7 氷結
フィーアがⅤブロックで行われた準決勝に勝利し、他のブロックで勝ち残った者たちが揃う決勝の試験場にやって来た。その時にはもう、アハトが腕を組んで立っていた。フィーアよりも早く勝負を終わらせたようだ。
「もう終わったのかよ、アハト」
『お前が遅いだけだ』
「いや、まだ此処に来てる受験生、俺たちを含めて4、5人しか来てないんだけど?」
一ブロック50人。ブロックの数が200。つまり200近くある訓練場や広場などから決勝に進出してきた、200人近くがこの場所に集まってくるのだ。他の受験者たちは準決勝をまだ受けているということ。
『お前、何処で試験を受けた』
「え?普通の訓練場だけど」
『俺は最初の広場でな。広かったから、その会場に他のブロックが5、6あったんだが、まとめて凍らせて来た』
「うん?」
『凍らせた』
「いや、聞こえなかったんじゃなくてな。お前言葉足りなさすぎ」
『広場までを凍らせたつもりだったんだが、勢い余って会場の外まで広がったみたいでな。周囲の受験生たちも凍ったみたいだ』
「う、うーん…お前マジで規格外ってのは分かったよ」
「思考放棄ですか?」
聞こえたその声に二人が振り返る。ノインが右腕に包帯を撒いて、この会場にやってきた。
「イェーガー!お前も来たんだな、流石だな」
「は、はい?どうも。あと、あたしは巨人を斬ったりしませんから」
流石と言われるほど親しかっただろうか、いやでも今日はなんだかんだ会話してるし…と、妙に馴れ馴れしいフィーアにノインは戸惑う。
『こいつの、気を許す速さがおかしいだけだ』
「あ、そうなんですか」
そんなノインの思考を表情から読み取ったアハトが答えれば、納得したようにノインは頷いた。
「あんた、その怪我どうしたんだ?」
「氷の床が試験会場に広がって来たんです。あとで話を聞いてみたら、最初の試験会場で試験を受けてた人の魔法らしいんです」
思わず、フィーアはアハトを見た。アハトは変わらず無表情で、どんなことを思ってるのか読み取ることはな出来ない。
「咄嗟に飛んで避けたんですけど、氷が上に伸びてきて腕を凍らられそうになったんです。まあ…一応なんとかなりましたけど、少し凍傷してしまって。治療を受けてから、来たので少し遅れました」
ノインは避けきれなかった力不足で少しの不甲斐なさを感じ、包帯が巻かれた右腕を撫でた。
「一体誰があんな規模の魔法を…確かに最初の試験会場から近くはありましたけど、距離は2キロ以上あります。おそらく、キルヒェを使ったんでしょうけど」
『いや、使ってない。ただの通常魔法だ』
「え」
『その氷の床は俺の魔法だな』
「え」
「あの広場1000人入れるくらい広かったのに、キルヒェじゃねぇってどういうことだつーの。奥義であってよ、そんな規格外の魔法」
『勢いが余ったと言っただろ』
「お前、マジでおかしい」
驚いて、え、しか言えなくなったノイン。フィーアは呆れと自分の魔力の弱さを感じ苛立ちすら感じてしまう。フィーアも決して弱くはないのだが、幼馴染みであることもあり、昔からアハトと比べられてきたことも関係している。
『それにしても、ただ飛んだだけで俺の魔法を避けるとはな。自動追尾するようにしてあるとはいえ、かなり伸びたと思うが』
「はい。なので、妖術を使ってどうにか天井に…」
人や獣人たちが魔法を使うために魔力を消費するように、鬼は妖術を使うために、妖力を消費する。
「お前、そんな強力な魔法使っといて決勝で負けんなよ」
『魔力はたいして減ってないから、問題ない』
「ほんと、お前なんなの」
「4…7……8?くらいでしょうか」
『なんの数だ?』
「フィーアさんがあたしの名前を間違えた数です」
律儀にもちゃんと数えてるノインなのでした。
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