第一話 ⅩⅨ
二日ぶりです。
私は一週間に一度のペースで投稿するのですが、何となく、気分で投稿しました。
第一話 ⅩⅨ、お楽しみいただけると幸いです。
ファルベント魔術学院、学生寮のある一室。
学院から自身に与えれた寝室で、肩を怒らせている人物がいた。
アマンシオ=ムローワである。
「……クソッ!」
彼はベッドに置かれている枕を右手に持ち、振りかぶって壁に投げつける。
枕は柔らかいが、力一杯壁に投げつけられればそれなりに音はする。
バンッという大きな音を立てて、枕は床に落ちた。
壁は防音になっているので、この部屋のもう一人の住人が被害を受けることは無い。
まぁ、例え壁が防音でなくとも、彼が相手のことを気にすることは無かっただろうが。
「ハァ、ハァ……」
怒りのせいで息を乱しながら、アマンシオは落ちた枕を睨みつける。
「……クソッ!」
もう一度同じ言葉を吐いて、魔術科校舎の玄関前でのことを思い返す。
生意気な奴等だ。
庶民のアイツ等と貴族の俺では価値が違う。俺と対等の立場に立つことはおろか、言葉を交わす資格もアイツ等には無い。
それなのに、アイツ等は俺に歯向ってくる。その上、貴族の俺を侮辱しやがった。それは決して許されないことだ。
だから、罪を犯した犯罪者を処罰するために魔術を使おうとしたのだ。昨日習った火の魔術を。
しかし、予想に反して魔術は発動しなかった。ミスは無かったはずなのに。
その上、グライフェンとウェルベイアが間に入って障害物となり、風紀委員会が邪魔をしてきた。悪運の強い連中である。
そして、最後はいつもアイツ等の中心にいる男。エル=フェルトゥナ。
アイツが風紀委員会に嘘の言い訳をして引き下がらせた。
俺に恩を売ったつもりか? 感謝しろと? それとも自分の方が格上だと言いたいのか? 馬鹿が。魔力ランクがCの俺を、Dランクをアイツが追い越すことなど不可能。魔力ランクは一つ違うだけで天と地ほどの差があるのだ。
そもそも俺に非は全くない。悪いのは俺に口答えする庶民の方だ。
風紀委員も気に食わない。俺のことを無視しているような態度を取りやがって。俺が誰か知らないのか? だとしたら、相当無知な奴等だ。
そこまで考えて、アマンシオは下に向けていた顔を上げ、ベッドに腰を下ろす。
膝に肘を着いて、彼は思う。
俺はアイツ等よりも全てが優れている。よって、俺がアイツ等より劣るなんてありえない。実習の時、ベースを出すのが俺より早かったのは運が良かっただけだ。
今に見ていろ。お前等のその勝ち誇った顔を屈辱で汚してやる。
俺の地位が誰よりも上にあることを思い知らせてやる。
絶対に。
顔を上げたアマンシオの目には、暗い決意の光が灯っていた。
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