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Diaspora  作者: 吐露ヰ
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訓練宙域にて

―――私は途方にくれている


何も不味いことはしてないはず。はずなのに憎き”コレ”はまるで言ううことを聞いてくれない。私を馬鹿にしてるとでもゆうの?

この前時代の骨董品が!このセキレイ・アーセナルを?

「セキレイ!何を遊んでいる!?仲間機に体当たりかまする気の!?」

ああ、まただ。どうして私はいつも”コレ”に乗るたびこうなのかしら。仕官学校時代は実技・筆記両方トップクラスだったのに、コレだけは、、、、、、


―――どぉぉおんっ!!

「きゃあっ!」

最初の犠牲者は近くにいたヒスイ機だった。かろうじてヒスイは旋回中だったから、うまいこと受け流してくれたけど衝撃自体はかなり伝わっているはず。

しかもかなり目立つ感じでお互いの機体に傷やら凹みができている。

ああ、またメンテナンス当番の刑ね。

セキレイはもはや制御することのできない”アンファン”に身を任せるしかないとさえ思えた。


アンファン―――それは極秘裏に新設の特務部隊”シベリウス”に試験的に導入された人型兵器であった。どうやらどこかしらで発見されたロストテクノロジーを元に作り上げた精度の高いコピー品らしいが、精度が高い割りに何故かセキレイの操縦に対しては思うようには動いてくれない。

そしてこのアンファンと呼ばれる人型兵器を試験的にとはいえ突然運用しようとしているのには理由があった。


セキレイは深呼吸をしてゆっくりと操縦ユニットに意識を伝えた。基本的にはアンファンの操作は意思伝達インターフェイスによる直感操縦となる。

するとゆっくりとだがセキレイのアンファンは速度を落としようやく止まることができた。

「つ、疲れた、、、、」

するとそこに司令官であるリスキー・モナベルト機が接近してきてセキレイ機を拘束して直接通信してきた。

「まったく、どうしてアンファン乗りになるとこうもダメなんだ、お前は?これでいざフロウが現れたら洒落にならないぞ?」

どちらかというよりは怒るというよりもリスキーは呆れた声をしている。なんとなくだがセキレイにもその呆れ顔が見えるように予想できたので、

継ぐ言葉も見つからなかった。


そう、このアンファンは半年ほど前から出現するようになったフロウと呼ばれる未知の敵性勢力に対抗するために急造されたものであり、

シベリウスはその排除を目的として設立されたばかりの特務部隊だ。

「、、、、、面目ないです。、、、、、、、、、」

『あたしのせいじゃないけど』と小さく付け加えたのは辛うじてリスキーには聞こえなかったようだ。

ため息をつくと彼女は自動航行モードに切り替えて安堵の息をついた。


「よし!訓練はコレまでだ、帰還する―――」

リスキーは言い終わるより前にある変化に気がついた。目の前のレーダーの表示には1、2、3、自分を入れて4機しか移っていないはずだ。

だがそこには未知の一点がいつの間にか映し出されていた。

『ここは軍事訓練区域、一般船が入ることはできないはず、、、、、、まさか、フロウか!?』

リスキーはレーダーの示す方角を急いでモニターで確認した。望遠カメラに移るその正体は、、、、、、、、、

「まさか、、、、、、アンファン、なのか、、?そんなはずは、、、、」

リスキーは驚きを殺すことができなかった。

そこに移っているもの、それはまるでアンファンとほとんど同じ人型ロボットが映し出されていたのである。

ただしその機体はまるで激烈な戦闘で朽ち果てたかのように機体は傷だらけであった。


はぁ、とりあえず、かえって一汗かいてからシャワーでも浴びて落ち着こう、とセキレイは心の中でつぶやいた。。

それにしても、どうして私だけこう相性が悪いのかしら?ヒスイもリスキー指令もアルテシアも基本的には搭乗時間数は同じくらいなのに、、、、、、

『そもそもこの意思伝達ウンチャラかんちゃらってのがややこしいのよ。素直に操縦棹にしてくれたら、、、、、、』

とはいったものの、マニュアル操作をした時の恐ろしさはもうすでに体験済みだったのでそれ以上は考えないことにした。


もともとアンファンというロストテクノロジーの産物は通常の人間に操縦できる類のシステムではなかった。いうなれば遺伝子治療―――ベクター導入施術を受けて神経強化を施された人間にしかその複雑にして膨大な情報処理を行うことができないのだ。ましてやマニュアル操作など手が何本あっても足りない。さらにベクター導入施術を受けた人間はその犠牲として身体能力が低下しているため、よほどマニュアル操作など自殺行為に等しいのだ。

「体力には自信あるんだけどなぁ」

セキレイはため息混じりにぼやく。


―――あれ?

ふと前方に何かが揺らめいたのが見えた、気がした。だが目をしばたかせてもう一度良く見たがそこは何変哲ない宇宙空間でしかなかった。

「どうしたのセキレイさん?」

するとそこにヒスイの通信が入った。


穏やかで艶やかな薄緑色の髪の美しい、いかにもお嬢様といった風貌の彼女。

まぁ、実際お嬢様に違いはないのだが。

「ぼぅっとしているからいつもこうなるんですね。今日もなかなか見ごたえのあるパフォーマンスだったわよ。」

そこに割り込んできたのはカルテシア・マンセルムス。今日も相変わらず毒を一言吐くとカルテシアはにべもなく一方的に通信を切った。

まるで当て逃げ状態の物言いにいつもながらセキレイは笑顔が歪むのを感じていた。

「シアめおぼえてなさいよ、、、、、」

彼女は仕官学校時代から好敵手のような存在で、実技では圧倒的に勝っていたが、筆記ではいつも私は二番手に甘んじていたのだ。


「あら?おかしいわね、、、レーダーが、、、、6つ?」

するとヒスイがレーダー上の異変にようやく気がついた。

「ちょっと、何言ってるのよ?指令入れても4機しかここには―――」

セキレイはレーダー上が今まさにめまぐるしく移動する赤い一つの点に視線を奪われた。


赤い点はいつの間にか猛スピードで―――こっちに向かってきている!

