触れるな、痴れ者が!
お酒の呑み過ぎには、ご注意を。
どうしようかと思っていると、1人の男が前に出た。
「ボクが居合わせたのが、お前達の不運だったな!」
「何者だ?」
「お前達に名乗る名は無い!」
「やっちまえ!」
いきなり、リアルヒーローモノが始まり楽しく視聴していると、キサラからの質問が来た。
「良いのか?」
「別に良いだろ。乗り合い馬車の御者からの救援要請が無いから」
「そうじゃの」
途中で危ない所が有ったが、俺の第3位階魔法の雷矢でバレない様にフォローする事で、無事に盗賊共は駆逐された。
……かの見えたが、あの馬鹿!
止めを刺してねぇ!
「あ!」
御者が雇っている護衛の1人が静かに立ち上がった盗賊に気付いた。
「危ない!」
「え!」
「ふっ」
ザシュ!
アイコンタクトで、キサラが立ち上がった盗賊の首を手刀で斬った。
その後、キサラは次々に盗賊共の首を全て斬っていった。
すると……
「何も、殺さなくても!」
その言葉を聞いて、この場に居る「こいつ」以外が「はあ!?」と思った。
そして、キサラは「こいつ」を見限って盗賊共の剥ぎ取りを開始した。
これに付いても「こいつ」はギャアギャア言って来たが、キサラの一睨みで黙った。
そのギャアギャア言ってきた内容に「盗賊にも人権が」とか言っていたから、異世界転移か異世界転生した日本人だろう。
まあ、俺が居るから他にも居る可能性は否定しないが、こいつは転生だけは無いな。
しかし、こいつは知らないのか?
かの、天才美少女魔導師が残した有名な言葉で「悪人に人権は無い!」があるんだぞ。
乗り合い馬車の連中も思った事だろう。
こいつと一緒に居ると巻き込まれる、と。
だから、残りの道中では「あいつ」は孤立していた。
後、森の中を走る街道に居るのだが、俺は盗賊共が現れた反対の方向を睨んだ。
「ライ……」
「分かっているし、また後でな」
「分かったのじゃ」
乗り合い馬車の次の目的地である「アリサールの街」に1時間後に到着した。
「え? ちょっと待……」
他の乗客は「あいつ」から逃げる様に散開し、俺達も同じく無視して移動した。
先ずは冒険者ギルドだな。
そう思って周りに聞いて冒険者ギルドに到着して、中に入ると、呑めや歌えやのどんちゃん騒ぎだった。
理由を受付嬢に聞くと、ギルド依頼の重要案件に指定されたモンスターが討伐された。
そして、参加者達がギルドの酒場で宴会を始め、1時間後にはこうなったらしい。
因みに、指定モンスターは「ジェネラルオーガ」で、しかも、変異種らしい。
変異種とは、簡単に言えば偏った進化をしたモンスターで、通常種の約2倍から5倍まで強くなっている。
因みに、討伐に最も貢献した冒険者パーティーは既に旅立った後だ。
「これは今日は無理だな」
「そうじゃの」
俺達がギルドを出ようとすると、1人の酔っぱらいが近付きキサラを下種な目で全身をねっとり見舐めた後、腕を掴もうとした、が、キサラはヒラリと躱した。
「……なんだぁ」
「触れるな、痴れ者が!」
「何だとぅ!」
周りに居る酔っぱらい達には、コレが「娯楽物」と思ったのか、酔っぱらい男を煽った。
「やっちまえー!」
「もっとやれー!」
「逃がすなー!」
「おう! こっちに来て酌しろよ!」
「断る、愚か者が!」
「……何だと? 処刑する……」
「いいぞ、やっちまえー!」
酔っぱらいの男は、腰にぶら下げていた剣を抜いて、切り掛かった。
「あ!」
受付嬢は、騒動に気付いて見に来た時には、キサラの頬に赤い線が出来、酔っぱらいの男の右腕が身体から離れた。
「がぁああーーー……」
「きゃあああーーー!」
「ふん!」
キサラの足刀で身体から離れた右腕は、キサラが踏み潰した。
「何が起きた!」
2階から偉そうなオッサンが降りて来た。
この後、双方の事情聴取が始まったが、当然、酔っぱらい男側の要望は通らず、酔っぱらい男は冒険者資格を剥奪の上、奴隷商に売られて、その代金「金貨1枚」が、俺達に渡された。
まあ、右腕無いしな。
煽った連中も、合わせて「金貨10枚」を俺達に支払う事になった。
「済まなかった」
あの偉そうなオッサンは、ギルドマスターで、一連の騒動が終わると、2階の応接室に通され謝罪された。
これで終わりかと思ったら違った。
「それで、だな……」
ギルドマスターが言った。
「あの宴会に、この街の領主も居てな。是非、娘の専属護衛に雇いたいそうだ。それで男の方は必要が無いからと、それぞれに充分過ぎるお金が支払われる。どうだ?」
「「断る」」
「なっ!?」
俺とキサラは声がハモった。
「何故だ? 金だって2人には平民が一生を掛けて手に入る金の2倍だぞ。その上で、キサラには護衛の仕事の金が手に入る。それを……」
「俺は、キサラと離れる事は無い」
「妾も、ライと離れる事は無い。それに……」
「それに?」
「妾にとって、金で手に入る全てが無価値であり関心が無い!」
「……分かった」
あの後、翌日には街を出ていればと、後悔する事が3日目に起きた。
あの日の翌日は、街周辺のモンスターを軽く狩りに行き、序でにこの街に来る途中に襲って来た盗賊のアジトを潰して預けていた貯金箱を回収して、次の日は昨日行っていない方角の森等に狩りに行った。
そして、3日目に宿屋を出ると、玄関に紋章付きの馬車が停まっていて、御者席に座っていた執事みたいな恰好をした白髪と皺が目立ち始めた男性が降りて俺達に言った。
「アルサール伯爵様がお待ちしております」
「……分かった」
貴族の体面を知る俺は仕方なく乗った。
しかし、譲歩するのはここまでだ。
念の為に、俺は宿屋の精算を済ました。
街の領主館に到着した俺達は、応接室に通されるが3時間待っても来る事は無かった。
「出るぞ」
「分かったのじゃ」
すると、監視兼世話係のメイドが言った。
「お待ちください」
「貴族であろうと呼んでいるには関わらず、これ程待たされた。街の領主といえども、こんな礼儀知らずにこれ以上、待つ義理は無い」
「お待ちください!」
俺達はメイドの制止を無視して、領主館を出ると王都の街道に繋がる東の門を出る。
時間が中途半端な為、アリサールの街から最初の公共の野営場所で一晩過ごす事になった。
厳しくも温かいメッセージを待っています!
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