どういう事ですか?
リターンが見込めるなら、多少の高い出費も同意しましすよね?
情報の森の入口みたいな所に到着したのだが、何組かの冒険者達が居た。
「また、追加かよ!」
「おい!」
「ああ」
何故か、俺達が馬車から降りると、何人かが近付いて来た。
「ユニコーンの角が狙いだろう?」
「ああ」
「悪いが、オレ達が頂く。だから、立入禁止だから引き返すんだな」
「そんな事、誰が決めたんだ?」
「オレ達だよ!」
「それなら、従う理由は無いな」
「てめぇ、痛い目に遭いたいのか?」
「まて、その女共は何だ?」
……またか。
「仲間だ」
「その女を寄越せ!」
「そうだな。それなら見逃してやる」
「それは、お前達、全員の総意だな?」
俺がそう聞くと、この場に居る野郎共全員が頷いた。
「そうだ!」
「馬鹿が!」
「何だと!」
とりあえず、鉄拳制裁だな。
「ぎぁ……」
「くばぁ……」
「がぁ……」
すると、静観していた馬鹿の仲間の野郎共が、襲い掛かって来た。
「ごふぅ……」
「げぶぁ……」
「ふん!」
残った女性達に聞いた。
「ここから出て、自分達だけで生活する方法や伝手は有るか?」
「どういう事ですか?」
外見が理知的だが顔に幾つかの傷が有る女性が質問してきた。
「こいつらは、犯罪を犯したからだ」
「犯罪?」
「奴隷法の強盗罪だ」
「貴方の仲間の中に奴隷が居たの?」
「ああ」
「あちゃあ」
戦士系のお姉さんが、顔に手を当てた。
「そう言う訳で、パーティーは解散になるが、お前達は、こいつらと同じ意見か?」
俺は、沈めた野郎共を指差して聞いた。
「「「「「いいえ!」」」」」
女性達、全員が顔を左右に激しく振って答えたのは、まあ、当然か。
なんせ、此処で「はい」と答えたら、良くて借金奴隷だからな。
キサラ達が、奴隷だとしたら高額なのだと思える程の美貌持ちだ。
奴隷購入費から今日までに掛けた費用の3倍の慰謝料が発生するから、そんなもんの道連れは誰だって御免だろう。
「それで、先程の質問だが、自活出来る伝手とかは有るのか?」
「それなら、この娘だけ面倒を見てくれないかい?」
先程の戦士系のお姉さんが、最初の質問をした外見が理知的だが、顔に幾つかの傷が有る女性を俺達の前に押した。
「今回のユニコーン用に、野郎共が共同で買った奴隷で、何処かの子爵家に仕えていた侍女なんです」
「野郎共は、誰も手を出していないよ」
「私達で見張っていたから大丈夫よ」
「それに、抜け駆けを防ぐ為に、私が所有権を持っているわ」
すると、マジックポーチから、レイが持参している紅茶セットとテーブルと椅子を一脚ずつ出した。
「紅茶を飲むのに、必要な物は全て揃えているわ。子爵家に仕えて侍女をしていたのなら、当然、紅茶を淹れられるわね?」
「は、はい」
「淹れてみて」
「はい」
因みに、お湯は俺が用意して、温度はレイの指示で沸騰直前にしてある。
しかし、自国では最上級の立場の公爵令嬢だったレイは厳しいぞ。
あの元子爵家に仕えた侍女は、レイから合格を貰えるのかな?
彼女は、茶葉の匂いを嗅いだり少量を口に含んだりして確かめている様だ。
そして……
「お待たせしました」
リアンベルさんから作法やマナーを叩き込まれたから分かるが、きちんと出来ていると思うぞ。
さて、レイの判定は?
「子爵家に仕えて侍女をしていたと言うのは本当みたいね」
「あんたに分かるのかい?」
「私、騙されて奴隷に堕とされたけど、元公爵令嬢よ」
「ひぃ!」
貴族用の紅茶を淹れた事で、心理的には子爵家の侍女に戻っていた彼女は、レイが公爵令嬢だと聞いて悲鳴を上げた。
そりゃあ、気持ちは分かる。
先ず、プライベートで、子爵家の侍女が公爵令嬢に紅茶を淹れる事が無いからだ。
親同士か本人同士の信頼関係が成立しないと実現する事は無い。
もし、子爵家の侍女が淹れた紅茶で、公爵令嬢に何か有れば、その侍女が仕えている「家」が責任を取らされるからだ。
「ライ」
「何だ、レイ」
「ライの『家』に入れてあげたら」
「なる程な。それで……」
「確かめた訳よ」
そんなやり取りを聞いていた戦士系のお姉さんが質問した。
「どう言う事だい?」
「彼は、店を1つ持っているの」
「それなら、別に紅茶は必要無いだろ?」
「いいえ。その店は、とある侯爵様が関わっているから、働く女性もそれなりじゃないとダメなのよ」
「あんた、何者だ?」
こら、戦士系のお姉さん!
人を指差すな。
「その侯爵様が困っていた所を助けたら気に入れられた」
「なる程な」
「分かったわ。それでどうするの?」
「とりあえず、野郎共はお姉さん達が監視しててくれ。その間にユニコーンの角を手に入れてくるから」
「大丈夫なの?」
「やってみないと分からんが、最長5日と見ていてくれ。ダメなら、一旦街に戻る」
「分かったわ。それでいきましょう」
他の女性達も同意した。
翌日、俺達は森のそれなりに深く入り、泉の近くに行くと信じられない事にユニコーンが犬の降参ポーズをしていた。
「はい!?」
「なんじゃ!?」
「……」
「どういう事!?」
「?」
「ワン?」
「ニャー?」
俺、キサラ、リン、レイ、ラピス、サリア、クロの順番で疑問の声を出していて、リンは無言だが冷や汗を流している。
……ユニコーンはラピスを見ている。
ああ!
ユニコーンの「アレ」は、見たまんまの「降参」の意味か!
厳しくも温かいメッセージを待っています!
そして、星の加点をお願いします。
お湯が沸騰直前の理由
詳しくは知りませんが、茶葉には、それぞれに合った適正の温度があるらしいです。




