……本当に美味しかった!
特別な場所に特別な「何か」が存在する。
考えてみれば、当たり前の事かな?
……あれから1週間が経ち、レイの強化週間が終わった。
ルーチンワークと化しつつあるダンジョン攻略だ!
「……リンが強い訳が分かったわ」
「これで、レイも大抵の障害は蹴散らせる様になったな」
更に、1週間が経ち、全員が冒険者ランクが「C」ランクになった。
「さて、これで『冒険』が出来る訳だが、先にレイやリンのジュセレの強化をしたいと思っているが、何か意見は有るか?」
「ライ、私達が先で良いの?」
「ああ。キサラは既に、『第1段階』は終了したと言えるからな」
「そうね。そういう事なら、私達のジュセレはまだまだよね」
「そうだ。だから先に、という訳だ」
「それなら、どっちを先にするの?」
「地理的に近いのが、都市リザラルトから西に在る『風の谷』と呼ばれる渓谷が在って、風の精霊の存在が噂になっている」
「分かったわ。そこにしましょう」
「リンは、どう思う?」
「ライ様の意思に従います」
「リンの意見を聞きたいけど?」
「その意味でも異論はありません」
「分かった」
「ラピスは……」
「何処でも良いであります」
「そうだよな」
「ライ」
「何だ、レイ」
「ラピスって、何者なの?」
「それは都市の外に出た時に話すよ」
「分かったわ」
3日間のんびりした後、俺達は、都市の西に在る「風の谷」に向かったのだが、途中でラピスの正体をレイに教えると……
「ライは伝説の『龍』をテイムしたのね……」
「まあ、そうだな。形の上ではテイムか」
「問題無いであります」
「本人がそう言うのなら良いわよね?」
「そうだな、レイ」
……そう言えば、ラピスから貰った牙とかどうしようか、考えないとな。
5日後、風の谷に到着したのだが、情報以上に風が吹き荒れているな。
これなら、本当に精霊が居るかもな。
黒帝馬は、一旦返還して馬車を「箱」に仕舞い、俺達は「風の谷」攻略を開始した。
ある程度進むと、ハーピィが襲い掛かって来た。
ハーピィとは、首から上は人の女性で、首から下は猛禽類というモンスターだ。
倒したハーピィは回収しながら更に奥に進むと、急に風が止み、開けた場所に出た。
「ようこそ、ボクの谷へ」
「誰だ?」
「ボクは、この『風の谷』を管理する風の精霊だよ」
「私は、彼の守護者の魔王ピィよ」
魔王ピィと名乗った女性は、背中に白い翼を持つスレンダーな女性だ。
「俺達は、『魔宝玉』と呼ばれる存在を探している」
「それなら、私と戦いなさい。私が認めれば、その魔宝玉をあげるわ」
「分かった。それで勝負方法は?」
「そうね。そちらは1人代表を選んで」
「分かった。それならレイ」
「分かったわ。でも、私達は2人で1人よ」
「懐かしいわね。分かったわ、認めましょう」
「懐かしい?」
「今は、どんな風に呼ばれているか知らないけど、その子達は女神様の祝福を受けた子でしょう」
「ああ」
「それじゃあ、準備はいい? ……始め!」
開始の合図と同時に魔王ピィは、武器が届かない上空へと翔んだ。
「さあ、どうするのかしら?」
「こうするのよ! 氷柱!」
レイが放つ魔法に因って、10本の氷の柱が発生し、それを足場にして、魔王ピィに迫るレイ。
「中々、やるわね。それなら……」
「ワウ! (氷槍)!」
「なる程ね」
魔王ピィが更に上空に逃げようとすると、魔王ピィより上空からサリアの放つ氷の槍が降ってくる。
「はっ!」
魔王ピィの油断を狙い短期決戦に持ち込んだ、レイの渾身の一撃が、魔王ピィの右脇腹に入る。
「くっ……」
「まだよ!」
「それまで!」
「え!?」
「そっちの勝ちでいいよね、ピィ」
「はい」
「勝者レイ!」
「やったわ!」
「ワォーン!」
俺は、レイが出した氷柱を第1位階魔法の「火矢」10本で瞬時に蒸発させた。
「あははは! 凄いね。ピィは彼に勝てる?」
「無理です。相手にもならないでしょうね」
「そうだよね。普通、第1位階魔法で第3位階魔法を消すなんて不可能だよ」
「しかも、全く本気を出していないわ」
「そうだね。あははは……」
風の精霊の笑い声が止むと、魔王ピィが、緑色の魔石を3つ持って来た。
「これが、貴方達が『魔宝玉』と呼ぶ結晶よ」
「え、結晶!?」
「そうよ。この結晶は、風の精霊の魔力が固まり出来た結晶」
「どう使えば良いの?」
「自身の魔力で包んで受け入れなさい」
「分かったわ」
レイは、結晶を自身の魔力で包んで優しく抱くと、緑色の光を放ち、レイの中に消えていった。
「?」
「軽く動いてみなさい」
「……ウソ!」
レイの動きが、先程までと違った。
「凄いわ! 身体が軽い!」
「さあ、貴方達も」
「分かった」
「頂きます」
俺もリンも同じ様に魔力に包み受け入れると、レイと同じ様に身体が軽くなり、今までよりも素早く動ける様になった。
それは、俺達に留まらず、キサラ達ジュセレにも同様の効果が現れた。
「どうかしら?」
「良いな」
「凄く良いわ」
「ありがとうございます」
「後、勝者にあげている果実があるんだ」
「果実?」
「そう。あっちに生っている果実がそうだよ。全部あげるよ」
「本当に全部いいのか?」
「うん。全部あげても、3日有ればまた生るから大丈夫だよ」
「それなら有り難く頂くよ。ありがとう、風の精霊」
「どういたしまして」
俺達は、本当なら14個だけのつもりだったが、果実の正体を知って全部貰った。
「自分に正直なのは良い事だよ」
「あの時も、こんな感じでしたね」
この果実の正体は、人族の間では、伝説にもなっている果実で、貴族でさえ、食べる事もなく生を終える人もいる。
公爵家に居た俺や公爵家のレイ達でさえ、1つの果実を分けて食べた。
……本当に美味しかった。
「あの果実が生る木はね、何種類か有るんだけど、ボクとピィと同じ立場の存在が居る場所に生えているよ」
「「「!!」」」
……廻る楽しみが増えたな。
つまり、今後、俺達が目指す場所には、この至宝の果実が在る、と。
「レイ! リン! ラピス!」
「必ず制覇するわよ!」
「異存はありません!」
「また食べたいであります!」
厳しくも温かいメッセージを待っています!
そして、星の加点をお願いします。




