戦闘【殺し屋の技VS錬金術】
バトル描写ってむじゅかしぃ
睨み合う中、ナイフの構えを解いたテナは脱力した状態で普通に立つ。
脱力した状態で距離を詰めようと一歩ずつ、進むとテナが二人、三人と徐々に増えていく。
「……これは、驚きました。忍者の方でしたか」
「冗談言えるってことは、驚いてないんじゃないですか?」
増加が一六人で止み、一六方向から重なって声が発せられる。
「おい、ジーヌ。ありゃなんだよ? 影分身か?」
「違うよ、あれは殺し屋としての技だろうね。
目の錯覚かな? 脱力した身体を歩みと同時に揺らして、増えてるように見せてるだけだと思うよ。一度、増えたって脳が認識しちゃうと中々、直らないんだよその認識」
「名前とかあるのかしら?」
解説サンキューな方たちの声が聞こえたのか、テナは攻め込まず、顔を赤らめてつぶやく。
「こ、この技は……メイド流暗殺術『一六名』です! 一六人の私は一度作ってしまえば、相手が触れて『いない』と自覚するまで消えません!」
「咄嗟に技名と説明まで、おまけにメイドを混ぜてくるとは……+一〇点です」
「(こまめに採点のメモとか……ふざけすぎですよ!)
手帳を取り出して、ペンを走らせるユミ。両手が塞がってできた隙を期に一六人のテナが各々、ナイフを振りかぶり、ユミに襲い掛かる。
「学習しませんね」
その一言と共に、ユミは書いていたページを破り取り、片手で地面に押し当てた。
押し当てた紙からユミを中心に地面が変わっていく。突き上げる槍に変わった地面が波紋のように広がり、囲っていたテナたちを攻撃する。
「ええぇ⁉」
突然、下から刺されていく分身に本体のテナは盛大な驚きを声にして、後方へジャンプして回避する。
「錬金術……」
「使いやがった……」
「ユミさん、ウソついたのかしら……」
外野三人からの軽蔑の視線を受けたユミは頭上のテナを見上げる。
「私は、『使わない』とは一言も言っていません。『素手で対応する』と言ったまでです」
膝を曲げて着地すると、テナは苛立ちを感じながらも笑顔でいる。
「でも、採点のメモしてた紙で錬成なんてできるもんなんですか?」
「戦闘中にそんなふざけたこと、貴女以外にできませんよ。
ですが、今回はちゃんと錬成陣を書いていました。囲まれた時点で、かすりもせず、素手のみで捌くの少し面倒ですからね」
イジでも、無理とは言わないメイド長さまに怒りを堪えられなくなった新米メイド。
「ぜっっっったいに! 一発当ててやりますよ! なんなら、殺っちまいますよ!」
「出来もしないことを口走って、後で後悔しても私は知りませんよ?」
ナイフを逆手に持ち、噛み締めるテナに対して、ポケットから錬成陣の書かれた四方五センチの紙を右手の人差し指と中指で挟んで斜めに構えるユミは不敵な表情だ。
「また睨み合いか……」
「テナさんの方は隙が出ないと攻めないし、ユミさんはワザと隙を作ってカウンターを当てる感じかな。ま、ユミさんがどんな風に隙を作っても、テナさんが踊らされるだろうけどねー」
「どういうこと?」
「あ……えっと、つまり、ユミが隙を作ったらテナが攻撃するんだが、このテナの攻撃はユミの思った通りの攻撃ってわけだ(やべぇ、上目遣いで訊いてくるとか……萌える……)」
「じゃあ、どこを攻撃されるか、ユミさんにはわかるの?」
「というより、どこかを攻撃するよう誘導する、ってことだよ」
「……? ユミさんは自分からは攻めないの?」
「ま、小手調べってとこだろうしな(ピアリの思案顔……なんか、撫でたくなるな)」
「テナさんが『どうするか』が重要だからね。それに、ユミさんから攻めちゃったら、すぐ終わっちゃうだろうからね。適当に隙を作るだけじゃない?」
「……たりぃな」
「ビアリっ⁉」
「あれ? ネクタイいつ取ったの……全然気が付かなかったよ」
「おい、赤いの。おれは喉が渇いた」
「俺を顎で使うのはやめ――――」
「ピアリに何言ってもいいんだな?」
「……ちっ。紅茶でいいか?」
「ブラックコーヒー。豆から作れ」
「……」
「……あのサジくんが何も言わず、作りに行った……。顔がキレる寸前だったけど……」
外野が一人減ったところで、それまで睨み合っていた二人。
「……はぁ。ずっとそうして待っているつもりですか?」
構えを解いたユミは目を閉じて、ため息をつく。
呆れたメイドが余裕を失い、命の危機に晒されたのはここから、一瞬の出来事だった。
次回は四月一〇日の午前一時です。




