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むじかく

 軍人の声と同時に、そいつは水の槍を頭上に産み出した。


貴族の痩身男「巨人の矛!」


 長さは人の二人分ほどで、巨大だ。これ、明らかに殺すつもりでやってるよな?あれは多分【キルヒェ】だ。ゲームで言う必殺技みたいなやつ。通常の魔法と比べて高威力だ。代わりに技名を叫ばないとなんだが。


 使えるのは軍人学校で訓練してた人とか、一族で受け継がれてきた特殊な魔法を使える家の人間くらいだろ。勿論オレは使えない。


 オレとアハトは、認めたくねぇけど貴族や軍人からしたら田舎者だ。軍人学校に行けるようなお金は持っていない。だから学べない。っていうかオレ1日に三回しか魔法使えないんだよな。【キルヒェ】なんて使えるわけない。泥棒に一回使ったし、後二回しかない。


貴族の痩身男「格の差をみせてやる!!」


 放たれた水の大きい槍をギリギリで避ける。あぶな。


貴族の痩身男「な!?」


 普通の人間だったら手足1本持ってかれてたかも。虎人が足の早い種族で良かった。


「格の差を見せてくれんだろぉ?貴族様」


貴族の痩身男「貴様…!」


 挑発してみると、コイツは怒りの形相を浮かべた。挑発乗るの早いなぁ、アハトもこのくらい単純だったら…いや、それだとつまんない。あの無愛想で無表情がただの挑発で崩れるなんて。崩れないからこそ、崩しがいがあるというものだ。


 つーかアイツまた水の槍を…いや今度は【ギルヒェ】じゃねぇな。普通の魔法を放とうとしてる。コイツは気に入らないし


「手早く済ませるか」


 後二回しかないけど、選り好みなんてしてられない。魔法を発動して、全身に身体強化をかける。


「ふぅ…」


 コイツが瞬きする間に距離を詰め、蹴り飛ばす


貴族の痩身男「がはっ…!?」


 試験会場の石の壁まで吹き飛んだ。あれ?


軍人「!そ、そこまで!!誰か、軍医をつれてこい!」


 軍人は吹き飛ばされたそいつの意識、生きてるかどうか?を確認するため、駆け出していった。


 いや、まってまって。身体強化を掛けたとはいえ、あんな吹き飛ぶ?100メートル以上飛んでたけど。アハトと稽古してる時でも、あんなにアイツは吹き飛ばなかったぞ。せいぜい、数メートル…


「えっと…もしや、やっちゃったか?俺」


 周りで観戦していた受験生たちが、ざわざわと喋り始めた頃。オレはやりすぎたか?と思った。でも、気絶させなきゃいけねぇんだし!あれくらいやらなきゃ、軍人学校に通ってただろう貴族様だって気絶しない…筈!

閲覧ありがとうございました。

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