なない程度にはした筈。
「ぐっ…お、お前…!」
やはり、死んでいなかった様だ。
ダンは震えながらも立ち上がる。だが、その一瞬立つ事すらも今の彼には難しい様で、すぐに倒れる。
【不死なら、殺さなければいい! 死ぬ事が魔法発動のスイッチなら、尚更な!】
そう、魔法の内容が「不死」なら殺さなければ問題無い。多分、死なない程度のダメージなら魔法は発動しない筈だ。
まぁ、これは俺の勝手な憶測なんだが…。
「な、なるほどね…。確かに…キミは…正しい…。『不死』なら…殺さなければ魔法は発動しない…かもしれないね…。だ、だけどね…」
その瞬間、ダンの姿が消えた。
……………
………
え?
消えた?
それに…
何で……
何で俺…
俺は、脇腹を襲った猛烈な痛みに違和感を覚え、それを見る。
俺の脇腹から、血が流れていた。
血…?
「キミは、間違ってもいる」
理解ができなかった。
俺の脇腹を撃ったのは、無傷で俺の側に立っているダン・ノーマックだったから。
「僕の魔法は『不死』じゃない」
「不死」じゃない…?
じゃあ何で無傷なんだ…?
まさか、回復の魔法…?
いや、だとしても何で…
「残念だったね」
そして奴は、俺に向かって何度もレーザーを撃ってきた。
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やっぱり、流石はドラゴン用の銃と言うべきか。
バニッシュも全く動きはしない。いや、アピアス君と呼ぶべきなのかな?
う〜ん…よく分からないな。殺す前に訊いておくべきだった。
僕、ダンはリベッジの方を向く。
バニッシュの死が信じられないのか、呆然としていた。
そしてしばらくして、僕に怒りの目を向けてレーザーを撃つ。
そのレーザーは見事に僕の眉間に当たり、僕は「死んだ」。
………なるほど。
「やはり、キミの腕は一流だね」
僕はリベッジの銃の腕をシンプルに褒め、クレイグの方へ向かう。
生き返った僕を見ても、リベッジは特に驚きもしない。
まぁ、もう見慣れたんだろうな。当然か。
「お前の魔法は…一体何なんだ!」
「う〜ん…まぁ言っちゃっても良いんだけどさ。面倒だから端折るよ」
「なんだと…!」
そんなに知りたいかなぁ僕の魔法。そんな大したものじゃないんだけど。
おっと…彼、また銃に入れる力が強くなってる。
「クレイグ」
僕はクレイグに命令し、彼がまた撃つ前にクレイグの放つレーザーで銃を撃ち落とした。
「くっ!」
「悪く思わないでくれよ? 一々死んでたらキリが無い」
「ダンさん」
クレイグが、僕に声をかけてきた。
要望は分かってる。
「……本当に、良いのかい?」
「えぇ、私の命もあと僅かですから」
「そうか…悲しいね…」
僕はそう言い、リベッジに注意を向けながら手榴弾をクレイグに渡した。
「何を…するつもりだ」
「この倉庫に置いてある積荷、中身は何だと思う?」
「なに…?」
リベッジはしばらく考えた後、目を大きく見開く。
どうやら、積荷の中身を察したみたいだ。
「そうだ。バニッシュはもう動かない。キミに、逃げる手段は無い」
僕のその言葉が合図だった。
クレイグは、手榴弾のピンを外して積荷の一つに投げ込む。
そう、爆発物をぎゅうぎゅうに詰めたその積荷に。
「クレイグ・ホルシュタイン。キミの事は、絶対に忘れないよ」
僕は彼の最期の勇姿をこの瞳に焼き付ける。
そしてその直後、倉庫内は大爆発を起こした。
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太陽が沈み始める。
あの日から、二日が過ぎた。
僕は、また病室で入院生活を送っている。
身体中、包帯塗れで動くこともままならない。やっぱり、流石に無茶し過ぎたみたいだ。
「全く…お前は何回入院すれば気が済むんだよ」
