第三話 ⅩⅣ
こんにちわ、長さは今回はいつも通りです。
でも、ストックが残り少なくなっていてヤバいです。
まだ二週間程忙しいので、もしかしたらお休みする週があるかもしれません。
そうならない様に頑張ります。
お楽しみいただけたら幸いです。
朝、寮の食堂。
「遅いね。ナディアとソフィア」
「そういえば、遅いわね」
「どうかしたのかな?」
「さぁな。寝不足で寝坊してんじゃねぇの?」
「後で部屋を見て来るわ」
「うん」
校舎へ向かう道中。
「部屋に行ったけど、二人共いなかったわ」
「え?」
「俺達より先に行ったんだろ」
「あ、そうか」
「どうしたのかしら?」
「さぁな。興奮して早く起き過ぎたんじゃねぇの?」
(それはどうなんだろう……?)
(発想が子供ね……)
魔術科校舎、一年G組教室。
「二人共、いないね」
「そうね。ホント、どうしたのかしら?」
「珍しい事もあるもんだな」
◇◇◇◇◇◇◇
バアンッ!!
ロウェンとマリアとユウキが雑談に興じていると、突如大きな音を立てて教室のドアが開け放たれた。
「うわっ!」
ユウキが驚いて引っ繰り返り……はしなかったが、それ位驚いて声を上げる。
「「スクープ、スクープぅぅぅぅ―――――!!!」」
何処ぞの雑誌編集者か、とツッコミたくなる台詞を大声で言いながら教室に入って来たのはやはり、ナディアとソフィアだった。
現在進行形で教室中の視線を一身に浴び、注目の的となっている双子は三人の下へ走り寄ると、早口で捲し立てた。
「大変、大変なの!」
「出た、出たの!」
「昨日、昨日の夜!」
「学院、学院の中で!」
「ちょ、ちょっと落ち着きなさいっ!」
全く文章になっていない言葉を並べるナディアとソフィアに、マリアが二人に負けず劣らずの大声で止めた。
「「フシュー、フシュー……」」
心なしか、双子の頭から湯気が出ている様に見えなくもない。
彼女達の興奮に当てられたのか、ユウキが動揺している。
「だ、大丈夫?」
「そんなに慌ててどうしたんだよ?」
何時になく興奮しているナディアとソフィアに、その理由をロウェンは訊く。
「「出たのよ!!」」
まだ落ち着いていないらしい。
「何が?」
それでも続ける。そっちの方が速く済みそうだから。
「「通り魔が!!」」
「何時?」
「「昨日の夜!!」」
「何処に?」
「「ココに!!」」
「……マジで?」
「「マジで!!」」
大声だから、今教室にいる全員に聞こえている。
一気に教室内がザワザワし始めた。
「生徒が襲われたって事で良いんだよな?」
「うん、そう。場所は魔術科校舎、襲われたのは魔術科の三年生」
「朝早く来た先生が気を失っている所を見つけたんだって」
ある程度吐き出した事で治まったのか、ナディアとソフィアはちゃんと話し出す。
襲われた生徒の怪我は命に係る物ではないらしい。
「朝いなかったのはこれを調べる為だったのね」
「うん。情報は新鮮さが大切だからね」
「噂になると正確さに欠けちゃうし」
マリアの言を肯定する双子。その言葉にはプロ意識が窺えた。
「お前等の情報網は一体どうなってんだ?」
「うふふ、凄いでしょぉー?」
「凄いでしょぉー?」
「おぉ~、スゲェスゲェ」
三人でふざけていると、ユウキが言った。
「エルの言った通りになったね」
彼の予想は正しかった。そうなるのだろう。
沈んだ顔をするユウキを見て、マリアは口を開いた。
「そうね。でも、予想していたからと言って、これは私達が動いて簡単にどうこう出来る代物じゃないから、悔やんでも仕方ないわよ」
「うん。多分、僕よりも予想が出来たエルの方が悔しいだろうしね」
ユウキの表情が苦笑に変わる。
同じく苦笑してロウェンは言う。
「動けない分、特にな」
それからもう少し話していると、鐘が鳴った。
「おーぅ、ホームルーム始めるぞー」
何時もの様にスハイツはドアをガララッと開けて教室に入ってくる。
その様子からは、とても通り魔が学院内に出没した事への動揺や焦りは感じられない。
「あぁー。早速だが、巷で噂の通り魔が学院内に現れて生徒が襲われた」
彼の口調はダルダルしていて気が抜ける。
「しかーし、学院からお前等全員を追い出すのは無理」
緊張感が欠片も無いのはスハイツの特殊能力に違いない。
学院側としては今直ぐにでも生徒達を全員家に帰したい所だろうが、実家が遠い生徒はかなりの数おり、中には他国出身の者もいるので現実的では無い。
「幸い、通り魔は夜に獲物が一人じゃないと出ないらしい。だから夜の外出と一人行動は禁止。夜以外の時間もなるべく一人にならない様に、だとさ」
休みになれば良いのに……、と愚痴る彼。
それで良いのか、先生よ。
夜にしか現れない事。被害者の怪我の殆どが重傷とまでいかず、死者もほぼ居ない事。また、犯行現場が移動している事。これらを総合して、学院は生徒達を避難させるまでも無く、通り魔の方が先に去ると考えたのだろう。
だが、エルの話を聞いていたロウェンはそうは思えなかった。
エルの予想が正しければ、通り魔は学院に居座り犯行を続ける。
手際の良さからして、生徒が夜に出て来なくなれば日が沈まない時間帯に動き出す可能性がある。
(頼む。エルの予想、外れてくれ……)
友人を疑う訳では無いが、切実に、ロウェンはそう思った。
お読みいただき、ありがとうございます。




