本当に良かったのか?
ちょっとした変化球を……
さて、学園を出た俺とキサラだが、先ずは冒険に必要な物を買い揃える事にした。
……お金?
んなもん、長期休暇の時や、普段から寮をこっそり抜け出して稼いだ。
スキルの隠密や潜伏や気配察知や魔力遮断を使ってな。
そこそこ稼いでいたし、サラとの2人暮らしの時の蓄えも有る。
買うもんは買ったし、レイに言った通り、東に向けて出発した。
するとキサラが……
「本当に良かったのか?」
「ああ」
「妾はライの決定に従うし異論は無いが、本当に良かったのか?」
「ああ。もう2度とレイ達、皆に会えない訳じゃないしな。」
「しかし、国外追放を受けたのじゃぞ」
「あんな馬鹿が、いつまでも王族に居られる訳が無いだろ。今回の事が切っ掛けの1つとなって、近い将来、王族で居られなくなるさ。まあ、国外追放を解除されても、直ぐに帰る気は無いけどな」
「分かったのじゃ。ライの思う通りにするが良い。妾は相棒として従うだけじゃ」
「ありがとう、キサラ」
「礼は必要無いのじゃ」
さて、キサラにはああ言ったが、隣の国は、馬鹿の要請を聞くかもしれないから、更に隣の隣国に行こう。
そこまで行けば馬鹿の要請を国が聞く必要は無いだろうしな。
……と、いう訳で東の隣国マイシュリアの、更に東の隣国イシュトリアを目指す事にした。
一応、レイの為に、ある程度の間隔で、街や都市の冒険者ギルドに顔を出した。
決定した所で、とりあえず急ぎで隣国マイシュリアに向かった。
方法は、他人の目が有る所では、身体強化しての競歩で進み、他人の目が無くなると、舞空じゅ……いや、風属性魔法の「飛翔」を使って移動した。
普通なら、1ヶ月掛かる距離を2週間で移動し、無事に隣国マイシュリアに入国した。
隣国マイシュリアでも同じ方法で移動して、隣国イシュトリアに5週間後に入国した。
イシュトリアの入国を最優先したから、異世界転生のあるあるなイベントは発生せず、やった事と言えば合計で盗賊共を120人程殺して、13人程討伐報酬が高額だったから現金に変えて、24か所の盗賊共のアジトに行って貯めていた金銀財宝を回収してアジトは物理的に破壊した事くらい。
運良く、囚われていた人達は居なかった。
……殺人童貞は、サラとの2人暮らしの時に捨てたよ。
まあ、その時に、レイと出会ったんだよな。
そんな訳で、イシュトリアの西の辺境伯が治める都市ランカールに到着して、先ずは冒険者ギルドに行く事にした。
入ると、あの有名な視線の洗礼を受けたのだが、確かに最初だけだろうけどキツいな。
受付のカウンターを見ると、何故か美女な受付嬢が居るが、誰も並んで居なかった。
まさかと思いながら、その美女のカウンターに行く。
「先程、この都市に到着したけど、何か注意事項は有る?」
何故か受付嬢は、笑顔で対応してくれた。
「特に無いのですが、この都市を治める辺境伯のランカール様は癖が強いので注意してください」
「因みに、どんな癖?」
「ランカール辺境伯様は、気に入った者と戦おうとします」
ああ、戦闘狂か……
「分かった。後は……」
後は、近辺のモンスターの状況等を聞いて受付嬢にお礼を言ってからカウンターを離れたら、9人の野郎共に有無を言わせずにギルドの裏の練武場に連れて行かれた。
勿論、キサラは9人の野郎共を瞬殺しようとしたけど、視線で止めた。
このギルドの実力を知る事が出来るからな。
「てめぇ、覚悟は出来ているんだろうな?」
「何が?」
「オレ達のジェシカちゃんに声を掛けたんだ」
「俺達が、この都市に到着したのは今日の午前中だけど?」
「そんなの関係無え!」
「ああ!」
「一応は半殺しで我慢してやる」
「やれ」
やっぱり本人否定の非公認ファンクラブか。
道理で話し掛けたら笑顔の筈だ。
「……一応は半殺しで我慢してやる」
練武場で、全治半年を言われる怪我をした野郎共9人を見下ろしながら、俺は言った。
……迷惑料として現金と装備品を貰ったぞ。
装備品は、直ぐに冒険者ギルドに売ったが全て二束三文だったが、9人いたお陰で合計が、大銀貨1枚と銅貨3枚と、ギリ大銀貨1枚を超えた。
さて、俺達は宿屋を取ると、都市の散策を始めたのだが、そこそこにインフラも整備されていて、好感が持てるな。
俺も「男の子」だから、刀剣や防具に興味が有るが、キサラが嫌がるから装備していない。
勿論、理由は存在するがな。
キサラが許しているのは、服と具足と外套ぐらいだな。
そんな中、散策を続けていると、路地裏から女の悲鳴が聞こえた。
駆け付けると、5人のチンピラに囲まれて絡まれている上に服が破けた女が居た。
「いい加減諦めろ」
「嫌よ!」
「なら、仕方ねぇな。おい」
「へい」
「い、嫌ー!」
「待てよ」
……何か、こんな場面で出るのは逆に恥ずかしいかもしれないな。
「嫌がっているみたいだが?」
「……女を残して潰せ」
「「「「へい」」」」
ドカっ! バギっ! グシャ! ズドム!
「はい、終了」
「結構やるな」
「どうも」
「なあ、オレ様の部下にならないか?」
「何もかもが、格下以下のお前の?」
「……折角、目を掛けてやったが死ね!」
「お前が、な」
ズガっ!
「ぐふぅ……」
「大丈夫か?」
「あ、ありがとうございます」
「それで、何があった?」
「それは……」
「衛兵だ!」
「あ……」
おいおい! 女は気絶したよ……
「おい!」
「仲間割れか? まあ良い。こいつら全員を連行して、牢屋に入れておけ」
「ちょ、ちょっと待てよ!」
「言いたい事は詰所で聞いてやる」
……結果、俺達は無料の頑丈な宿屋に宿泊した。
厳しくも温かいメッセージを待っています!
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