彼女は奴隷だ
善人であっても、生まれが特権階級じゃあ、ねぇ。
ちょっと重たくなった空気を破ったのは王妃ビクトリアだ。
「貴女」
「私ですか?」
「そう、貴女よ。ねぇ、王族に嫁ぐ気は有るかしら?」
「は?」
「流石に正室は無理だけど、側室なら大丈夫よ。外見は整っているし、所作も上位貴族みたいだし、第2王子はどう?」
レイに目を付けるのは良い目をお持ちだが……
「悪いが……」
「何故? この話が纏まれば、彼女は王族になるのよ?」
「王妃よ、無理なのだ」
「何故、無理なのです?」
「彼女は奴隷だ」
「「え!?」」
此処でも、王妃とクリフォード侯爵の2人が驚いた。
そして、レイは首のスカーフを外す。
「……奴隷紋!」
「そう言う訳です」
「それに彼女は高いぞ」
「幾らなんです?」
「白金貨900枚だ」
「きゅ、900枚!?」
……まあ、国王なら知る事が出来るか。
「アルモンドとの間に王女が生まれたら色々とやりたかったのですが、諦めます」
レイはスカーフを首に巻いた。
「あら、貴女は首に奴隷紋が無いのね」
「彼女は、ちょっとした出会いから、彼女の意思で俺達の仲間になった」
「ふ~ん」
どうやら、王妃としての勘が働いて、自動的にアウトになったみたいだな。
まあ、正解だな。
ラピスは、怒りを露わにするだけで、場所に因ってはスタンピードを起こすからな。
「あら、貴女も奴隷紋が無いのね」
「キサラは駄目ですよ」
王妃様、そんなにこの国の令嬢は「ハズレ」が多いのか?
「あら、まだ何も言っていないわよ」
「キサラは俺の相棒ですから」
「まあ、お熱いわね。恋人みたいね」
「いや、恋人じゃない」
「あら、いいのかしら? 本人の前でそんな事を言っても?」
「ああ、問題無い」
「その通りなのじゃ。妾はライの相棒なのじゃからな」
「そう?」
……もう、帰りたいな。
「国王陛下、そろそろ時間が……」
「もう、その様な時間か」
「はい」
「宰相よ」
宰相のゼクトが、懐から薄い箱を出して蓋を開ける。
「ライ殿、これが『竜騎士の紋章』です。
これを王城の門番に見せれば、最終的には国王陛下に会う事が出来ます」
「分かった」
俺は箱の中の紋章を受け取ると、懐に入れる振りをして「箱」に仕舞う。
そして、国王と宰相は退室したが、入れ替えで謁見の間に居た王子と王女が入って来た。
……まだ帰れねぇのか?
「紹介するわね。この子が王太子でイグナシオで、この子が三女のブランカよ」
「初めまして。イグナシオです」
「初めまして。ブランカです」
「Cランク冒険者のライだ」
「キサラなのじゃ」
「レイです。それとサリアよ」
「リンです。それとクロです」
「ラピスです」
軽い雑談が続いていたのだが、段々とイグナシオが赤い顔になり、静かになっている。
そして、数分後に弾けた。
「キサラさん!」
「なんじゃ」
「私と結婚を前提に婚約してください!」
「断る」
やっぱりバッサリ斬ったな。
「何故ですか? 流石に正室は無理ですが、決して不自由にしませんし、寂しい思いはさせません! ドレスも宝石も満足させてみせます!」
「2度も言うつもりは無いのじゃ」
あ、俺を見た。
「それでは、彼は何ですか?」
「キサラは、俺の相棒だよ」
「貴方には聞いていない。キサラさんに聞いているのです」
「妾の答えは、ライと一緒なのじゃ」
「……」
多分、アレが来るな。
「決闘だ!」
やっぱりな。
「そうですか。王太子殿下は、キサラの外見だけが欲しい訳ですね?」
「何を言っている? キサラさんの心が大事じゃないか。私は真実の愛を知ったのだから」
盛大な自爆フラグだわ!
「キサラの気持ちは既にハッキリしているにも関わらず、一国の王太子が、冒険者に決闘を挑む。権力には勝てないですからね。
それを知ってキサラが、どう思うか分かっているのですか、イグナシオ王太子殿下?」
「なっ!?」
「もう一度、お伺いします。イグナシオ王太子殿下は、決闘で何を手に入れたいのですか?」
「わ、私は……」
「イグナシオ、貴方の負けよ」
「お母様」
「イグナシオお兄様……」
「……失礼します」
イグナシオ王太子は退室した。
「ごめんなさいね」
「いえ」
この後、三女のブランカとレイとの刺繍話で盛り上がり、最後には……
「レイお姉様、またお話をしましょうね」
「ええ、ブランカ」
と、こんな感じで仲良くなった。
そして、俺達はやっと帰れる事になり、王城を後にした……と、ならず。
王宮に一泊する事になった。
翌日
帰れると思っていたが、三度クリフォード侯爵が現れたのだ。
「帰る前に、君の強さを見せて欲しい」
「断る」
当たり前だろうが!
「何故?」
「手の内を見せる理由が無い」
「そこを頼む」
「断る」
最低でも、冒険者が無料で手札を晒すかよ!
「ならば、事後依頼を出そう」
「ゼアリス国王陛下!」
「Cランク冒険者ライに指名依頼を出そう。
それなら良いな?」
「お断りします」
「それならば、我が国の宝物庫から一品を選び、それを報酬とする」
「……」
それなら、俺にも旨味が有るな。
「分かりました。その依頼を受けます」
「そうと決まれば、早速、近衛騎士達の鍛錬場を案内をしよう」
厳しくも温かいメッセージを待っています!
そして、星の加点をお願いします。
サリアは、調査に因ってジュセレだと知っているので同伴OKになっています。
クロは、ジュセレには黒猫系が多いので、スルーされて同伴OKになっています。




