第三話 ⅩⅥ
いらっしゃいませー。
ヤバい、短いです。でもお楽しみいただけると幸いです。
「「出たのよ!!」」
「昨日も出たのね?」
「「そう!」」
今日も朝から居なかった双子は再びバアン! と盛大な音を立てて教室の扉を開いて駆け込んできた。
二度目なのでマリアは動じず、ナディアとソフィアの言いたい事を汲み取る。
「学院から禁止令が出たのに? どっかの馬鹿が自分は大丈夫とか言って夜に一人で外に出たのか?」
「「それが違うのよ!」」
机に両手を着き、まるで抗議する様に双子はロウェンに言う。
「どう違うんだよ?」
「「夜じゃなくて昼なの! 一人じゃなくて二人なの!」」
「……そうか」
昨日考えた懸念がその翌日に起こるとは。
学院の考えが読まれている? 若しくは情報を知られているのか?
だとすれば、これは想像以上にヤバいんじゃなかろうか。
対策としては、学院から生徒全員を退避させて半端に生徒が通り魔に襲われる可能性を残すよりも、寮に押し込めて結界でも張った方が余程安全だ。
通り魔が寮に潜んでいたら意味無しではあるが。
ふと気付いて、ロウェンは双子に訊く。
「襲われた奴等って色付きだったりするか?」
訊かれた二人は目をぱちくりさせた。
「ちょっと待って」
ナディアが懐から手帳を取り出し、パラパラと捲る。
「……うん。三人共色付きだよ」
「ランクはE、D、Eだね」
ページに目を通してナディアが答え、姉の手帳を覗き込みソフィアが補足する。
双子の言葉を聞いて、ユウキが口を開く。
「という事は、魔力を沢山持ってる人が狙われているって事?」
「そうなるな」
とは言っても、狙われ易いだけで魔力を多く保有していない人間が狙われない訳じゃ無い。
「学院はどうするのかしら?」
マリアの声は真剣であるが、不安は帯びていない。
通り魔との接触した時に苦戦しなかったからだろう。
ロウェンも、あの通り魔一人ならそれほど脅威は感じない。
相対すれば、の話ではあるが。
ガララッ。
教室の扉が開く。
「噂をすれば何とやら。だな」
ロウェンは呟いた。
そこから顔を出すのは当然スハイツ。
何時もだらしない感じがする彼の顔に、険しさが宿っている。
「今から全員グラウンドに集合だ。移動しろ」
一息に告げてスハイツは去って行った。
え? と固まっている生徒達を置き去りにして。
「……凄い急いでるみたいだね」
ポツリ、とユウキが零す。
「そんだけ事態を重く見てるって事だろ」
席に着け、も無かったのだからそういう事だろう。
「そっか」
ロウェンの言葉にユウキは納得した様だ。
「って言ってもまだ二回だけなのに」
良く考えてない発言をするのはマリア。
反論するのはナディアとソフィア。
「二回も、だよ。通り魔は今まで同じ場所で襲う事なんて無かったもの」
「学院は広いけど、二回目があれば三回目も四回目もある可能性は高いし」
マリアはフムフムと頷く。
「そうね。私達はエルの予想のお陰で三回目も四回目も確実にあるって分かってるし、対応が早いのに越した事は無いか」
学院の教員達が、通り魔の目的が魔力だ、と推測しているかどうかは別にして。
「取り敢えず、早くグラウンドに行こう」
「おう」
ユウキの言葉を合図にロウェン達はグラウンドに向かった。
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