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Change Ring  作者: 桜香 辰日
第一話 ~最初の騒動はあっさりさっぱり?~
23/92

第一話 ⅩⅤ 上

 二週間ぶりです。

 先週はすみませんでした。

 しようしようと思っていたのですが、結局できず……。

 次から、投稿できるか分からない時はできないとお知らせしようと思います。

 本当に申し訳ないです。


 それでは、第一話 ⅩⅤ 上、お楽しみいただけると幸いです。

 それから一週間たった、ある日の放課後。

 ホームルームが終わった後、ユウキ、ナディア、ソフィアと別れたエル達三人は、再び神官部部室の前にいた。

 エルの手は三枚の入部届を持っている。

 部室は以前訪れた時とは違い、中から部長の声が聞こえてくることも無く静かだった。最初が最初だっただけに、エルは部室の静かさに微妙な違和感を覚えながら、軽くこぶしを作ってドアを叩く。

 返事はすぐにあった。

「どうぞ」

 ドアノブをひねって扉を開ける。

「失礼します」

 軽く頭を下げた後に部室の中を見ると、そこにいたのは副部長のオルティア=マイスキーだけだった。

 まずエルが先に部屋の中に入り、その後にロウェンとマリアが続く。

 ロウェンとマリアが中に入り扉を閉めたのを確認し、入部届は部長に渡した方が良いのだろうかと考えながら用件を伝える。

「遅くなってすみません。入部届を持ってきました」

「いえ、特に急ぐものではありませんから気にしないで下さい」

 謝罪するエルに、表情を動かすことなくオルティアは答える。

「はい、ありがとうございます」

「では少々お待ち下さい。部長を呼びますので」

 椅子から立ち上がってオルティアが言う。

「分かりました」

 それから彼女は部室から出て行くと思ったのだが、予想に反して自分の背後にある窓の方へ近付いて行く。窓の前に立った彼女は窓を開いて少し体を乗り出し、下を向いて言った。

「部長、フェルトゥナさん達が入部届を持ってきました」

 それだけ言うと返事も待たずに窓を閉める。

 しばらくすると、ドドドドドという地面を揺るがしているかのような音が部室に近付いてきた。

「「「?」」」

 その音が気になったエルとロウェン、マリアの三人が扉の方を振り向いた瞬間。

 バンッ

 と迫力に欠けた扉を開く音と共に登場したのはホメロス=モストボイこと、神官部部長だった。

 相当急いで来たのだろう、ホメロスは額に汗を浮かべ息を切らしていた。それもそのはず、オルティアが声をかけたのは校舎の裏側。つまり、ホメロスは校舎の裏側、部室の窓の下にいたことになる。彼は普通の建物と比べて桁違けたちがいに大きい学院の校舎を、ほぼ半周して玄関から生徒会棟に入り、階段を上ってここに来たのだ。それも走って。息が切れるのも当然のことだろう。またこのことから、初めて訪れた時の、トレーニングは部屋の中でしない、というのを実行しているらしい事が分かる。

 彼は乱れた息を数秒で整え、下を向いていた顔を上げる。

「大変お待たせしてしまい、申し訳ありません」

 そう言って彼は頭を下げる。

 オルティアが彼に声をかけて、彼がここに来るまでにかかった時間はものの数十秒。これは待たされたというには短すぎる時間だ。むしろ、入部届を一週間後に持って来たこちらの方が彼らを待たせているのだが。

「いえ、こちらこそ一週間も待たせてしまってすみません」

 彼の口調に少し、いや、かなりの違和感を覚えながらエルは返す。

「滅相もありません! そんな事、お気になさらないで下さい」

 軽く頭を下げたエルが言い終わるか終らない内に、すかさずホメロスが大袈裟おおげさに両手を振って言い、さらに言葉をつむぐ。

 エルはホメロスの言葉を聞きながら、普通に接してくれ、と思う。年齢はこっちの方が下なのだから、かしこまるのは部長ではなく自分だ。なのに、部長はそれを気にしていないらしく、先輩が後輩を敬うというおかしな図が出来上がってしまっている。

 それに、背を向けているので確かなことは分からないが、さっきから居心地の悪い妙な視線を感じる。この視線は十中八九、副部長のものだろう。それもそうだ、普通まだ会って二回目の、しかも後輩にこんな態度をとる人なんていない。その上、神官部部長なのだ。不思議に思わないはずが無い。

(っていうか部長、早く気付いてください! 副部長が見てます! 副部長が!!)

 ホメロスにテレパシーを送るが、それが彼に届くはずもなく。口で直接言えばいいと思うだろうが、それはホメロスに話題を与えるという墓穴を掘ってしまうことになりかねない。まぁ、簡潔に言えば、ホメロスを普通にしゃべらせるか、黙らせたいのだ。

 そして、手も足も口も出ないエルの苦悩を受け取ってか、なおも言いつのろうとするホメロスの言葉を遮るようにロウェンが口を開く。

「先輩」

「何だ?」

 途端にホメロスの態度が畏まったものから、初めて会った時のちょっと偉そうに見えないこともない態度へと変わる。

「エルにも普通に喋って下さい。畏まり過ぎです」

 ロウェンは顔を近付け、声を落とす。

「だがしかし……」

 出来る訳がないだろう、と続けようとした部長を無視してロウェンは小声で言う。

「副部長を見てください」

「?……」

 ホメロスは疑問符を浮かべながらも、素直にオルティアの方に顔を向ける。

 そこには、ホメロスの今までに見たことのない態度を見て、いぶかしげな顔をしたオルティアの姿があった。

「…………」

 どうやらホメロスは彼女の存在を忘れていたらしい。彼はオルティアに疑うような眼差しを向けられて、額に冷や汗を流している。

「俺の言ったこと、分かってくれましたか?」

「ああ。よく分かった……」

「じゃ、よろしくお願いします」

 冷や汗を流すホメロスとは対照的にロウェンは満面の笑みを浮かべている。その笑顔が若干黒く見えたのはエルの気のせいだろうか……?

 お読みいただき、ありがとうございます。

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