第二話 Ⅲ
短いです。最近、短いのが多くてすみません……。
近い内に長いものを投稿したいと思います。
第二話 Ⅲ、お楽しみいただけたら幸いです。
風紀委員会委員長グウィード=アバルキンは現在、生徒会棟三階にある会議室で一息入れていた。
マグカップを口に運ぶ彼の目の前には、数枚の書類を机上に広げ、その中の一枚を手にうんうん唸っている男がいる。
髪は翡翠、瞳は菜の花色の、世間で言えばSランクの魔力保有量を表す色を持っている。
顔の造りは一言で言うとクール。眼鏡を掛けるとインテリ感が増してかなり似合うだろう。
生徒の中で最も有名な生徒、生徒会会長オレスト=ブレイフマン。
彼は右肘を机に付いて右手に顎を乗せ、そのインテリな顔の眉間に皺を寄せて唸っている。
いつものオレストらしくない、常人より整った顔が崩れている様子から、その案件が相当彼を悩ませている事が理解できる。
「う~~ん……」
「……何をそんなに唸っている?」
目の前でこれ見よがしに唸られては、休憩したくても休憩できない。
オレストはグウィードに視線を向けずに答えた。
「……今、新人争奪戦だろ?」
「そうだな」
マグカップの中身を見てグウィードは返事をする。
部活の新入生勧誘の話題が出たという事は、オレストの手にある書類は一年生のプロフィールだろう。
そして、オレストが悩んでいる。
「良いのが居なかったか?」
推論を口にするグウィード。
「いや、この紙を見てそう言うかな? 全く居なくはないよ。まだ二クラス残ってるし」
突き詰めれば、欲しいと思える人材はいなかったと言っている。
正直に言えば、そこそこな者はいるのだが今一なのだ。それなのに後残り二クラスしかない。
新入生の勧誘は公平を期する為に、生徒会も学院に存在している部活と同じように一年生をスカウトする。
部活の勧誘と違うのは、スカウトする基準が高い事、誘う人数も大体一人で多くても二人という部分だ。
「その二クラスは明日が武器選択なのか?」
「そうだよ。良い人材がいれば良いんだけどね」
はぁ……、と溜息を吐くオレスト。
新入生の見定めは武器選択の実習の時に行われる。それは部活の中に武器に関した部活があるからだ。例えば、剣術部が弓を武器に選んでいる生徒を誘っても入ってくれることは無い。そんな無駄な努力をしない為だ。
勿論、魔術に関する部活も存在する。見定めは同じ武器選択の時。武器と言っても、杖のような魔術補助をする武器があるからだ。
その点、生徒会は武器に拘る必要はないのだが。
「大変だな」
グウィードは一言、感想を言う。
「それ、他人事だと思ってる言葉だよね?」
ここは心配したり、励ましたりする所だろ、とオレストは表情を変えないグウィードをじと目で睨む。
「……はぁ。居たと思ったらホメロスに持っていかれてるし、腕がそこそこありそうなのは良いんだけど、こっちが本当に求めてる精神的なものが足りないし…………」
ぐちぐち言いながら、ぐでぇ~、とオレストは机に上半身をべったりとくっ付ける。
「神官部に入るのはそういう者達が多いから仕方がない。それに、入ったばかりの新入生が精神的に未熟なのも仕方がないことだろう」
「数がそもそも少ないのに、神官部に持っていかれるから更に少なる。酷いよ、これ」
生徒会が求める人材に限って、神官部の活動生になるのだ。愚痴らずにはいられない。
ちなみに、風紀委員会は新入生を勧誘することは無い。色々と能力面で難があり過ぎるからだ。
「最悪、二年から選べばいい。頑張れ」
マグカップを空にして、グウィードは立ち上がる。
「何だよそれー。手伝うとか言ってくれないのかよぉー」
背中に掛かるオレストの言葉を無視して、グウィードは会議室を去った。
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