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Change Ring  作者: 桜香 辰日
第一話 ~最初の騒動はあっさりさっぱり?~
29/92

第一話 ⅩⅨ

 二日ぶりです。

 私は一週間に一度のペースで投稿するのですが、何となく、気分で投稿しました。


 第一話 ⅩⅨ、お楽しみいただけると幸いです。

 ファルベント魔術学院、学生寮のある一室。

 学院から自身に与えれた寝室で、肩をいからせている人物がいた。

 アマンシオ=ムローワである。

「……クソッ!」

 彼はベッドに置かれている枕を右手に持ち、振りかぶって壁に投げつける。

 枕は柔らかいが、力一杯壁に投げつけられればそれなりに音はする。

 バンッという大きな音を立てて、枕は床に落ちた。

 壁は防音になっているので、この部屋のもう一人の住人が被害を受けることは無い。

 まぁ、例え壁が防音でなくとも、彼が相手のことを気にすることは無かっただろうが。

「ハァ、ハァ……」

 怒りのせいで息を乱しながら、アマンシオは落ちた枕を睨みつける。

「……クソッ!」

 もう一度同じ言葉を吐いて、魔術科校舎の玄関前でのことを思い返す。


 生意気な奴等だ。

 庶民のアイツ等と貴族の俺では価値が違う。俺と対等の立場に立つことはおろか、言葉を交わす資格もアイツ等には無い。

 それなのに、アイツ等は俺に歯向ってくる。その上、貴族の俺を侮辱ぶじょくしやがった。それは決して許されないことだ。

 だから、罪を犯した犯罪者を処罰するために魔術を使おうとしたのだ。昨日習った火の魔術を。

 しかし、予想に反して魔術は発動しなかった。ミスは無かったはずなのに。

 その上、グライフェンとウェルベイアが間に入って障害物となり、風紀委員会が邪魔をしてきた。悪運の強い連中である。

 そして、最後はいつもアイツ等の中心にいる男。エル=フェルトゥナ。

 アイツが風紀委員会に嘘の言い訳をして引き下がらせた。

 俺に恩を売ったつもりか? 感謝しろと? それとも自分の方が格上だと言いたいのか? 馬鹿が。魔力ランクがCの俺を、Dランクをアイツが追い越すことなど不可能。魔力ランクは一つ違うだけで天と地ほどの差があるのだ。

 そもそも俺に非は全くない。悪いのは俺に口答えする庶民の方だ。

 風紀委員も気に食わない。俺のことを無視しているような態度を取りやがって。俺が誰か知らないのか? だとしたら、相当無知な奴等だ。


 そこまで考えて、アマンシオは下に向けていた顔を上げ、ベッドに腰を下ろす。

 膝に肘を着いて、彼は思う。


 俺はアイツ等よりも全てが優れている。よって、俺がアイツ等より劣るなんてありえない。実習の時、ベースを出すのが俺より早かったのは運が良かっただけだ。

 今に見ていろ。お前等のその勝ち誇った顔を屈辱で汚してやる。

 俺の地位が誰よりも上にあることを思い知らせてやる。

 絶対に。


 顔を上げたアマンシオの目には、暗い決意の光がともっていた。

 お読みいただき、ありがとうございます。

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