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第七話・アールドワースの魔法

キャラ紹介一旦消しました…いやまさかネタバレ含んでたとは、、アホか。明日うpり直しますスミマセン。

 地獄の悪鬼共さえその名を聞けば縮み上がる、王国最強の魔法騎士団、白銀の薔薇。

 大量のゴブリンが発生し作物を荒らされ、念話の魔法で王都へと助勢を求めた所、丁度手空きであった彼女たちに声がかかった。

 たまには田舎でのんびりゴブリン退治とか涙が出るほど懐かしいな~と、はるばる遠征してきたわけである。

 ゴブリン達からすれば、交通事故のような天災だが。


 結論から言うと、白銀の薔薇魔法騎士団はモテない。実も蓋もない言い方だが。

 メンバーは補助を合わせて35名、妖魔共との大戦ともなれば、その20倍の一般兵を率いることになるだろう。内、現在ナーロ村へと派遣されたのは25名。全員処女である。この鉄の掟を破った者は、アイアンメイデンの刑に処される。掃除のロッカールームにぶち込まれて、内側から開かなくなるまでボコボコのベコベコに殴られ、最後はプールに沈められるというリアルバウトでハイスクールな刑だ。

 この王国騎士団でも有名なリンチの悪名のためか、この私刑があまりに有名だからか、白銀の薔薇には喪女しか集まらない。


 うむ私の代で廃止しようと、エミリーは固く心に誓った。

 だいたい何の意味があるんだそのリンチは? 膜があるとかないとか、それがなんだというのだ? 童貞に人権はないのか!?!? ……あ間違えた、処女に人権はないのか!!!?

 そもそもだ、実力主義の最強騎士団とはいえ、一人二人くらい合コンをセッティングできる程度の美女が居たっていいだろう。それだけで士気の上がり具合と明日へのやる気が段違いだ。


 とか考えていたのはいつだったか?

 エミリーはエールの入った杯を傾け中身を飲み干し、「はぁ」と盛大にため息を付いた。

 宿屋は一階が酒場になっており、現在10名ほどの同僚が、やはり物思いにふけるように机に突っ伏している。


「……朝酒とは、いいご身分ですね、姉上」


 二階からエイミィが下りてきた。

 甲冑こそ纏っていないが、その小柄な体躯にはギャンベゾン(プレートメイルの下に着る厚手の服みたいなやつ)を着こみ、色気も何もあったもんじゃない。真面目というか堅物というか。

 エミリーに至っては、暑いので薄手のシャツに七分丈のパンツという軽装だ。

 シャツの止めボタンを千切らんばかりに、豊満な乳房が前面へと盛り上がっていた。

 妹のエイミィは童顔同様、スレンダーな体格をしている。……畜生まだ貧乳なのが恨めしぃ!


 ……正直もう、合コンなどどうでもいい。昨日まであれほど夢中だった執事服のカークさん(萌々)が、もう遠い昔の思い出のようだ。イケメンで執事服とかもう誘ってんでしょそうでしょ?

 エミリーは周囲のテーブルの騎士たち同様、その特徴のなさすぎる不細工な顔を、机の上で突っ伏した。


「……しゃっきりして下さい、帰るまでが遠征任務ですよ?」

「あ~もーうっさいな~~お父さんかよ先生かよ~!」


 エミリーは駄々っ子のようにジタバタする。


「……気持ち悪いんでやめて下さい、全く萌えません」

「気持ち悪いって言うな~~!!!」

 トラウマスイッチ入るぞ!


