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Change Ring  作者: 桜香 辰日
第二話 ~学校みたいな所には大体アレが存在している~
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第二話 Ⅴ

 おはようございます、こんにちわ、こんばんわ。

 ふふふふふ、作者はテンションMAXでございますよ。

 なんと! お気に入り登録数が70件、総合評価が200PTを突破いたしましたのでございます!!

 ついでに言うと先日、この小説を書き始めて一年たちました。

 という事で、上述のお祝いと皆様への感謝の投稿です。

 お楽しみいただければ幸いです。

 次の日の朝。

 エルは今日もいつも通りの日常を過ごすはずだった。いや、そうだとエルは思っていた。

 寮では特にする様な事は何も無く、いつも通りだった。

 ところがどっこい。学院に来て友人達と談笑していると、それをぶち壊す出来事がやって来た。

 正確には、事、ではなく、人達、だ。

 達と付いているのは、一人ではなく二人だったから。

 どちらも男で赤色のネクタイをしている。しかし、第一印象は全く違う。

 一人はそこそこ身長が高い部類に入る位。髪は紅藤あかふじ色で瞳はくれない。キリッと引きまった顔は良く言えば真面目そう、悪く言えば頭が固そうに見えるイケメンさんだ。

 もう一人はかなり身長が低い。160cmないのは確実だろう。鋼の様な銀色の髪に人参にんじんの様なオレンジ色の瞳をしている。笑みとはいかないまでも緩んだ口元はのんびりした感じを受ける。太い眉毛がそれに拍車を掛けている。

