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Change Ring  作者: 桜香 辰日
第三話 ~引いて欲しくない時に限って風邪を引く~
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第三話 Ⅳ

 本日二つ目の投稿です。

 再びロウェン視点になります。

 お楽しみいただけると幸いです。

 普段から朝は余裕を持って行動しているため、ロウェンとマリアは学院に特に焦らずに到着出来た。

「お疲れー」

「そんなに疲れてねぇけどな」

 特別何をやった訳でも無いし、朝っぱらから疲れていたらやってられない、とソフィアのねぎらいをロウェンは否定する。

 すでにおはようの挨拶はしているので、掛ける言葉はこれ位しか無いが。

「丁度良いとこに来た。今街で出没してる連続通り魔知ってる?」

 ユウキと話していたナディアがロウェン達の方を向いて訊いてきた。

「通り魔?」

 マリアが怪訝な顔で繰り返す。

「そ、通り魔」

 ソフィアが繰り返す。

「通り魔がどうしたんだよ?」

 このままでは話が進みそうに無いので、ロウェンは促す。

 双子は意気揚々としゃべり始めた。

「二、三週間前位から、夜道を一人で歩いていると通り魔に襲われるっていう事件が多発してるんだよ」

「後ろからブスッとね。でも、何も盗られてない無いんだって」

「愉快犯って事?」

 ソフィアの、何も盗られていない、という言葉に不思議そうな顔をするユウキ。

「らしいよ。ホントかどうかは別として」

 ナディアは冷静に言う。

「その通り魔ってどこにいるの?」

 次なる疑問をマリアが尋ねる。

「んー、何かねー。ちょっとずつ移動してるみたいだから、どこに居るかは分かんない」

 むぅ……、と難しい顔でソフィアが答えた。

 そこにロウェンは口を開く。

「どんな風に移動してるかは分かるんだろ?」

「うん。ここから北の方角から、段々こっちに近付いて来てる」

「近付いてるって、学院に?」

 ソフィアの返答にユウキが目を丸くする。

「そうだよ。しかも、犯人の姿を見た人は誰も居ないんだって」

「被害者も?」

「被害者も。突然、音も無くいきなり後ろから刺されて、直ぐに後ろを振り向いても犯人は逃げた後で誰も居ないっていう感じ」

 ナディアとマリアの問答にロウェンは首を傾げる。

「矢で射られたとかじゃ無いのか?」

「矢も剣も凶器は何も残されて無いって。傷跡から針っぽい奴ってのは分かったらしいけど」

 ソフィアが返す。

「刺された後に引き抜かれてるって事は、犯人は被害者のそばに近寄ったはずだよね」

 ユウキが考え込む。

 仮に、離れていても凶器を引き抜ける様にひもを結び付けていたら、後ろを振り向いた被害者に凶器を目撃される筈である。

 ナディアとソフィアの話は続く。

「後、刺された人達はてんでバラバラ。共通点は無いみたい」

 夜の事なので、子供や老人の被害者は今の所いない。

「だから夜間の一人での外出は控える様に、って呼び掛けが街でされてるよ」

「分かっているのは、夜に一人でいる時に襲われるって事と、凶器の形状だけ。正に謎だらけだから、今結構この話が出回ってるの」

 肩をすくめるナディア。

「物騒ね」

 眉間に皺を寄せてマリアが言った。

 その後、一瞬だけ会話が途切れる。

「あの、話が変わるけど良い?」

 ヒョイ、とユウキが手を上げた。

 別に特に大事な話では無かったので、誰も否やは無い。

「良いわよ。何?」

 マリアが対応する。

「うん。エルが休んでる間のノートどうする?」

「あ、忘れてた」

 忘れていたというより、そんな考えははなから無かったような感じでロウェンが言う。

 ノートを取る、と言っても一人が二人分のノートを書くのでは無く、誰がノートを貸すのか、が論点なので態々(わざわざ)言う必要は無い。

 しかし、ノートの取り方や字を、借りる方は気にしなくても貸す方は気にするのである。

「じゃあ、ユウキよろしく」

 迷う事無くロウェンは告げた。

「え、僕?」

 確かに自分が言い出しっぺだが、それで良いのか? とユウキは聞き返す。

「ああ。俺の字は汚いから」

 アッサリとそう言って退ける。

 もっと上手く字を書ける様に練習をしろ、と周りに良く言われる。とロウェンは付け加えた。

 眉をハの字にして答え、ユウキは女子三人に目を向ける。

 すると、

「いや、実は私、板書ばんしょ上手く無くて……」

 恥ずかしそうにマリアがユウキから目を背けながら言った。

 後、良くそんなノートが取れるな、と言われた。なんていうらない情報も。

「わ、私達もあんまり……」

「う、うん。そうなんだよねぇ……」

 こちらは気まずそうに、マリアとは逆方向に目をそむけるナディアとソフィア。

 多分、字や板書の仕方云々(うんぬん)では無く、空いているスペースに見られたくない事をこの双子は書いているに違いない。

 だが、素直なユウキは素直に納得し、頷いた。

「そっか。じゃあ、ノートは僕が貸すよ」

 お読みいただき、ありがとうございます。

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