 エイミィも席に付き、女将に絞ったオレンジジュースを注文した。飲むと一番性質が悪いクセに、本当真面目な奴だ。


「…………タクマロ君に、会いに行こうかな~……とか」

「……やめた方がいいです、辛くなるだけですよ」

「え~結構脈ありだと思うけどな~私!? 私の手も普通に握り返してくれたし、私の腰に手を回して……あ、思い出しただけで涎が……」

「……そのポジティブさは見習いたいくらいですけどね……」


 女将がジュースを運んできた、エミリーはエールのお代わりを頼む。

 因みにボーイはいない。初日はいたのに、白銀の薔薇は淑女の集まりなのに。

 ああ……タクマロ君、滅茶苦茶にレイプしたい……。


「ああ、タクマロ君、滅茶苦茶にレイプしたぃ……」

「……思考駄々漏れだよバカ姉」


 アールドワースでは騎乗位が“正常位”だ。

 勿論正常位もバックもあるけど、四十八手あるけど。


「……タクマロ君、王都に連れて帰れないかな~?」

「昨日話したでしょう? 近くの村々に彼の話を聞きに行くって、村の女性全員で一致団結してますし、彼の記憶が戻る糸口は、やはりこの近くにあるわけですから……」

「……でもさ~……」

「……」


 多分きっと……二度とこんな出会いはない。

 あんな美形の少年を助けられて、あんなに感謝されてエミリはあの王子様と騎馬で相乗りしたのだ。後で死ぬほど騎士団の皆に恨み言を言われたのだ。

 もう一生分の運を使い果たすくらいの幸運だったのはわかるけど、それでも――女はつくづく強欲だ。


「はぁ~~……タクマロくぅ~ん……き、キスくらい、は……」

「やめて下さい、折角の綺麗な思い出にクソミソ投げつけないで下さい」

「……おいこら愚妹」

「……」


 涼しいジト目で明後日の方を向き、杯のジュースを飲む。

 いつまでたっても、ノリが女子校のままだ。だって男子との出会いがないんですもの。どうやって女を磨けといいうのか? エロゲか?(エロゲームブックの略です)

 さらにエミリーが妹に言い寄ろうとし、そこで陰鬱な女子会酒場に大天使が召喚された。

 トラップカード発動。エイミィがジュースを盛大に吐き、エミリーの顔面にもろにかかった。



「たたたたたたたたた、た、タママロ殿!?」


 エイミィの間違えに、流石の彼も少し顔を歪めた。ああ、その顔も素敵です私の王子様!

 ウソだ、夢じゃないだろうか? もう二度と会えないと思っていたのに……!(処女は被害妄想と思い込みが激しい)

 白銀の薔薇一団、一斉に姿勢を正し足をそろえて斜めに、こう!(OL座り?)見よこの統制され尽くした女子力の高さ! 圧倒的ではないか!?

 隊長の私がジュース顔から被ってるけど!


「……た、タクマロ殿、いらっしゃい……というのも変ですが、えっと、えっと……どうされました? 何か不都合でも? わたくしで良ければ、なんでも力になりますよ?」


 エイミィの奴はもう、私にジュースを吹いたことなど百億光年過去に忘却し、頬を赤らめ呼吸を熱くする。

 だからそれやめ~や、そうやって顔を赤らめて瞳を潤ませるから、男子が逃げるんだっつ~の!!(※男子で言うところの、鼻息荒く鼻の下を伸ばす的な)

 まあ私もだけどね!! だってしょうがないじゃない! 愛しちゃったんだもの!! カスラックに著作権請求されるような文面だって並ぶわよ思考に!!


「ど、どうも皆様、昨日は僕……気を失っちゃったみたいで、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

「め、迷惑だなんてそんな!」

「ええ、ちっとも迷惑などではありませんでしたよ、本当!」


 本当に本当? 本当にまた会いに来てくれたの?

 なんなのこの子マジ天使なの? 天使の輪をどこに落としてきたの?


 先ほどからしきりに豊満でムチムチの色っぽい身体を揺らし(琢磨呂が)、頬を赤らめしきりに照れたように頭を掻いている。

 ……これ本当に脈があるんじゃないかしら?

 エミリーが人並み外れたポジティブシンキングでなくとも、そう予感させる小悪魔のような魅力――天使なのに小悪魔なタクマロ君。

 タクマロ君は、ジュースの滴っている私の胸元を見て、再び顔を真っ赤に染めた。

 やばい……濡れる……。



     ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 ダメ元で美女騎士団に単身突貫を決行。「は? 何勘違いしてんの坊やキモ」って言われたっていい。ご褒美ですありがとう御座いますです。

 どのみちこんな美女美少女には一生会えないかもしれないんだから……もしかしたらゴロゴロいるのかもしれないけど、いやでも流石にこのレベルは……。


 カークさんの言葉は、むしろ琢磨呂の後押しにしかならなかった。

 ……こんな美女軍団に集団レイプされたら……やばい勃つ。静まれ俺の右曲り!


