かける
書類に埋もれてた幼馴染みを、仕事部屋から連れ出して訓練場を目指していた。空のような短い水色の髪に、緋色の瞳をもつ幼馴染みの腕を掴んで、廊下を駆ける。非常時以外で廊下を走るのは禁止なんだけど。
「エーちゃん~。スミィはまだ書類がぁ」
「生真面目だよほんと、キミは」
「わぁ!エーちゃんがデレたぁ!」
「デレてないよ」
普段、部屋から出ない幼馴染みはほっといたら、一週間以上外に出ないため、時折こうやって、連れ出さなければいけない。
「もぉ、エーちゃん強引すぎぃ」
「急がないとなんだってば!」
早くしないと始まっちまう。というかもう既に始まってるし、午前の試験は終わってる。朝早くから、買い出しを押し付けてきた上司に文句を言ったら、謝るどころか逆に朝礼の遅刻のことで叱られた。
しょうがないと思うんだよ。朝が苦手なボクを朝礼に参加させるのなんてさ。大佐に買い出し終了の報告をした後、朝礼があったのを忘れて二度寝してたボクが悪いんだけどさ。
会場につくと丁度、受験生によるトーナメントが行われていた。まだ始まったばかりみたいで、決勝でする数える程度によるものじゃなく大勢の受験生たちがいる。まぁこの会場にいるのは、今年の受験生の三分の一しかいないんだけど。
この国の訓練場は広い所は10くらい。あとは小さいのと広場が三つ。それぞれ分けたとしても、建物の数に限界はあるから、広場にいくつかのブロックが集まっている。
「…人がいっぱいだね」
「毎年見てるでしょ」
「いや見てないよ。戦争も試験をしてる時も、パソコンと睨めっこしてるからぁ」
「情報部隊だからしょうがないけど、あまり部屋に籠ってると体が鈍るからね」
「はーい」
スミィとボクは広場の近くにある訓練場の最上階のバルコニー…今さらだけど、なんで訓練場にバルコニーがあるんだろ。今度、大佐に聞いてみようかな。
「それにしても、少し意外だったなぁ」
「?なにがだい」
スミィはバルコニーから顔を出し、今にも試合が始まる受験生たちを見下ろす。近いとはいえ、距離的に目を凝らしても顔の区別は難しい。でも会場には受験生と指揮役の軍人しか入っちゃダメらしくて、遠くから見ることしかボクとスミィには出来ない。
「人間嫌いのキミが、こういうイベントが好きなことだよぉ。大きなイベントはいろんな人が来るでしょ?獣人、悪魔、天使、鬼、そして人間。ほんとにたくさんの人間が来る」
「…そうだね。人間は嫌いだよ。特定の人間じゃなく、人間って生き物が嫌いなボクだけど、同時にスゴいなぁとも思うんだ」
「ふーん。………こぉいう時、何ていうんだっけ…あ、その心は?」
なんか違くない?ボクもよく分かんないけどさ。
「確か、なぞかけだったよね、それ。例えばだけど…白の景色とかけまして、路地裏とかく」
「ん?意味違ったかなぁ。まあいいや、その心は?」
「なにもない、だよ」
「路地裏は何かあると思うけど」
「適当に言っただけだから」
そんな会話をしつつ、広場をみつめる。そして、見覚えのある菫色の髪の男を見つけた。
「あ、いたいた」
「もしかしてキミが言ってた、泥棒を捕まえた受験生?」
「そうだよ。受験の日に自らトラブルに飛び込んでいくのスゴいよね。試験に間に合わなかったかもしれないのに」
「真面目くんだったのかな?」
「もう一人いたけど、別の会場かな」
もうすぐ試験が始まる。その時ボクたちは、とある光景を目にして思わず固まった。
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