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納豆っておいしいよねって話

作者: 山田千春

 オレの朝は納豆から始まる――


 いや、何言ってんだよとか頭だいじょぶですかー?とか言わないでほしい。オレはただ単に納豆を愛してやまない高崎高校に通う至って普通の高校生だ。いやいや、だから精神科医紹介しますとかもう頭が完全に……とか大丈夫なんで。ええ、まじで。オレは至って正常ですから。


むっ階段を上る足音が聞こえてきた。これは我の快楽を妨げようとする悪魔の足音か……。はい、すみません。ちょっと調子に乗りました。


 まぁ、話を元に戻すとしようか。どこまで話したっけ?……進んでなかったな。いやだからさっきから一人でブツブツと……とか言わないでほしい。もうこのくだりは無視するぞ。つまり、オレは毎朝納豆を食べているという話だ。おいしいよね、納豆。人によってはあのにおいやネバネバがダメな人とかもいるかもしれない、それは個人差というものだろう。別にオレは納豆食べろと言っているわけじゃない。ただ「納豆おいしいよね」と言いたいだけだ。


「がちゃ、お兄ちゃーん。そろそろ起きてー」


 どうやら妹がオレの部屋の引き戸を開けて入ってきたようだ。


 状況を確認しよう。今の時刻は6時半くらいだろうか。そしてオレは自分の部屋のベットの上で寝ている。それを妹が「がちゃ」とか言いながら起こしにきたというわけだ。


「ねぇねぇ、お兄ちゃん。もう起きてるんでしょ?早く起きてよ。遅刻しちゃうよ」


「…………」


「早く起きないとこの部屋で新しいマジックの実験しちゃうよ?」


「…………」


「沈黙は肯定と受け取るからね。……まずはこの壁に貼ってある『ひとりでキュアキュア』のポスターの前にこの『ミルクちゃん』のクッションを置きます」


 ……誤解がないように説明しておこう。別にオレが『ひとりでキュアキュア』が好きなわけではない。オレの父親の姉の子供――つまり、いとこがプレゼントしてきたのだ。そいつはまだ幼稚園に入ったばかりでそれはもう可愛いのなんのって……話が脱線した。せっかくもらったものだし部屋に飾っているのだ。もう一度言おう、決していとこに『ひとりでキュアキュア』のポスターとクッションを頼んで貰ったわけではないことを。さらに念を押そう。決していとこにいちごのショートケーキなどあげていない。



「次にこのナイフを――カッ――投げました。見事にクッションとポスターがひとつきになってますね〜。しかしご安心を!なんとナイフを抜くとキズなど最初からなかったことに――なりませんでしたね」


 ……どうやらポスターとクッションはお亡くなりになったらしい。


「次はこの『ジジイ戦隊』の『G3』のフィギュアをこのトランプタワーの頂上に置きます」


『ジジイ戦隊』とは齢80過ぎのジジイ達が戦う特撮である。ちなみに『G3』の必殺技は『入れ歯アタック』である。


「そしてこのトランプで『G3』の首を――スパッ――ゴロン――はねました」


「…………」


 酷い殺戮劇だ。とんだスプラッターだろう。


「そしてこのトランプタワーを倒すと――バラバラバラ――首が元に――バラバラバラ――もどりま――バラバラバラ――せんでしたね」


「戻んねーのかよ!」


 オレは思わず飛び起きた。




   ***6:45***




「おはー」


 妹のせいで完全に目が覚めてしまった。まぁもうそろそろ学校へと向かう時間だ。ちょうどいいだろうということでオレは今リビングにいる。


「ごめんねぇ、今納豆切らしてるのよ」


 と言われ目の前に出されたのは焼いた食パンの上に目玉焼きが乗っている、通称ラ○ュタパンと呼ばれている物だった。


「パン食だと……そんな……そんなことって……」


「いいじゃない、毎日納豆ばっかりじゃ飽きるでしょ」


 と言いながらパンをほおばる妹。こうなっては仕方が無い。登校中にコンビニに寄ろう。




   ***7:20***




 「な、なんじゃこりゃあ」


 オレは今、目の前の光景が信じられなかった。なにせ1つも納豆の海苔巻きがなかったのだ。しかし案ずるなかれ、想定済みだ。すでに近所のスーパーのチラシは全て確認済み。すぐに納豆が一番安いウチミスーパーへと向かう。




