素晴らしい! これ程の進化をするとは!
いよいよ、佳境に!
「ま、待て……」
「宝玉散華!」
「か、カリグラー様、た……」
「美しく散れる事に感謝するんだな」
オレのオリジナル魔法の「宝玉散華」は、相手を宝石化させてから破壊する魔法だ。
似た様な魔法に、液体窒素をぶっ掛けるとか、絶対零度を放って、指を鳴らして対象を破壊する水(氷)属性版のアレと同じで、その土属性版だな。
さて、もう1人の「兄貴」役は終わったから、周りを警戒しながらレイ達を守り、ライの戦いを観戦するか。
「ピィー!(お兄ちゃん、最高ー!)」
ライside
俺は、魔王カリグラーの攻撃に注意しながら戦っている。
魔王カリグラーは、ご丁寧に武器に毒を塗っている。
即死系か遅延系かは分からないが、喰らう訳にはいかないからな。
まだ、向こうの手札全てを暴いてはいないが、このまま行けば勝てるだろう。
……そして、戦っている最中にガイの奮闘で、向こうは片付いたみたいだな。
「さあ、どうする? 大切なお仲間が全て消えたぞ」
「別に大した事ではないな」
「強がりだな」
「強がりなどではない。やっと全ての『駒』が揃ったのだからな!」
「駒?」
「ああ、見せてやる! 暴飢餓魂!」
魔王カリグラーがそう言った瞬間、奴の周りに10cmぐらいの光の球が見渡す限り無数に現れた。
そして、ガイが倒した相手の残骸からも少し大きめの光の球が……まさか!?
「そうだ。貴様達が倒し殺した奴らの魂だ」
そして、無数の光の球は、全て魔王カリグラーが吸収した。
「ふ、くく、あははははは……」
魔王カリグラーが光り輝き、暴風が吹き荒れる。
「くっ……」
暴風が収まった後、魔王カリグラーの姿は研究者的な外見から、世紀末覇者的な姿になっていた。
「素晴らしい! これ程の進化をするとは!」
どうやら、魔王カリグラーは、覚醒魔王に至ったみたいだな。
「もう、小手先に頼る必要は無い! 姑息に強者に媚びる必要も無い。これなら、彼の魔皇達に匹敵する『力』だ!」
確かに、魔王カリグラーから感じる魔力は、悪夢の魔皇シャナ=ペサディーラや、深淵の魔皇ディーン=イムベレジアには及ばないが、充分に、この世界の上位の「強者」に入る。
「う、うおぉぉぉーーー!」
ガキン……
俺の形振り構わない全力の左袈裟斬りは、覚醒魔王となったカリグラーの右肩に傷すら付ける事は無かった。
「ふ、くすぐったいぞ」
「雷霆鎚! まだだ! 紅蓮不死鳥! 凍結暴嵐!」
氷塵が舞っている内に……
「凍れる刻限の狭間で、眠りし調和と混沌を支配する存在よ。
我が呼び声に疾く応えよ。
調和は天宮の楔を解き、混沌は虚空の縛鎖を引き千切り、魂の誓約に従い我が身、我が欠片に宿り、鬼神と為し、我が前に立ち塞がりし愚かなる者に、滅びを与えん」
氷塵が薄くなって、姿が見えた!
「神滅鬼神斬!」
……手応え有り!
「それなりの一撃だったが、致命傷には至ってないぞ」
「なっ!?」
俺の神滅鬼神斬の一撃は、確かに入っているが、魔王カリグラーの左脇腹に15cmぐらいしか入っていなかった。
「ふん」
「ぐはぁ……」
魔王カリグラーのただの蹴りで、俺はぶっ飛ばされた。
そして、俺が抉った左脇腹の傷は少しずつだが回復していた。
「うむ。予想以上の進化だ。やはり、城外の駒も全て使うだけはあるな」
「ま、魔王カリグラー。まさか……」
「この為に用意した駒だ」
「貴様……」
俺は回復魔法で完全回復はしたが、魔王カリグラーを倒せる手段が無い。
どうする?
「ライ! オレ達で時間を稼ぐ!」
「レイ。ライ様を頼みます」
「やってやらー!」
「後衛の私が前に出るんだから、早めにね」
「フラン、女の見せ所ですよ」
「私も頑張る!」
そう言って、ガイ、リン、ディアナ、フラン、そして、ミアまでが、魔王カリグラーに向かった。
「ライ、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
大丈夫だと言ったが、レイにはバレているな。
「ライ、勝てる?」
「このままじゃ、勝てない」
「それなら、逃げるのも1つの手よ、ライ」
「逃してくれるのなら、な」
しかし、現状は打つ手が無い。
神滅鬼神斬が、俺が使える最強の一撃には変わりない。
それが、効かない以上は、勝敗は見えている。
どうする?
どうすれば良い?
「きゃあああーーー……」
俺は、レイの声に反応して前を見れば、そこには、レイ達が血を流して倒れていた。
「致命傷では無いが、早く助けた方が良いぞ。
遅効性の毒にも侵されているからな」
「く、クソッタレがー!」
「……雑魚が」
「がはっ……」
「飽きた。消えろ」
魔王カリグラーが放った紫色の魔力砲を俺は見つめていた。
避ければ、俺は助かるかもしれないが、後ろにいるレイ達は確実に死ぬ。
……まあ、天国で土下座すれば、レイ達も許してくれるかもな。
【……イ】
ん?
【……ライ】
何か、心から声が聞こえる
【……ライ君!】
サラ!
「やっと、聞こえたのね、ライ君」
「此処は?」
「此処は、ライ君の魂の中だよ」
「え!?」
「大丈夫だよ。此処と外の世界では時間の流れが違うから。この世界の1日が、外の世界の一秒にも満たないから」
「……分かった。それで、俺の魂の中に何でサラが居るんだ?」
「勿論、私がライ君が大好きで、ライ君も、私の事が大好きだからよ」
「サラ」
「……ライ君のせっかち。急ぎ過ぎるとレイ達に嫌われるぞ」
「い、今は、そ、そんな事は関係無いだろ!」
「む~。分かったわ。実は、今ライ君が出せる全力から見たら、3割も出せてないの」
「……サラ、どういう事だ?」
「ライ君はね、まだ封印された状態なの」
「……封印?」
厳しくも温かいメッセージを待っています!
そして、星の加点をお願いします。




