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Diaspora  作者: 吐露ヰ
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知りたくも無い真実

「はぁはぁ、はぁ、、、、っく!!」

イクマは息を切らせながら肩を上下させ、全身を走る痛みに耐えていた。


ココはどこだ?

あてもなく走り続けたため完全に現在地を見失った。


だが走っているうちにあることにイクマは気がついた。

『コレは基地なんかじゃない。船だ』

そう、長く直線的な通路。

その両脇にずらりと並ぶ扉。

コレはイクマがあの作戦前に乗っていた空母ラツィエールのそれと酷似していた。

ならばこのまま直進していけば艦首か艦尾のいずれかにたどり着くはずであった。


『ここは?』

イクマはやけに見知ったソレをこの場所で見つけた。

「EM-9?!」


EM-9―――それは正統地球連合軍でも制式採用されていた自動小銃である。

当然イクマもその拳銃をよく使っていたし、

それどころかこのショーケースに飾られているもののほとんどの重火器が、

イクマがしっている、或いは実際に使用していたそれであった。


『どうしてコレがこんなところに、、、?』

よく見るとソレはある一室へと繋がる入り口に飾られたものである事に気がつく。

入り口上には<訓練室>と表記されている。

イクマは自然と引き寄せられるようにその部屋の中へと入っていった。


―――ズバンっ!!

けたたましい轟音が一室に反響する。


―――ドドン!!

さらに続けざまに小刻みな連続した衝撃音。


「せいっ!!」

そこには一人の少女がサンドバックに向かってつきを繰り出している姿があった。


イクマはその姿にどこか心奪われる感慨で、

ゆっくりとその訓練場の片隅まで歩み寄っていった。


「破っ!!」

少女の回し蹴りがサンドバッグを大きく彼女から遠ざけ、やがて返ってくるそれを両手で受け止めると、

少女はこつんとサンドバッグに頭を小突いて大きく息を吐いた。


俺は気がつけばその懐かしい動きに見入っていた。

「空手か。」

その声を聞いた少女はびくっとしてこちらに眼を向けた。

「誰っ?」

少女はそこにいた男の顔を見た。


見知らぬ男だ。こんな奴この艦にいただろうか?

だがどこかで聞いた覚えのある声だとも思った。


「いい腕だな。

久しぶりに見た。

俺の居る部隊では基本的に柔術系が多かったからな。」

そういうとイクマは一歩段差を超えて訓練場へとあがった。


懐かしい。

この雰囲気、ソレはどこにいても変わらないのだ。

すでにさっきまでの混沌とした感情は薄れ、

彼が多くの時間すごしてきたその慣れ親しんだ空気に心が躍らされる思いだった。

或いはこうしてこの雰囲気に飲まれていたほうが本来の自分の冷静さを取り戻せる、とさえ思える。


セキレイは彼の賞賛を受けうれしそうに答える。

「カラテをしってるの?

うれしいわね!

学校でもここでもこんなマイナーな武術誰もやってる人がいないから。

あなたもカラテするの?」

無邪気な笑み。

どこか彼女、セツナに似ている気がした。


「俺か?俺は何でもありだ。悪く言えば流派無しの無手勝流だな。」

イクマはそういうとサンドバッグに左手を添えると、、、、、


―――ヒュン!!

音もなくソレは揺れ、彼女がした時の倍もあろうかという後方へ飛んだ。

「いちちっ、、、」

痛みはあったが、それでもどこか心落ち着く感触だった。


「~~~~~~~~ッ」

セキレイは驚きと歓喜とで顔をほころばせて興味深深といった眼差しをイクマに向けた。

「い、今のどうやったの!?

音がしなかったけど、教えてよっ!!」

今の芸当にいたく感服したのか彼女は彼にせっついてきた。

「教えるっていっても、、、、、まぁカラテでいうところの”すかし”みたいなもんだが。

あいにく俺は教えるのが苦手なんでね。」

そういうとイクマは彼女に向き直った。


「じゃあ、組み手しましょう。

丁度この艦に私の相手してくれる人がいなかったからうってつけね!

ほらこれ!」

そういうとセキレイはグローブを俺に押し付けた。

かと思うと彼女はすでに訓練場中央で開始の準備を始めているという有様。


訂正。

この強引なところはセツナとは似ても似つかない。

「少しだけだぞ。一応けが人だからな。」

そういうとグローブをはめイクマは彼女の前に立った。

「よろしく、私はセキレイよ。」

自己紹介すると彼女はお辞儀をした。


「俺はイクマだ。」

俺もそれにならう、とその瞬間、突然彼女が先生の突きを繰り出す。


だが俺はそういう輩を嫌と言うほど相手にしてきたため、

反射的に一歩前に踏み出てすんででかわし彼女の軸足を軽く足で払ってバランスを崩させる。

「っとと、と。」

セキレイはバランスを取戻しながら背後に回ったイクマのほうへと体の向きを変える。


彼女は思った。

おもしろい。

仕官学校時代、興味の湧いた相手には今みたいな先手を繰り出す事があった。

だがその中で彼のように前に踏み出した人間なんていただろうか?