「セキレイさん!?」

―――どぉおぉん!!

ヒスイの叫びも時すでに遅し。フロウだ。


奴らはどこからともなく亡霊のように現れる。まさに先ほどセキレイが垣間見た一瞬間の空間のゆがみ、それがフロウ出現の兆しだったのだ。

「―――っく!!」

セキレイ機はフロウの柔軟―――というよりは粘土のように形状の定まっていないその身体に取り付かれようとしていた。

「頭を伏せてなさい!」

カルテシアの叱咤にセキレイが反射的に反応しすぐさまその場にかがみこむ。

―――パァァアンッ!!

めまぐるしい閃光がフロウの側面に爆ぜ、たちまちセキレイ機は激しい衝撃に飲み込まれた。

『やったの?』

カルテシアはアンファンのスナイパーライフルが立ち上らせる白煙の向こう側で動かなくなったフロウを凝視した。


―――グチュッベチャッ、、、

「ひっ!?」

その光景は今までに見た何よりヒスイの目にはおぞましく見えた。

頭部とおぼしき部位が不気味に引っ込むと、あたかも体幹部を異様な音と共に通り抜けるかのように背中だったはずの片隅に現れたのだ。

その拍子にセキレイ機にフロウの血なのかに肉塊なのか判然としないグロテスクな漆黒色の粘液が飛沫して―――蒸発した。

「っく!な、なんなのよこいつ!?」

恐ろしい。今の私じゃ勝つ術がない。いや、それ以前にもうすでに吐き気と震えでまともに目の前の敵を見ることすら諦めてしまいそう。


『どうすればいいの!?指令!リスキー指令はどこにいるの!?速く来て!!』

もはや声にもならない念に頼る以外に方法が思いつかない。


―――ぬぅぅぅぅぅっぅぅ、、、、、、

フロウの頭部に二つあった目、それが今向いている方角の存在を捜し求めている。

まるでなにか獲物を探しているかのように、粘着的でデロデロした奇怪な動きで。

そしてソレは獲物を探し当てる。


『ちっ!!』

まさにその少し先にカルテシアはスナイパーライフルを構えてフロウの動きを観察していたのだ。

―――次の獲物はカルテシア!

「逃げて!カルテシア!!」

セキレイは叫んだ。だがその瞬間私は再び空間の忌まわしいゆがみを目の当たりにした―――今度は視界全体が揺らめいて脳震盪を起こすほどに。

「カルテシアさん!!」

恐怖に打ち勝つかのように鬨の声を上げてヒスイがフロウに向けて弾幕を張る。


だが時すでに遅し。もうその空間にフロウの姿はなく、次の瞬間そのおぞましき怪異はカルテシアの背後に現れた。

「ちっ!理解できないのよ、その動きも見た目も!!」

カルテシアは怒号を上げるとスナイパーライフルを背後に投げ捨てつつ翻りレンジセイバーで太刀打ちしようと試みる。


―――ザシュッ!!

「、、、、、、、理解できないわね、、、、、こんなキモイ化け物なんて、、、、」

カルテシアはそういうと腹部の赤い滴りに手を触れた。

どうやらコックピットの何かが破裂して直撃したらしい。

血が止まらない。その上意識はすでに朦朧。


ヒスイとセキレイは絶句した。


何よあれ、、、、、、


フロウの頭部がこちらをニタリと不気味な顔をしてこちらを見ている、顔などないはずなのに今のセキレイにはそう見えたのだ。

信じがたい光景。フロウの頭部は本体から突き出すようにしてカルテシア機の腹下辺りを突貫し、こちらを覗いて揺らめいているのだ。

カルテシアはやがて意識を失った。


それとほぼ同時にフロウは頭部を本体に引きずり戻す。

『や、、、、だ、、、、こっち来ないで、、、、、』

助けられない!それどころか、もう逃げることさえ、、、、、、、

ヒスイはすでに完全に戦意喪失状態だった。

彼女も同様に錯乱し、アンファンをまともにうごかせる状況にないのだ。


―――”死””絶望”

脳裏によぎるどうしようもない負の感情。

『―――お父さん!!』

私は心の中で叫んだ。もしかしたら今この瞬間で一番遠い存在かもしれない父のことを。


―――ビー、ビー、ビー

やめて、もうやめてよ、もう来ないで。

急接近を示すアラート。考えられるのはフロウがフロウを呼んだ、それ以外に思いつかない。

もしかしたらリスキー指令はすでにフロウの餌食になってしまったのかもしれない。

何もかもが絶望的に思えて仕方がない。

だが。


―――どぉおおおんっ!!


闇に光が生まれた。見たこともない光。そして良く見慣れたと錯覚させる”ソレ”。

セキレイはその光の中に世界も、時空すらも切り裂き、新たなる世界すら生み出してしまう力を見た気がした。

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