にしても、おじさん大丈夫かな…。
「おい」
あれから一向に連絡が無いけど…。
「おいアピアス!」
「ふぇっ!? え!? な、なに!?」
僕、アピアスは大きな声をかけられ、驚いた様に声の方角を見る。
そこには、少し不機嫌そうなクリントと不安そうなリーシャが座っていた。
「クリントに…リーシャ。来てたんだ」
「来てたんだ…じゃねぇよ! 全く、心配して見舞いに来たらこれだよ。リーシャ、こんな奴心配する必要ねぇから」
結構辛辣な言葉を浴びせられてしまった。
いや、こっちも考え事してたのが悪いんだけど…。
「そんな事言わないでよクリント君。それより、本当に大丈夫? ソーサラーに襲われたって話だけど…」
「う、うん、平気だよ。へへ…」
あぁ…やっぱりリーシャは優しいなぁ。
今さっきも「何鼻の下伸ばしてんだ」って小言で言ったクリントとは大違いだ。
僕は…いや俺は確かにあの時、ダンに何発も至近距離でレーザーを撃たれた。
そこで俺は、以前に圧縮弾の応用でバリアーを張った様に、自分自身に空間の膜を逆側に張った。そう、まるでバリアーの様に。
そしてその膜に当たったレーザーを、瞬時に反対側にテレポートさせてやられた振りをしたのだ。
と言っても、攻撃が当たっている事は事実なのでダメージはかなりあった。
もし、ダンがあれ以上撃ってきたら完全に意識を失っていたか、最悪死んでいただろう。
やられた振りをするにはうってつけの手段だけど、痛いものは痛いし、下手すりゃ死ぬというかなりリスキーなものだ。多分もう使わないだろう。というか、使いたくない。
まぁそんなこんなでレーザーに耐え、起きた爆発に紛れておじさんを回収して逃げてきたという訳だ。
しかし、何故ダン・ノーマックはクレイグを犠牲にしてまで爆発を起こしたのだろう。
クレイグはかなり優秀な人材の筈だ。
そういえば、彼気になる事言ってたな…。
『私の命もあと僅かですから』
命があと僅か…。何か病気を持っていたのか?
だから、あんな使い捨ての様な扱いを?
まぁ今は考えても仕方がない。
それよりも、おじさんの事が気になる。
僕を巻き込んでかなり落ち込んでたみたいだし、お母さんに訊くところ事務所にも姿を見せていないらしい。
一体、おじさんは今、何処で、何をしているんだろう。
「おいアピアス訊いてるか?」
「ふえぇ!? な、何が!?」
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月が不気味に世界を照らしていた。
そんな中、一人の男が一心不乱に何かから逃げていた。
しかしその必死さも虚しく、その男の右足をレーザーが貫く。
「ぐあっ!」
男は倒れ、ゆっくりと追ってくる影の方へ腰を抜かしたまま振り返る。
「ま、待ってくれ! 金は返す! 返すから殺さないで!」
そう言い、男は小さなデータスティックを取り出した。
どうやら、そこに貨幣データが入っている様だ。
そして暗闇から、彼を追っていた黒いジャケットにガスマスクを被った男が現れる。
「無理だ。お前を今逃したら、きっと俺は後悔する」
ガスマスクの男は、くぐもった声でそう言って彼の頭に銃を向ける。
「も、もうしない! しないから!!!」
「どうだかな」
ガスマスクは無情にも引き金を引いた。
目の前に転がる死体をしばらく凝視して、彼は立ち去った。
そして彼は、途中でガスマスクを脱ぐ。
そのマスクの下に隠された素顔は、あのリベッジ・マンハッタンのものだった。
バニッシュの魔法は具体的には「触れた物質または自分自身をテレポートを可能にする空間の膜に閉じ込める」というもの何ですが、それっぽいこと全然説明してませんでしたね。
いつか序盤の方編集してそう書いちゃおう。
いや、別に途中からの設定とかじゃないですからね!? 本当です! 信じてください!