 この二人が教室の扉を開けていきなり(講義中でもない限り教室の扉をノックする事は無いので当たり前)現れ、

「エル=フェルトゥナさんは居ますか?」

 と嫌にはっきりした声でいてきたのだ。

『……………………』

 朝という時間帯は気が緩みやすい。その場にいた全員が驚きで固まってしまうのは仕方無いだろう。自分の名前が出たのなら尚更なおさら

「……あ、俺がエル=フェルトゥナです」

 自分の名を呼ばれた事にハッとし、エルは慌てて手を上げ応える。

 それを認めて二人が近付いてくる。

 座ったままでは失礼だと思い、エルは椅子から立ち上がった。

 エルのほぼ真正面に立った紅の瞳の男が口を開く。

「朝早くから済まない。初めまして、私はアーロン=バイルシュタイン。で、こっちが……」

「キリル=ニーニストです。よろしく」

 通常より遅くおっとりしたスピードで、右隣の背の低い男がヒョイと手を上げて挨拶する。

 彼の自己紹介が済んだのを確認し、アーロンは言った。

「突然だが今日の放課後、生徒会室に来て欲しい」

「は?」

 耳に入ってきた言葉にエルは、ぱかっ、と口を開く。

 アーロンは親切にもう一度言ってくれた。

「今日の放課後、生徒会室に来て欲しい」

 しかし、先程の「は?」は聞き返したわけでは無い。

「あ、いえ。話は分かりました。それで、何故なぜですか?」

 生徒会室に来て欲しい事、その相手がエルだという事も。

「何か用事があるのか?」

「いえ、特に何もありませんが……」

 戸惑うエルにアーロンは言う。

「今この場で君の質問には答えられない。放課後、生徒会室で全て説明する。来てくれるか?」

 これ以上訊いてもアーロンは答えないだろう。エルは返事をする。

「はい。分かりました」

 、という答えにアーロンはほっとした様だ。固い事に変わりは無いが、大岩から岩くらいに表情が柔らかくなった様にエルは感じた。

「そうか、ありがとう。では、放課後に」

「じゃ、またね」

 キビキビ動いて去るアーロンの後ろで、キリルはヒラヒラと手を振りながら去って行った。

 二人が扉を閉めた後、エルは大きく息を吐いて椅子に座る。

「ふぅ……」

 着席するエルに複数の視線が向けられる。その視線は朝から精神的に疲れた彼の疲労を助長させる。

「大丈夫?」

 体を沈めるエルにユウキが心配そうに問うた。

「一応」

 短く答えてエルはまた息を吐く。

「目付けられちゃったねー」

 ずっと口を閉ざしていたナディアがからかう様に言ってくる。

「そうだな……」

「ま、精々頑張る事ですねー」

 こちらもずっと黙っていたソフィアが心のこもっていない声援と言えない声援を送る。

「え? え? 何? どういう事?」

 ただ一人、話に付いていけていないユウキが頭からハテナを飛ばす。

 説明する気力がまだ回復していないエルは双子に振った。

「ナディア、ソフィア、頼む」

「「ほいほーい」」

 任された二人がしゃべり出す。

「まずー、さっきの二人は生徒会の人です」

「入学式の時に見たでしょー?」

「そういえば……」

 見たことのある顔だった。

 ナディアとソフィアの言葉にユウキは思い出す。

 ナディアとソフィアは続ける。

「次にー、エルが呼ばれた理由だけど」

「生徒会へのスカウトだねー」

「えっ?! そうなのっ?!」

「そだよー」

 驚くユウキにソフィアが頷く。

「アマンシオとの喧嘩けんかは無かった事になったしー、この前の騒動も先生から御咎おとがめ無しって言われたからー、説教じゃないんだよねー」

 先程から妙に間延まのびした口調でナディアが説明する。

「説教じゃないとしたらー、今の時期だと生徒会へのスカウトしか可能性が無いんだよねー」

 続けてソフィア。彼女も何故か口調が間延びしている。

「昨日、全クラスの武器選びが終わったからー、生徒会も部活動も本格的に新入生の勧誘に動き出したって事だねー」

 ナディアの台詞にユウキが疑問を口にする。

「生徒会もってどういう事?」

「それはー、欲しい新入生が生徒会に入ると入部を断られちゃうからー、部活が物申ものもうした訳ですよ」

「それを生徒会が承諾してー、今は平等に新入生を勧誘してるんだよー」

「へぇー、そうなんだー」

 ソフィアとナディアの解説に、生徒会への入会は選挙、または強制的なもので、部活と同じ様に新入生を勧誘するとは思っていなかったユウキは素直に感心する。

「そんな訳でー、優先権が無くなった生徒会は当然必死になるしー」

「可能性が高くなった部活動はモチベーションが上がって必死になるからー、新入生勧誘は過激なんだよー」

「へぇー」

 聞き手にてっしていたユウキはふと気付く。

「あれ? じゃあ、何でさっきここで勧誘しなかったの?」

「あぁ、それはねー。教室での勧誘は原則禁止だからー」

 ナディアの説明を補足しておくと、朝のホームルームから放課後までと、廊下に呼び出して勧誘するのも禁止である。

「放課後、教室の前は人で溢れ返るから朝来たんだよー。反則ギリギリだけどねー」

 アーロンとキリルは、ただ生徒会室に来て欲しいと頼んだだけであり、勧誘はしていない。エルの質問に答えなかったのはルールを破らないためだ。

 ソフィアが口を閉じ、疑問が解消されたユウキは言った。

「よっぽどエルが欲しいんだね。凄いね、エル」

「嬉しくない」

 褒め言葉と取れる言葉にエルは即座に返した。

 エルの返答にユウキは目を丸くする。

「え? 嬉しくないの?」

 スカウトされるという事は力が認められるという事と同義だ。嬉しくない筈は無いとユウキは思うのだが。

 眉間に浅くしわを寄せ、エルは言う。

「認められるのは嬉しくない訳じゃないんだけどな。目立ちたくないんだ。後々、面倒な事になるだろうから」

 スカウトされる。ただそれだけでもう目立つことになる。厄介だし、鬱陶うっとうしい。

 自分は強いのだと知らしめたり、他人を見下したりして優越感を得たいとエルは思わないし、学院の行事の運営や生徒達の見本となる義務と責任と誇りを持ちたいとも思わない。

「そっかぁ。確かに荒事はちょっと嫌だね」

 面倒な事、をしっかりと理解してユウキは渋い顔をする。

 エルは付け加える。

「それに、俺の武器も問題だ」

「あれだと甲斐がいとか達成感とか感じる前に大変だろうねー」

「ああ」

「見てる方は楽しいんだけどねー」

「……そうか」

 ナディアの後に嬉しくない話をもっと嬉しくなくさせるソフィアの発言に、エルは弱く返すしかなかった。

 そして、会話が始まってから気になっている事を訊いてみる。

「……その口調はニーニスト先輩の真似か?」

「「あ、気付いたー?」」

 えへっ、と双子が笑う。

「……似てないぞ」

 キリルの口調はのんびりだなぁと人に感じさせるが、ナディアとソフィアはただ語尾を伸ばしているだけだ。のんびり感なんて皆無、似ていない。

 ちなみに、今この場にロウェンとマリアはいない。

 逃げる者の数に対して多すぎる鬼と鬼ごっこをしている。

 予鈴が鳴るまで……、いや、教室まで来る時間を考えると予鈴が鳴っても来ないだろう。

 二人は朝、寝坊した訳でも無いのにパンを口にくわえて走り去って行った。

 無事だと良いのだが。

 お読みいただき、ありがとうございます。

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