   ***7:30***




 「なっなんだと……またしても納豆が売り切れだと……」


 そして納豆があったであろう場所の広告が目に入る。『テレビで紹介されました!!納豆は体によく~~食べることで~~な効果があります!!』……はっ!!全部読んでしまった。くっメディアめ……よけいな真似を……しかし、それにより納豆の良さが伝わるのも事実。オレの心境は複雑だ。こうなってはしかたがない納豆は食べられなかったが急いで学校に向かわねば。そこであるものが目に入る。


「な……梨……だ……と……」


 そう、梨である。個々の存在感は薄い。しかしそれが寄り集まった姿はまた何とも言いがたい。あの口の中に広がるかすかな甘み。そして瑞々しさ。想像しただけでよだれが出てきた。オレは梨を買い、かじりながら学校へと向かった。おいしいよね、梨。




   ***8:50***




「なんで遅刻したの?」


「納豆を探していたら、梨と出会ってしまって……。あっ先生もいります?おいしいですよ」


「あらそう?じゃあ頂こうかしらね……ってそうじゃないわよ!!」


「ふふふふふ、なんだ貴様納豆を探していたのか。残念だが、納豆ならば我が一族が全て買い占めさせてもらった!!せいぜい納豆のない生活に嘆き苦しむんだなぁ」


「なっなんだって」


「そんな」


「ひどいわ」


「納豆がなければ私はもう……」


「俺はもうダメだ。俺を置いて先に行け」


 教室は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。


「みんな!!まだ諦めるな!!オレ達にはまだ梨がある!!」


「もうだめよ。私たちは納豆がなければ生きていけないの……」


「なら、作ればいいじゃないか」


「え……?」


「納豆がなければ作ればいいじゃないかと言っている」


「そっそんなことって……」


「ああ、確かに難しいだろう。しかし可能性が無いわけではないんだ。どうだみんな、一緒に納豆を作らないか?」


「ああ、やってやろうぜ!!」


「きっと私たちならできるわ!!」


「この逆境をみんなで乗り越えようぜ!!」


「「「「「「「「「「おーーーーー!!!!!」」」」」」」」」」


「そっそんな展開、我はみとめんぞぉぉぉーーーーーくらえぃ納豆レイン」


「なっ納豆が窓の外から降ってくるだと?」


「恵みの雨だ!!天からの贈り物だ!!」


「ああ、なんだかどんな困難でも立ち向かえる気がする……」


 クラスメイト達が納豆まみれになりながら感動に震えている横でオレは親友と話していた。


「なあ、今度会う時はお互い納豆職人だな」


「ああ、お互い頑張ろうぜ」


 そして2人は納豆まみれの体で熱い抱擁を交わし、納豆職人になることを約束した。それを見た一部の女子生徒が「眼福じゃー眼福なのじゃー」と言っていたがそれはまた別の話。




   ***卒業式***




 今目の前には多くの生徒達の顔がある。オレは今ステージの上に上がっている。


「~~このことがあったからこそ私は今、将来の夢に向けて努力すことができているのかもしれません。以上で卒業生代表の言葉とさせていただきます」


 おじぎをするとある一点から手を叩く音が聞こえてきた。


「いやーすぅんばらしぅぃ。ところで、あなたの将来の夢とやらをもう一度聞かせてもらえますかな?」


「こっ……校長先生…………はい、私の将来の夢は――――――――――公務員になることです!!」


「「「「「「「「「「帰れよ!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」


 全校生徒の声がハモった瞬間である。


 いやー納豆っておいしいですよね。

 はい、疲れてます。ノリと勢いで書きました。

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