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Change Ring  作者: 桜香 辰日
第一話 ~最初の騒動はあっさりさっぱり?~
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第一話 Ⅷ 中

 ページを開いていただき、ありがとうございます。


 最近、読んでくださっている方が少しずつ増えてきていて、とても感激しております。

 神官部の部室は二階にあった。

 一階には風紀委員会室、三階には生徒会室がある。

 部室の前に立つと、扉の向こうから話し声が聞こえてきた。

 余程大きな声で話しているのだろう、扉越しでも言っていることがはっきり分かる。

「私には神からたまわった、神殿と神子を守るという使命がある。よって、日々心身ともにきたえる必要があるのだ!」

 なんというか、声の主が信仰心の厚い人物であることは分かった。

「この台詞、何か聞いたことあるような……」

 ロウェンが首を傾げる。

 信仰心の厚い人物の言葉はまだ続いている。

 エルにはこんな台詞を聞いた覚えはない。

 望みは薄いがノックをしてみる。

 返事はない。

 さっきより強くノックする。

 それでも返事はない。

(駄目か)

 諦めて扉を開ける。

「あの……、すみません。失礼していいですか?」

 声を掛けると、鋭い言葉が飛んできた。

「何だ? 部屋に入る時はノックをしたまえ。常識だろう」

 発言したのは山吹色の髪にうぐいす色の瞳をした、スポーツマンみたいな体格をした男性だ。

 恐らく口調からして、この人が信仰心の厚い人物だろう。

「えっと、一応二回ほどノックしたんですが……」

 あなたの大きな声の所為せいで聞こえなかったでしょうけど、と心の中で付け加える。

「む? そうだったのか。それは済まないことをした」

 頭を下げられる。

「いえ、タイミングが悪かっただけですから」

 男性に頭を上げてくださいと言う。

 すると、部室にいたもう一人の人物が口を開いた。

「部長が無駄に大きな声で無駄なことをべらべら喋ってた所為ですよ」

 その発言は「無駄」の部分がかなり強調されていた。

 発言したのは金髪に青い瞳の女性で、騎士のような雰囲気をまとっている。

 そして、やたらと信仰心の厚いこの男性は部長であるらしい。

「私に非があるのは認めよう。私の声の所為でノックが聞こえなかったのは事実だからな。だがしかし、無駄とはなんだ無駄とは! 私の使命と理念は無駄なものではないぞ!!」

 部長は「無駄」と言う言葉が聞き捨てならなかったらしい。

「部長の使命と理念を無駄とは言ってません。ただその演説が無駄だと言ったんです」

 女性は冷たく返す。

 部長と女性の舌戦ぜっせんが始まった。

「私がトレーニングをする理由を聞いてきたのは君ではないか!!」

「聞いてません。トレーニングがしたいなら外でやって下さいと言っただけです」

「別に外でやっても中でやっても変わらないだろう!」

「変わります。部屋の中でそんなことをされるとうるさいし、暑苦しいので仕事が出来ません」

「私は仕事をするためにここにいるのだ!」

「なら、書類の一枚でも処理して下さい。しないなら邪魔なので出て行って下さい」

 熱く反論する部長とは対照的に女性は冷静だ。

 二人に自分達が忘れ去られている気がする。

 チラッと帰ろうかなという考えが頭の中をよぎったが、失礼になるし何となく面白そうなのでこの舌戦を見物することにする。

「私が言っているのはその仕事ではない!」

「ではトレーニングが仕事なのですか?」

「違う! トレーニングは仕事ではない!」

「仕事ではないのなら静かにしておいてください。迷惑です」

「じっとしている時間が無駄になるではないか!」

「ですから、外でやって下さいと言ったんです」

「だから、外でも中でも変わらないだろう!」

「中でやられるとこちらの仕事がはかどらないと言ったはずです。それとも部長は私に外で事務仕事をやれとおっしゃるんですか?」

「っっ。気にしなければいいだけの話しだ!」

 部長、劣勢。

「私に毎日汗臭い空気と騒音に耐え、ストレスを感じるなと言うんですか?」

「それは……」

 女性は反論しようとする部長の言葉をさえぎり、たたみ掛ける。

「その上、これまた毎日部長に書類の山を崩され、それを一人で拾うことに怒りを感じるなと言うんですね?」

「ぐっっ」

「分かりました。部長は私を道具のように思っていたんですね?」

「そんなことは断じてないぞ!」

 部長の言葉を女性は無視した。

「しかし、副部長として部長には従わなければなりません」

「何?」

 どうやら女性は副部長だったようだ。

「積み重なるストレスに耐え」

「いや……」

「自分の心を押し殺し」

「そこまでは……」

「それこそ奴隷のように」

「言ってない……」

精根せいこん尽き果てるまで働きましょう」

「悪い、悪かった! 私が間違っていた! これからは外でする!! だから頼む、許してくれぇぇぇぇっっ!!!」

 部長、折れた。

 自分を極悪人のように表現されて、信仰心の厚い彼の心は耐えられなかったらしい。

 彼は土下座をして、何やらブツブツ呟いている。

「最初からそう言えば良かったんです。また部長の所為で無駄な時間を過ごしてしまったじゃないですか」

 対し、副部長は何事もなかったような顔をしている。

 部長はすでに白旗を上げているのに、さらに追い打ちをかけている。

 あの状態の部長に聞こえているかどうかは怪しい所だが。

 今ので二人の普段の上下関係が分かってしまった。

 お読みいただき、ありがとうございます。


 中途半端ですが、長くなるのでここで区切らせていただきます。

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