彼と私。たまに本
家は隣同士、小さい頃からずっと一緒で、一緒にいることが当たり前で。ずっと兄弟みたいなもので。ばかバカ言い合うのが当たり前で。
それがいつ好きに変わったのかなんて覚えてなくて。
腐れ縁なのか何なのか、高校生になっても学校は一緒、部活も野球部とそのマネージャー(まぁ、小さい頃一緒にやってたからなんだけど)。
いつも通りの帰り道。隣同士だからもちろん通学路も一緒。肉まんを食べながら歩く君と、漱石を読みながら歩く私。
「次の試合勝てそう?」
「あぁ、今年は一年も有望だし、地区大会いいとこまで行けそうだぜ」
なんて他愛の無い会話をしていると、ポツポツと雨が降り出した。
傘も何も持っていなかったから急いで雨宿り出来る場所に入る。
「雨、やまないね」
「……おう」
閉じた小さいタバコ屋の軒下で雨宿り。
なぜか赤く染まっていく斜め上の君の顔。
雨に濡れた体はどんどん冷えていく。
でもさっきより心持ち近付いた距離に、頬だけはどんどん熱を持っていく。
「寒いね」
更になんでか赤くなっていく君の耳。
そして不意に手を引かれぽすんと君の胸に収まる私。
「え? どうしたの? 」
軽くパニックになる私に、
「こうして欲しいんじゃなかったのか? 」
と顔を赤くしながら言う君。
数秒経ってから言ったことの意味を理解した私は、
「暖かいね」
と返すと、意を決したように、
「月が綺麗ですね」
と、言われて、今度は私の顔が真っ赤になった。
―それにしても本読まないのに漱石なんてよく知ってたね
―……まぁな
―それと今雨降ってて、月見えないよ
―うるせぇ、黙っとけ
お久しぶりです。
ベタベタでもずっと書きたいと思ってたお話。
ちなみに
「雨、やみませんね」…もっと傍にいたいです。
「寒いですね」…抱きしめて下さい。
「暖かいです」…傍にいられて幸せです。
「月が綺麗ですね」…あなたを愛しています。
夏目漱石の訳だそうです。