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五百パーセントの沈黙』 ―価格の裏で誰が得をするのか

舞台設定:


農林水産省・第3会議室。カメラ非公開の緊急協議の場。

窓のブラインドは下ろされ、外との接続は一切遮断されている。


本文:会話劇


Scene 1|沈黙の価格


芦川(記者)

「本日はお時間いただきありがとうございます。

今日は、皆さんの“沈黙”を記録しにきました。」


一条(米流通協会会長)

「記者は口が軽いから困る。“記録”と“煽動”は紙一重だよ。」


高峯(農水大臣)

「私は煽動するつもりなどありません。“事実”を言っただけです。

米卸の一部が、500%という利益を出していると。」


一条(米流通協会会長)

「“事実”とは不思議なもんだな。数字の断面だけを切り出せば、“搾取”だの“中抜き”だの、言葉が勝手に踊り出す。」


永見(農家)

「……でも、私たちが出荷する米はどんどん安くなってるのに、

スーパーの棚の価格は、下がりません。“どこか”で吸われてる気がします。」


Scene 2|誰の利益か


高峯(農水大臣)

「永見さん、それがまさにこの議論の本質です。

農家が安く売り、消費者が高く買う。その間で誰がどれだけ得をしているのか?

価格形成の透明性がなければ、食料政策は腐ります。」


一条(米流通協会会長)

「透明性、ね…。

米の流通は“水”と同じ。全てを晒せば、最後に“澱み”が残る。

必要な“余白”を“闇”と呼び始めたら、現場は回らんよ。」


芦川(記者)

「それは“非効率を正当化するレトリック”にも聞こえます。」


一条(米流通協会会長)

「効率を極めた国は農村を失った。私が見てきた現場は、“数字”じゃ測れん。」


Scene 3|500%の現場


高峯(農水大臣)

「確かに流通にはコストがある。でも、500%という利益率は説明不可能です。

倉庫、人件費、天候リスク――すべて加味しても、常識の範囲を超えています。」


永見(農家)

「去年の秋、業者さんから言われました。“今年は安くしないと買い手がつかない”って。

でも、私たちは資材費も上がってるし、もう限界なんです。

“買いたたかれてる”って、肌で感じてる。」


一条(米流通協会会長)(静かに)

「私は“潰れた農家”を何百人と見送ってきた。だからこそ、流通に“澱み”を残してきた。

だが、それも終わりなのかもしれん。」


Scene 4|何を残すか


芦川(記者)

「この国に、あと10年、稲作農家は残るのでしょうか?」


高峯(農水大臣)

「だから私は発言しました。“声”をあげる政治が必要なんです。

“価格”と“構造”を見直さなければ、耕作地は減り、米は“特権食”になる。」


一条(米流通協会会長)(立ち上がる)

「声は刃にもなる。振り回せば信頼を斬る。…わかってるだろう?」


永見(農家)

「でも、斬られないと私たちは死にます。

生産者が沈黙し続けた結果、米は“誰かの利益”であって、“誰かの命”じゃなくなった。」


Scene 5|終幕:記者のモノローグ


(照明が薄暗くなる)


芦川(記者) ナレーション


「500%――それは“数字”じゃない。


沈黙の中で積もってきた、“誰も語らなかった利益”の重さだ。


声を上げる者が損をする社会で、

本当に変えたい者は、いつも最初に傷を負う。


――この国の“食”の未来を、誰が背負うのか。」


(暗転)



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