PALUS 04
「……どうして」
ウサギは青白い唇を、震えるように動かすしていた。
「……どうして」
彼女の体はまるで死体のようにぐったりとし、回路の根の上に横たわっていた。
「……どうしてなの」
ゆっくりと手のひらを自分の顔の前にかざし、死体に触れた指先を眺める。
「……信じてたのに」
回路の根が、牛の死体が、彼女の体を包むように取り込んでいく。
「私は……信じてたのに」
次の瞬間、後方の壁が轟音と共に崩れ去り、コツコツが部屋に転がり込んで来た。
「ウサギッ!」
コツコツはボロボロだった。彼のスーツは複雑なノイズで切り裂かれ、顔の半分は別の情報に変質してしまっている。
「……違った……違った」
ウサギは熱に浮かされたように、焦点の定まらない目で言葉を落としている。
「おいッ! ウサギ! 返事をしろ! おいッ!」
ウサギの四肢は木々の消し炭の様に、脆く崩れ落ちてしまっている。
コツコツはそんな崩壊寸前の彼女の体をそっと抱き上げ、肩に担ぐ。
「ククリセ! ウサギを確保した」
「オーケー、横幅がかなり広がってるから別の脱出経路で」
「了解!」
コツコツは銃を構え、壁を撃ち抜く。
すると撃ち抜かれた壁の空洞から虹色に輝く一角獣が飛び出し、そのままコツコツへ突進し、彼を串刺しにした。
コツコツの悲鳴がこだます
ウサギの体が投げ出される
「兄さん……どうして、そんな……」
一角獣が嘶き、コツコツの体を持ち上げる
コツコツは銃を一角獣の首に押し当て打ち込む
一角獣の首が吹き飛び、コツコツも地に落ちる
「……違った、事故じゃなかった……自殺だった」
コツコツが吠えながら立ち上がる
穴の向こうには更に三匹の一角獣がいた、それぞれの背中には小柄の老人がまたがり、こちらに向かって微笑んでいる
「自殺だった……どうして……好きだったのに」
コツコツは銃を一角獣へ向ける
引き金が絞られる
だが弾丸は放たれない
「どうして……私を置いて……私は……兄さんの事が……大好きだったのに……」
コツコツは弾切れした銃を投げ捨てる
首輪からナイフを二つ外し、それを両手に構えた
老人達の笑い声
一角獣達が駆け出す
このカス共がぁッ!! ここで俺が死ぬと思ってんのかッッ!!!!
「……どうして……あんなに……あんなに愛していたのに……あんなに愛し合ったのに」