尊敬と礼節を持って接するべき!
また被害者が……
「冒険者を続ける事を決めたのは尊敬に値するが、装備とかはどうするんだ?」
俺の常識的な質問に、ロナ達が固まった。
「「「「「うっ……」」」」」
そうなんだよなぁ。
あのダンジョンでの事で、ロナ達の装備等は、着ていた服も合わせてほぼ全滅だ。
要するに今のロナ達は文無し、つまり現金が無いのだ!
今のロナ達に、適正の装備を揃える場合は結構な額になる。
「装備を整える為に、俺が、ロナ達に金を貸してやろうか?」
「いや、そこまでして貰う訳には……」
ロナは断ろうとしたが、ラナイ達に説得されて、俺から金を借りる事になった。
「覚悟を決めたのなら、この書類に名前を記入して貰おうか」
書類とは、要するに「借用書」だな。
ただ、金額の所は未記入だ。
そして、外出用の服等を用意して、それをロナ達が着たら出発だ。
最近、鉱石目当てで移住したドワーフの中で、信頼出来る工房に到着した俺達は、早速、ロナ達の装備の話を始めた。
「親父、居るかー?」
「いらっしゃい。今日はどうしたの?」
出迎えたのは、店番をしている看板娘のターニャだ。
この工房の店主の娘で長女で、外見はまだ11歳くらいに見えるが、御年18歳である。
「ロナ達の装備を見繕ってくれ」
「分かったわ」
1時間後、ロナ達の装備を購入した。
総額が大金貨1枚と金貨8枚だ。
きちんと借用書に金額を記入して、ロナ達に確認させた後、マジックバッグに仕舞う。
次は、日常で使う服等や日用品だ。
こちらは、俺の奢りで、勿論、ロナ達は拒絶したが押し切った。
それと、ロナ達を助けた時の治療費は、請求していない。
これにも、ロナ達は文句を言って来たが、俺が「逆なら請求するのか?」と聞くと黙ったから問題無い。
しかし、ロナ達は気にするだろうから、冒険者業と借金返済と平行して4週間の我が屋敷の庭整備等のお手伝いをやって貰う事にした。
まあ、ロナ達の実家が農家なら多少ならその辺りも慣れているだろうしな。
翌日は、中庭でサラと一緒に獣人族の子供達に戦い方を教える事にした。
そして、狙ってないと言えば嘘になるが、テンプレが発生した。
「は~い。集まって~」
「「「「「「「「は~~~い」」」」」」」」
「それじゃあ、サラ先生の言葉を良く聞いてやりましょうね~」
「「「「「「「「は~~~い!」」」」」」」」
今のやり取りを聞いたロナ達が反応した。
「ちょっと待ってくれ。今、あの女性が自分の事を『サラ』と言わなかった?」
「ラナイ。僕も、そう聞こえたよ」
「私もよ、ロナ」
「私も」
「……と、いう事は、あの女性はSランク冒険者の『雷翔姫サラ』ですか!?」
「Sランク冒険者にして、若い男性冒険者にとっての理想のお姉さん!」
「私達にとってもよ!」
「そう!」
「まさか、行方不明とさえ、言われていた雷翔姫サラ様が、此処に居たなんて……」
そんな会話を聞きながら、俺達は、サラと会話を始めた。
「サラ、今日は何をするんだ? 前回やった『鬼ごっこ』や『隠れんぼ』は、冒険者を目指すのなら有効かもしれないが、それ以外だと殆ど無意味に近いぞ」
「ちょっと、ライ。向こうに行こうか」
一応は、礼儀として会話の途中で遮る事は無かったが、終わった途端にロナ達に拉致られた。
「ライの強さは認めるけど、今や伝説になりつつあるSランク冒険者の『雷翔姫サラ』さんを、呼び捨てにするのは良くないよ」
「そうだぞ、ライ! 若い男性冒険者全てを敵に回す事になるぞ」
「勿論、女性冒険者全ても、ね!」
「尊敬と礼節を持って接するべき!」
「……雷翔姫サラ様を呼び捨てにするなんて、今、此処で殺すのが慈悲か?」
「誰を殺すって~?」
「わぁ!」
「サラ様!?」
「先程まで、あのガキ達の隣に居たのに!?」
「そんな一瞬で移動するなんて!?」
「……驚愕!」
「はあ~。リーチェ達に悪いからネタばらしをするか」
「どういう事だ、ライ」
「以前、俺が捨て子だったのは話したよな」
「あ、ああ」
「じゃあ、その捨て子である俺を育てたのは誰だと思う?」
「ライ君は、私が育てたの~」
「「「「「え!?」」」」」
「ちょっとサラ! もう少しぐらいは引っ張るつもりだったのに」
「ごめんなさ~い。私、戻るねライ君」
そして、俺に投げキスをしたサラは、また一瞬でリーチェ達の所に戻った。
その一瞬の移動手段の正体の半分は「魔律強化」だ。
この「魔律強化」とは、身体強化の第2段階の魔法的な技術で、身体に只の魔力ではなく、属性付与をする事で大幅で用途に応じた強化が出来る、それが「魔律強化」だ。
火属性なら、通常の身体強化に腕力が更に強化するし、風属性なら敏捷性が更に強化される。
それで、特殊歩法であるスキル「瞬歩」との複合技が先程の一瞬の移動で、名前を「雷閃」と言う。
因みに、移動と言う点では、魔律強化の「風」と被るが、移動速度だけなら上回る。
この雷閃は、触れた者(モンスター含む)に耐性持ちにすら「麻痺」の効果を与える。
後、これはマジで秘密だが、サラと俺は、この雷閃からの一撃を昇華して必殺技にしている。
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