勝者ライ!
雇い主が見ている時の手抜きは良くないよね?
俺達は、近衛騎士達が使う鍛錬場に到着したが、総勢50人ぐらいの騎士達が居た。
「団長、彼らがそうですか?」
「そうだ」
「それで、クリフォード侯爵」
「はっ、国王陛下」
「どの様にする?」
「此方の代表5名で試合をして貰います」
「ライよ、良いな」
「ああ」
こうして、試合をするのだが、キサラが俺の前に行くとクリフォード侯爵から「待て」が掛かった。
「ちょっと待て。何故、キサラ嬢がライ君の前に立つ?」
「相棒だからだ」
「キサラ嬢は女性だぞ」
「しかも、ライ君同様に武器や防具を持っていないではないか!」
クリフォード侯爵は、少し苛立ちが態度に出ているな。
「キサラに武器や防具は不要だ」
「そうなのじゃ」
「……ライ君。君は女性に戦わせて恥ずかしく無いのかい?」
「先程も言ったが、キサラは『相棒』だ」
「だが、そうだとしても騎士として恥ずかしく無いのか!」
「俺は騎士じゃねぇ!」
「ら、ライ君?」
「おい、始めろ!」
「は、はいっ」
俺から漏れた殺気に反応して、審判役が返事した。
空気を読んだクリフォード侯爵が下がり、試合が開始された。
「第1試合、レイガ対ライ……始め!」
「騎士の風上にも置けない君の性根を叩き直してくれる!……ぐはぁ」
「勝者ライ!」
レイガという騎士が開始直後に、模擬戦用の剣を振り上げた瞬間に、キサラが懐に潜り手刀を喉に叩き込む。
「次!」
「第2試合、ルイラ対ライ……始め!」
「私は、兄さんみたいに油断しないわよ。
行くわよ、はっ!……え!?」
「残像なのじゃ」
「かはっ……」
「勝者ライ!」
ルイラという女騎士が、慎重に距離を詰めて来て、ある程度の距離になると、一瞬で間合いに入り突きを出したが、残像のキサラを突くだけで終わり、キサラの腹パンで沈んだ。
「次だ!」
「第3試合、ネリム対ライ……始め!」
「ボクは前の2人の様に油断しない」
「そうか」
「なら、妾から行くのじゃ」
「……今だ! がぁ……」
「勝者ライ!」
キサラが突っ込んで来た所を相手は、迎撃の突きを出したがキサラは勢いを止めず、突きをギリギリ躱して、右正拳を相手の顔面にカウンターを決める。
「次っ!」
「第4試合、ギリアン対ライ……始め!」
「オレ様からは攻めねぇ。さあ、どうする?」
「なら、妾から攻めるだけなのじゃ」
「どうしたぁ、避けるだけか?」
「……遅いのじゃ」
「何を……げふぁ」
「勝者ライ!」
相手は、後の先を狙っていたみたいだが、相手の攻撃は避けるだけで精一杯と思っていた所を速度を2割から3割に上げたキサラを見失い、その隙に相手の後ろに廻り首に肘撃を入れる。
外野では……
「嘘だろ?」
「マジかよ……」
「信じられない……」
「ギリアンまで……」
「あいつ、女性に戦わせて動いていないぞ」
「……最低だな」
「でも……」
「もう、後1人……」
「でも、ハゼイナ小隊長なら……」
地元でさえ、気付かないのだから仕方無いと言えるが、これがこの国の「近衛」騎士か。
「第5試合、ハゼイナ小隊長対ライ……
……始め!」
「最後ぐらい勝たないと困るから全力を出させて貰うよ」
「行くのじゃ」
流石は、小隊長と呼ばれた騎士で、3割のキサラに対等に戦っている。
「速度上昇!」
「何!?」
「反応速度上昇!」
「くっ!」
「腕力上昇!」
「がぁ……」
俺が、第1位階魔法の「速度上昇」を放ち、更に加速したキサラが間合いに入ったが、ハゼイナ小隊長は剣を横薙ぎに振るう。
しかし、予測していた俺が、同じく第1位階魔法「反応速度上昇」を放ち、キサラは横薙ぎを背面飛びで躱して、着地した時の足のバネを使い、キサラは飛び込み右正拳をハゼイナ小隊長の左顔面に入れる直前に第1位階魔法「腕力上昇」を放つ。
キサラは、出来た隙を逃さずに畳み掛ける。
「ぎ、がはぁ、ぐふぅ、かはっ」
キサラは左回転をし、左手刀をハゼイナ小隊長の左側頭部に打ち、再び着地時のバネを使い鳩尾に右拳をめり込ませ、左廻し蹴りを右脇腹に入れる。
ハゼイナ小隊長が完全に体勢が崩れた所を左手刀を喉に放つ。
「……勝者ライ!」
「勝ったのじゃ!」
「やったな、キサラ。では、雑用が終わったので、依頼の支払いをお願いします」
「……う、うむ」
鍛錬場から立ち去ろうとすると、またクリフォード侯爵が立ち開かる。
「待ってくれ」
「まだ、何か?」
「い、今のは……」
「恥の上塗りは止めるんだな」
「え!?」
「5対5の5連勝ではなく、1対5の5連勝の意味が分かっているのか?」
「あ、いや、その……」
「まさか、『彼らは油断していた』なんて言い訳を、この国の国王陛下を前にして、国王陛下を侮辱した事は言わないよな?」
「え!?」
「万が一が起き、近衛騎士が護衛していたにも関わらず国王陛下が瀕死の重傷を負った時に、国王陛下にこう言うつもりなのか? 『騎士達は、襲撃者を下に見て油断した為に、国王陛下は重傷を負いました』と!」
「なっ!」
「クリフォード侯爵、下がれ」
「国王陛下!」
「命令だ」
「……御意」
「では、行くぞ」
ああ、ウザかった。
蛙の子は蛙だな。
形は違うが、本質はそっくりな親子だよ。
俺達は国王に案内され、宝物庫に到着した。
「儂にニ言は無い。好きなのを選ぶが良い」
「ああ」
因みに、言い掛かりを防ぐ為に、両手を後ろに廻して握っている。
「コレにする」
厳しくも温かいメッセージを待っています!
そして、星の加点をお願いします。




