隣の紗江さん
僕、馬越 狷のクラスには、アイドルがいる。
アイドルと言っても、学園のマドンナとかそういったものではなく、本物のアイドルだ。さらにテレビにも引っ張りだこときたのだから凄い。
そんなアイドルの月魄 紗江は、僕にだけ….
「紗江さんおはよう」
「何、気安く声をかけないでくれる?」
冷たい
なぜ冷たいのかは分からない。去年同じクラスでそのときは、普通に接してくれたのになぜ冷たくなったのだろう?
私、月魄紗江には、好きな人がいる。それは、隣の席の馬越狷だ。彼は、いつも「おはよう」と声をかけてくれる。他の人は、私がアイドルだから下心剥き出して挨拶をしてくるが、狷くんは優しく包み込んでくるような挨拶をしてくれる。最初は、狷だって他の人と同じで私がアイドルだと分かれば特別扱いをするだろうと思っていたが、彼はいつも私を特別扱いしてくれなかった唯一の人だ。
「付き合いたい」そう思っている。だが付き合えない理由があるうちの事務所は、恋愛OKなので心配はいらないが彼には、高校2年に上がったタイミングで彼女ができた。
その彼女は、いつも休み時間のたびにうちのクラスに来て、隣の席で狷と「いちゃついて」いる私の好きな人と隣でいちゃつかれてイラつかないはずがない。それで私はヤキモチを妬いて嫉妬してしまっている。優しくしないとと、心では分かっているができないものは、できないのだ….
ある日、狷は登校してきていつも通り挨拶をしてくれると思ったがしないで自分の席に座り、何かにぶつけたい怒りと、悲しみで潤んだ瞳を、ゆっくりと閉じた。
どうしたのだろう、いつもなら真っ先に挨拶をしてくれるのに、心配して声をかけてみた。
「ちょっと、朝から隣がそんな感じだと元気がなくなるじゃない」といつも通り強く言った。
「悪い、ちょっとあってな少し一人にしてくれないか」
私は、怒りが込み上げてきた、なぜ私にも分からない。
彼が落ち込んでいるからか?….いや違う
「何があったのよ、話してみなさい」
「…..れた」
「聞こえないんだけど」
「彼女と別れた」そう彼は、どこか諦めたような口振りで言った。