 昨日の甲冑姿ではない、あの姿も凛々しく美しかったけど……今日は皆ファンタジーな私服(?)だ。

 エイミィさんだけ少し重装備だけど、その姿ももう萌っぱなしだ。

 改めて――意味がわからないレベルの美女美少女率だ。皆々女性として豊満で、中にはスレンダーな人もいるが一様に腰が折れそうなほどくびれ、足がすらりと長く引き締まっている。

 しかもその美女たちが、頬を赤らめもじもじしているのだ、男としていきり勃つなという方が無理だ。


「えっと……実は白銀の薔薇魔法騎士団の皆様に、ちょっと質問がありまして……」

 この一言だけでも、一生分の勇気を使った気分だ、まあカークさんの言葉や推理がなければ一生絞り出せなかった勇気だけど。


「あ、ああ、遠慮は無用ですよ、なんでも聞いて下さい、タクマロ君」


 ……ちょっとさっきまで外で見てた時は、結構ずぼらな所もある金髪ロングのエミリーさん。そこがまた可愛いんだけど、話す時はどこまでも丁寧で騎士っぽい。

 僕が聞きたいのは、結構興味深々な、先送りしてきた話題。


「ありがとう御座います、実は……この世界の“魔法”って、どんなものなんですか?」


 異世界と言えば魔法でしょう。是非ともSSランクくらいのチートが欲しいです。



     ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「……ふむ、一言で言うと、神や精霊の力を呪文によって引出し、借り、行使する行為、ですね」


 僕の質問にはエイミィさんが丁寧に答えてくれた。


 魔法。それは未だ神秘であり、地球で言うところの科学と同じくらいこの世界に浸透しきったモノだった。

 特徴としては効果時間が長いモノも多く。なので、さびれた村なら魔法を使える人が一人二人いれば十分生活は成り立つ。このナーロ村には三人魔法を使える者がおり、その力はやはり特殊な学問が必要で、その才能は限られているらしい。

 村で魔力の才能がある者が居たら、村人全員でお金を出し合って王都など大きな街の学校に通い、故郷に錦を飾るらしい。


「僕にも……ありますかね? 才能?」

 そう、ここが重要!

 エイミィさんとエミリー隊長は顔を見合わせて、


「ん? 適正検査の結果も忘れてしまったのかな?」

「あ、はい……スミマセン」

「いえ謝ることはないですよ、……簡単ですから、ちょっとやってみましょうか?」


 そう言ってエイミィさんが席を立つ。他の騎士団の皆さんもわらわらと集まってくる。二階の部屋で休んでいた皆さんまでもぞろぞろ降りてきて、僕の周りに集まってくる。

 ヴァルハラかここは!? ほっといても美女美少女が勝手に周りに集まってくるぞ!? 合コンとかイケメンを餌にとか、支払は全部男子とか「職業は医者で年収1000万」とか首から下げてるわけでもないのに!?

 美少女騎士団の方々も興味津々といった風に注目してくる。


 そしてエイミィさんは――コップに一杯の水、一枚の葉っぱ。まさか……おいやめろバカ。


「では……魔法水見式をやってみましょうか♪」


 魔法付けりゃいいってもんじゃねえだろ!? 知らないぞ怒られても。

 いえエミリーさんにもエイミィさんにも罪はありません、全部アホな神が悪いんです。足りないんですアイツ。


 どうかと思ったけど、まあ実行して見ました。因みにリアルでも暇つぶしにやってみたことある人挙手。ノ

 僕の太めな、ソーセージのようにプニプニな指を翳し、カップを掴むように添える。そして――、


「む……!?」

「……ほぅ?」


 ど……どうですか? チート!? チート来てますか!?!?

 次の瞬間――――――葉っぱに、「水」の文字が浮き出た、漢字で。


 …………これは予想してなかった。一応特質系に……あたるのかな?


「コレは……中々の魔力!」

「……“水”属性ですか、かなりのモノです」


 まんま水属性でした……おいもうちょっと考えろよ(作者が)。

 水……水かぁ、いや嫌いじゃないけど、嫌いじゃないけどね?