彼女はふつふつと腹の奥底で湧き上がる喜びを感じていた。


それと同時にある光景が目の前でフラッシュバックのように思い起こされる。

数時間前みたあの正体不明の機体とその中に乗っていたであろうあの男の事を。


「さすがね。期待以上だわ!」

そういうとセキレイはこちらに一飛びで左手突きを繰り出そうとする。

「それはどうも。」

俺はその正拳突きを受け流すために右手を眼前に持ち上げる。


「なんてねっ!」

セキレイは突きを振り抜くことなく踏み込んだ足で思い切り床を蹴り、左膝蹴りへと転じる。

俺はすかさず半歩前に出していた足を後に下げ、彼女の左ひざを右手の平で受け止め、

新たに軸足となった左脚に力を込め、全身を反時計回りに翻し、回し蹴りを彼女の左側頭部目掛けて振る。


「・・・・・・・ひゅー。読まれてた感じじゃなかったのに。

いい反射神経ね、、、、、」

イクマの脚は性格に彼女の耳に触れるかいなかのところで停止していた。


セキレイは一筋の汗をこぼすと後に飛び下がった。

「ねぇ、あなた何者?この艦の人間じゃないでしょ?

見た事ないし。

それになんか感じた事ないオーラを感じるわ。」

セキレイはおぼろげにだが、今時分が考えている事に不思議な確信があった。


「あなたもしかしてさっきの戦闘であのオンボロ機体にのってた人じゃない?」

イクマは黙って彼女のゆうことに耳を傾け、そして持ち上げていた右足を下ろした。

「だとしたら?どうする。」

イクマは構えを解き神妙な面持ちで彼女に問いかける。


「別に。

でもお礼は言うわ。

ありがとう。

命助けてもらったんだし。

でもあなたの乗ってた機体、あれは何?私たちの乗ってた機体とそっくりだったけど?」

そういうとセキレイは再びイクマに飛び掛る。


右、左、右、それから繰り出される踵落し。

イクマは3連突きをかわし、最後の踵落しを頭上で敢えて受け止めた。


「あれは俺の軍で使われている顕正という人型兵器だ。

正統地球連合軍第二空軍のな」

そういうとイクマは彼女の左脚を思い切り頭上に跳ね返すと、

彼女と全く同じコンビネーションで彼女に迫った。


セキレイもまた同様に彼の3連撃をかわし、

踵落しを受け止める。

「地球?冗談でしょ?地球なんて200年も昔に消滅してるわ。

それじゃあ何?あなたはタイムとラベルでもしてきたの?」

セキレイは彼の左脚をかくのごとく跳ね返し、下段蹴りによって彼の右足を払って、バランスの崩れた彼の上に馬乗りになる。


「消滅、、、、、だと?」

イクマは耳を疑った。

さっきヒスイという娘に聞いていたとき以上の衝撃が彼の中で生まれた。


「そうよ、地球軍が放った核とユリイカが放ったクロノ・バイパスが同時に相殺して地球とその周辺宙域を壊滅させた。

そのとき地球は崩壊したのよ。月もね。

ユリイカはシールドを張っていたから辛うじてわずかだけど残存した。

今のユリイカはその後に再興されたものよ。」

セキレイの両腕によって床に押さえつけられながら、イクマは呆然と見るともなく頭上の天井を見つめていた。


徐に窓の外で何かが煌く。

輸送船か何かだろうか。

巨大な建造物がいくつも見える。

恐らく巨大な円環型で地球周囲を巡るユリイカの一部だろう。

そして、、、、、、、


―――その合間から覗くどす黒い濃霧のような巨大な存在


「あれが地球の成れの果てよ。

今じゃ誰一人として近づかない。

近づけないのよ、帰ってこれないから。」

セキレイはそういうと彼の体からはなれ、立ち上がる。


イクマはというと、その場で力を失ったようにひたすら窓の外の禍々しい黒いソレを見つめていた。

『あれが、、、、、地球、、、、、』

もう否定する事すらできない。

これでもかというほどに明々白々と突きつけられた光景。

もはや彼が何を言おうと回り続ける世界の真実。


セキレイはため息をつくとイクマに手を貸し彼を立ち上がらせた。

「あなたが言っていることが本当かどうかわからないけど、わかったでしょ。

多分あなたは私たちがあなたを敵と思っていたのだとしたらとんだ勘違いよ。

私たちはあなたを恩人だと思ってる。

だからもう少し休んで。

つき合わせてごめんなさい。」

そういうとセキレイはその場を後にした。


イクマは未だ外の光景に目を奪われ、立ち尽くしていた。

もはや涙が流れることはない。

だが、それ以上に彼は何かが体の内から失われていくのを感じていた。


へたり込む。

「俺は、、、本当に未来の世界に、、、来たのか、、、、」

認めてしまった。


いや、もう真実は受け入れる以外の選択肢を俺に残していない。




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