……話す気になったか?
見せ場を奪われた主人公。
奪ったのは誰だ?
俺達は遺跡を後にして、谷に向かった。
谷に向かうと、直ぐにアンデッドが姿を現して、俺達に襲い掛かって来た。
マドリブが勧めてくれた武器屋で買った打撃系武器の棍棒を俺とガイが持ち、バトルロッドをレイとリンが持ち、ディアナがガントレットを装備して、「あ”~」とか「う”~」とか言って寄って来るアンデッドを撲殺していった。
因みにキサラ達ジュセレ組は見学だ。
理由は「幾ら洗浄で綺麗になるとはいえ、アンデッドの腐乱体を噛み千切った口で、顔をペロペロされるのは嫌だろうしな」と言ったら、キサラもレイもリンもディアナも即決で承諾した。
犬、狼系の愛情表現だが、対象はキサラも含まれていて、サリアはレイ以外のリン達にも顔ペロペロするからな。
だから、翔べるサナ以外のジュセレ達は、皆に守られていたりする。
谷の奥へと進むにつれて、アンデッドの数に種類も増えていった。
最初は人族のアンデッドだけだったのが、次第にモンスターも増えて、ゴブリンから始まり、コボルト、ホーンラビット、フォレストボア、フォレストウルフ、オーク、オーガ等が居た。
要するに、この辺りのモンスターがアンデッド化したという事だな。
ちょっと数がウザくなって来たから、レイ様にお願いした。
「レイ」
「任せてよ。いっくぞー! 呪縛魂解放!」
「あ”~~~……」
これで、広範囲に放たれた呪縛魂解放に因って雑魚アンデッドは消えた。
残りは、アンデッドが増えた原因のアンデッドのボスモンスターと、居るか居ないかは半々の遺跡を荒らした実行犯だな。
雑魚アンデッドが居なくなった谷を悠然と進めると、今までと比べて桁違いの存在感を感じた。
「来るぞ!」
「GaAAAーーー!」
「良くも邪魔してくれたな!」
……両方出たわ!
「全力の呪縛魂解放!」
「え!」
「は!?」
「GaAAAーーー……」
……多分、アンデッドのボスモンスターである種族名までは分からないが多分ドラゴン系だろうゾンビをレイの全力の呪縛魂解放で昇天した。
勿論、ジュセレのサリアも全力で補助したみたいで、セットで肩で息をしていた。
要するに、レイとサリアは疲労困憊だ。
リン達にレイとサリアの保護をお願いして、俺とキサラは、現場担当の黒幕に対峙する。
「初めまして。冒険者のライだ」
「初めましてなのじゃ。キサラなのじゃ」
「……殺せ……ぎぃ!」
俺は黒幕を拘束すると、キサラが認めた俺が打った短刀で黒幕の左手の小指を切り落とす。
「話す気になったか?」
「……殺せ……がぁ……」
俺は左手の薬指を切り落とす。
「……殺せ……ぎゃ……」
自作のベンチで黒幕の右手の小指の爪を無造作に剥がす。
「……話す気になったか?」
「ぐ……」
回復魔法
「!?」
「舌を噛み切っても回復魔法があるから無駄だ」
「……分かった」
黒幕は、「破壊の魔皇」という魔王の復活を企む秘密結社の一員で、復活に必要な「魂」を集める為に、この領地の生きる存在全ての「魂」を囚える為に動いていたらしいが、俺がその計画を潰した訳だ。
そして、あの遺跡の祭壇で、アンデッドを無限増殖させる能力を持つドラゴンゾンビを封印していた。
黒幕の幹部が、この事実を見つけ出し計画として立案したらしい。
……後、アジトは最期まで吐かなかった。
でもまあ、これで、今後はドラゴンゾンビ復活の恐怖に怯える事は無くなったな。
それに、黒幕は、協力者の存在を吐いたから、アフターケアもしっかりとしないとな。
証拠兼戦利品のドラゴンゾンビの骨を回収して、他のアンデッドは荼毘にして、帰りの途中に、遺跡に寄り残留していたギルド職員「ラドン」を拘束した。
「どういう事だ!」
「こいつは、今回の協力者だ」
「嘘だ! 私は知らない!」
俺は、ラドンの右腕の部分の布を引き千切ると、上腕に髑髏と斧の入れ墨が彫ってあった。
「コレが、証拠だ」
「連れて行って良いな?」
「いや。仕事上の確認の意味も込めておれ達も付いて行く」
「分かった」
見張り番をしていた冒険者達も、自分達の今回の仕事が終わった事を確信したのか、俺達に付いて行く事になり、荷物を片付けて一緒に街に帰って来た。
「今回の騒動を解決してきた。証人の黒幕と協力者に、証拠のドラゴンゾンビの骨だ」
ギルド職員が、ドラゴンゾンビの骨を鑑定して、この骨が岩窟竜の骨だと認められた。
因って、俺達の言葉は事実となり、黒幕と協力者のラドンは冒険者ギルドの地下牢に収監された。
俺は、持っていた証書に記入して貰い、証書を仕舞うと報告する為に領主館に向かった。
領主館に到着すると、応接室に通され待っていると10分後に、ディムヤール伯爵とパティが来た。
「街の危機を救ってくれた事に感謝する」
「大切な友人を助けただけだ」
「だからと言って、感謝の言葉を伝えて終わりにする訳にはいかない」
「それなら、報酬金でお願いしようか」
「分かった。それなら白金貨10枚だそう」
そう言うと予め用意していたのか、パティは小袋を俺の前に出した。
俺は、その小袋を受け取りマジックバッグに仕舞うと、そのマジックバッグから中ぐらいの袋を出してディムヤール伯爵の前に置く。
「コレは?」
「昨日、今日と街を見たが、まだ完全には復旧が終わってないな?」
「……ああ」
「それに、ディムヤール伯爵、貴方は少々痩せていないか?」
領主が自身の食費を削らないといけないとは、思っていた以上に、被害の爪痕は深いみたいだな。
「……」
「そこで、大切な友人のパティまで痩せさせる訳にはいかないから、コレを使って欲しい。余ったら他の事に使っても構わない」
「感謝する」
貴族歴は向こうが長いから読まれているが、現実を考えて受け取ってくれたか。
因みに袋には白金貨200枚入っている。
その日もディムヤール伯爵の勧めで領主館のお世話になり、翌日、ディムヤールを出発した。
厳しくも温かいメッセージを待っています!
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