 水なんてプールの授業で「トドみたい」「セイウチ」「うみぶた」っつわれた記憶しか……。

 「同じ水に浸かりたくない」「病気うつりそう」「うわぁ……」

 なんだろう……夢にまで見た魔力あったのに全っ然感動しねーや。


「水は四代属性で最も回復力に優れ、汎用性も高い。いやタクマロ君のような美男子にはぴったりだな!」

「……ちなみに一番人気はぶっちぎりで土属性です。火は……重要ですが、あまり人気ないですね、風は圧倒的不人気です全く使えないんで、水は十分人気モノですよ」

「余計なお世話だ! 悪かったな火で!」

「あと……私は土属性です♪」


 エイミィさん土属性だったのか……闇とか風のが似合いそうだったのに、しかし、誇らしげに目尻を下げるエイミィさんマジ可愛い。マジ漆黒の堕天使。

 エミリーさんは火属性らしい。こちらはズバリお似合いだ。本人嫌がっているみたいだけど。

 しかし土属性が大人気とは、汎用性が高く攻撃防御、回復を一人でこなせる万能系で、どんな戦場でも一人で戦えるらしい、念で言えば強化系にあたるとか(とは言われていないけど)、お~~い全国の土属性好き~! 今すぐアールドワースに来るんだー! 間に合わなくなっても知らんぞー!!


「しかしコレだけの魔力が有れば……王都の魔法学院に入学しても奨学金が出るかもしれないぞ!」

「……ええ、芸は身を助ける。タクマロ殿なら、土木や農業、花形職業にも付けるかもしれませんね」

「いやいや、タクマロ君なら普通にアイドルになれる!」


 土木関係が花形なんだ……でもアイドルはアイドルなんですね、この辺ややこしいな。

 しかし――魔法学院!? 入りたい! 是非入りたい!!

 いやそれより――!


「あ、あの……僕も……僕も皆さんみたいに、魔法騎士になれますか!?」

「!?」

「……ッ」


 そう、僕はまだ、彼女たちに何の恩も返していない。命を救われたのだ。ならもう、僕の命は彼女たちのモノとさえ言っていい。

 命の借りは、命でしか返せない……とは言わないけど、何としても恩返しをしたいのだ。

 シンプルに! 魔法学園に! 入学したいってのもありますけど!!

 魔法騎士に憧れてるのもありますけど!!!


 エミリーさんとエイミィさんが――他の騎士団の美女軍団の皆さんも、唖然として黙る。


「い、いや、た、タクマロ君は、男の子だろう……?」

「……男子が、騎士とは……前例がないわけではありませんが、あとラノベでは流行っていますが……」


「お願いします!!! 僕は……皆さんみたいなカッコイイ騎士になりたいんです! 皆さんの役に立ちたい……そう、白銀の薔薇魔法騎士団に入隊したいんです!!!!」


「「「!!!!!?」」」


 この世界には魔法がある。

 そして、魔法騎士という職業まである。

 そして僕には、魔法の才能まであった。

 だったら? だったら目指すでしょう!?

 少なくとも僕には、これ以外の選択肢が絶対に見つからない。


「い、いや……しかし……!」

「……そ、そうだ。タクマロ殿、記憶は、どうするのですか?」

「そんなのどうでもいいです!! 僕は――魔法騎士になりたいんです!!! お願いします皆さん、僕を王都に連れて行って下さぁい!!!」


 全力で頭を下げる。

 魔法学園――魔法騎士。

 もう僕の胸は何もかも一杯だった。


 ……後から聞いた話だが、

 やはり魔法騎士――それもトップエースの“白銀の薔薇”はとんでもないエリート集団だった。

 頭が悪くてもボクシングチャンピョンにはなれる(決して貶しているわけじゃありません)、腕立てが一回も出来なくても、東大の理系を首席で卒業していれば、NASAにだって就職できるかもしれない。

 けど――、

 体力がある、知性に優れている。

 どちらか一方だけでは、空軍のエースパイロットにはなれない。

 白銀の薔薇魔法騎士団は、まさにそのレベルのトップガンチームだった。

 その話を聞いても、僕は信じられないほど臆することがなかった。

 むしろ僕の挑戦心は、かつてないほどに燃え上がった。

 いつか――あの荒野を颯爽と駆けるこの人たちのように、ゴブリン共を蹴散らすランスチャージを――。


 頭は悪いし顔も悪い。全国有数の相撲部レギュラーだけど、人数の都合で捨て駒にされるだけ、一応は県内では多少知れた実力という自覚はあるけど、所詮全国レベルではないとはっきりと自覚している。

 でも――、

 もう僕の心は、決まっていた。

 この世界でなら、僕は変われるかもしれなかった。




                  第一章・転生 ~終~

今回で序章が終了です。

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